「すいません武内プロデューサー。書類持ってきました」
「ご、ご苦労様です!」
「武内プロデューサー。そんなに怯えなくても大丈夫です。
余程のことが無い限り堅気には手を出しませんから」
「そ、そうですか」
「こんにちは桐生さん」
「島村さんこんにちは」
「何の用事ですか?」
「ちひろさんが手を離せないので代わりに書類を届けに」
「そうなんですか」
「それじゃ俺はこれで」
武内プロデューサーに警戒されてるなと思う龍臣であった。
「ワンツー、ワンツー!」
今日も今日とてレッスンが行われていた。
「はい。それじゃ一旦休憩にしましょう」
「ふう」
「キツイよねやっぱ」
加蓮が愚痴る。
「上へ行けば行くほどレッスンがきつくなるぞ」
「そうですよ。姉さん達のレッスンはさらにキツイですよ」
「うわあ……。ところで桐生さんの剣の練習もきつかったの?」
「ああ。といっても極めたとは言えないがな」
「桐生さんあれだけの腕で極めたと言えないの?」
「もちろん。剣の道だと果てなどないさ」
龍臣が奈緒達と一緒に帰っていると、衣がいた。
「あ、若。お帰りですか?」
「衣は何をしてるんだ?」
「ヤクの売人がこの辺で捌いてるそうなので粛清に」
「なあ、桐生さんこの人は?」
「衣だ。チャカの早撃ちが得意なんだ」
「そっちのお嬢さん達がアイドルですか?」
「まあな」
「ふーん……。まあ、頑張ってください」
衣は興味なさげに視線を戻した。
「さっきの衣って人綺麗だったよな」
奈緒が呟く。
「衣さんと桐生さんの関係ってどうなの?」
加蓮が尋ねる。
「上司と部下の関係だな」
「具体的には?」
「大まかに言うと親父、姉御、俺、カシラ、衣達幹部、構成員の順だな。
強固な上意下達で成り立っているんだ」
「へえ。無法者の集団だと思ってた」
「俺達極道は確かに法を犯す。だがそれはシマとその住民を守る為なんだ」
「そうなの?」
「ああ。もっと渡世と堅気の境界が曖昧だった時代は、
持ちつ持たれつだったからな。今は暴対法で厳しくなったがな」
「へえ……」
「さ、帰ろう。加蓮も体力ギリギリだろう」
「もう。私も体力ついてきたんだよ!」
冗談を言いつつ龍臣達は帰っていった。
翌日、事務所で龍臣が弁当を食べていると、雪美が尋ねてきた。
「…………龍臣………一緒に食べよ」
龍臣は困惑しつつもこう答える。
「雪美。俺と関わっちゃだめだ。俺は渡世の人間。
堅気の人間、特に子供が関わっちゃいけないんだ」
「………なんで?」
「俺はお天道様に顔を向けられない人間だ。だから………」
「………でも龍臣はいい人」
雪美は龍臣を真っ直ぐ見つめる。
「うっ!………」
雪美の真っ直ぐな目に龍臣は言いよどむ。
「………今日だけだぞ」
龍臣の言葉に雪美は明るくなる。
「………毎日がいい」
「………考えておく」
龍臣は雪美と一緒にご飯を食べ始めた。
雪美は一生懸命龍臣に話しかけてくる。
(こりゃ参ったな)
雪美の純粋な気持ちは悪くない。
結局は己の問題だ。
子供が渡世に関わると汚れてしまう。
どう付き合っていくかを龍臣は考えた。