「こんにちは」
龍臣は武内プロデューサーの部屋を訪れた。
「お呼び立てしてすみません」
武内プロデューサーが対応する。
「いえ。それでご用事とのことですが?」
「はい。実はその……」
武内プロデューサーは妙に歯切れが悪い。
何かあったか?
「……を紹介してほしいんです」
「えっ?」
武内プロデューサーの言葉が聞こえずに聞き返す。
「ピンク店を紹介してほしいんです」
武内プロデューサーの言葉にほとんどの者は意味がわからなかった。
その中で双葉さんが理解しているのか武内プロデューサーをジト目で見た。
「武内プロデューサー。ここにいるのは年頃の女の子だよ?。わかってる?」
「桐生さんピンク店って何?」
奈緒が聞いてきて、龍臣は迷ったものの正直に答える。
「いわゆる性的サービスを提供する店だ」
龍臣の言葉に部屋の空気が一気に冷える。
「ふーん。武内プロデューサーってそういう……」
渋谷さんが蔑む目で武内プロデューサーを見る。
「桐生さん。性的サービスって何?」
「うん。赤城さん。一生知らなくていい言葉だ。
そして間違ってもご両親に聞いてはいけない。俺との約束だ。いいね」
子供が間違っても知っちゃいけない。
「それで理由はなんですか武内プロデューサー?」
「接待です」
「それはまた……」
「それと相手から条件がありまして……」
武内プロデューサーが言いにくそうに口ごもる。
「何ですか?」
「……島村さん似の子がいいと」
「ふぇっ!?」
島村さんの顔が真っ赤になる。
まあ、当然か。
「……心当たりはあります」
「本当ですか!?」
「え!?。い、いるんですか!?」
「ちょっと待って下さい。今、スマホに……あった。この子です」
龍臣はスマホの画面を見せる。
そこには確かに島村さんに似た笑顔の子が写っていた。
「うわ。しまむーだこれ」
「本人って言われても通じるよね」
「…………」
島村さんは魂が抜けて真っ白だ。
無理もないか。
「それじゃあ予約しておきますね。人気嬢なので」
「お願いします」
「武内プロデューサーはどうします?。渋谷さん似の子もいますけど?」
「え?」
渋谷さんが間の抜けた声を上げる。
「ほらこの子」
龍臣はスマホを見せる。
そこには猫コスをした渋谷さん似の子が写っていた。
「しぶりんじゃん!」
「この子にしときます?。人気嬢ですし外れはないかと」
「ではその子で……」
そう武内プロデューサーが言いかけた時、
渋谷さんが龍臣のスマホを奪い壁に叩きつけた。
「うわあああああああ!。俺のスマホ!」
龍臣が悲鳴を上げる。
その時渋谷さんが武内プロデューサーに迫り、こう言った。
「ないよね?。本物の私とすればいいじゃん。ねえ」
渋谷さんの目からはハイライトがなくなっていた。
「あー。軍用のスマホで良かった」
龍臣はスマホの無事にホッとする。
「桐生さん。質問していい?」
「どうした奈緒?」
「桐生さんはピンク店を利用したことあるの?」
「…………ノーコメントで」
奈緒がジト目で睨む。
「…………どうしてもというならそっくりさんじゃなく、私でな」
「あはははは……」
龍臣は笑って誤魔化すしかなかった。
接待当日
相手がお楽しみの頃、龍臣は店長と近況を話していた。
この手の職業はより半歩裏に踏み込んでいるため、注意が必要なのである。
「今の所この界隈で問題はなしか……」
「はい。桐生組がキッチリ見張ってくれるおかげで半グレ共も手出ししてきません」
「わかった。何か問題が起こったら連絡してくれ」
その時、武内プロデューサーが戻ってきた。
「どうでしたか武内プロデューサー。人気嬢でしたが?」
「よかったです。あの、みんなには……」
「黙っておきます。ただし、何かで返してくださいよ」
「はあ……善処します」
これが極道の手の一つなんだけどなと龍臣は思った。