龍と華   作:ヘルメス・トリスメギスタス

2 / 19
恋と愛

 「さて、とりあえず武内プロデューサーの所へ行くか」

「武内プロデューサー?」

「ああ。先輩プロデューサーでな。

そこでプロデュースのイロハを学ぼうと思うんだ」

「ふーん。いいんじゃないか」

「よし。いくぞ」

龍臣達は武内プロデューサーの所へ向かった。

 

 「すいません。桐生ですが」

「これは桐生さん。ちひろさんから話は伺っています」

龍臣と武内プロデューサーは話を始めた。

その間奈緒は手持ち無沙汰だった。

二人の話は専門的であり、面白くなかったからである。

ちらりと部屋の中を見た。

小学生から大学生まで様々なアイドルがいた。

自分もここにいる人達と同じアイドルになるのかと思った。

 

 「本日はありがとうございました」

「こちらこそありがとうございました」

奈緒がボーっとしてる間に二人の話は終わった。

「奈緒、ボーっとしてたろ」

「ぼ、ボーっとしてないよ!?」

「まあ、つまらない内容だから仕方ないが……仕事の話でボーっとはするなよ?」

「わかってるよ……」

「それじゃ俺達に与えられた個室に行くか」

「個室あんの!?」

「そりゃあ一応な。それじゃ行くぞ」

二人は個室に向かって移動した。

 

 「ここが俺達に与えられた個室だ」

「へえ……」

「まあ、当分はレッスンだけどな」

「へっ!?。レッスンなら受けて……」

「そりゃ基礎レッスンだ。こっから本格的なレッスンを受けてデビューという流れだ」

「うわあ……。そうなのか」

「ところでここに地図がある。帰宅ルートを書いてくれ」

「?。いいけど?」

奈緒は言われるままに帰宅ルートを書く。

龍臣はそれを見て顔をしかめた。

「奈緒……よく無事だったな」

「へ?」

龍臣は地図に様々なことを書き込んでいく。

「奈緒が近道に使っているこのルートな、娼婦や薬物の交渉によく使われる場所だ」

「え?」

「この地点では半グレ同士の喧嘩が多い。この通りは風俗のスカウトが多い」

龍臣が指摘するたびに、奈緒の顔が青ざめていく。

「いいか。奈緒。夜遅くなったら近道したくても歓楽街には入るな。

子供には危険だ。それに奈緒みたいに可愛い子は狙われやすい。自分を安く見るな」

「か、可愛いって……」

「俺は事実しか言わない。それでどうしてもヤバいことになったらだ……」

龍臣は名刺ホルダーを渡す。

「これは?」

奈緒が開けようとする。

「待て待て! それは最終手段だ!」

「最終手段?」

「それは百パーセント奈緒を守る盾になってくれる。

ただ、それを使えば俺とのプロデュース関係は終わる」

「それってどういうことだよ」

「言葉通りの意味だ。俺は346プロをやめることになる」

「…………桐生さんって何者?」

「禁則事項だ」

「何でこんなに危険箇所に詳しいんだ?」

「禁則事項だ」

「この名刺ホルダーの中身は?」

「禁則事項だ」

「プロデューサーとアイドルだろ! 何で隠すんだよ!」

奈緒の怒りに龍臣は寂しく答える。

「奈緒。俺はな、アイドルにさせることは出来ても、女を幸せに出来ないんだ」

「女を幸せに出来ない?」

「ああ。俺は女を幸せに出来ない。これは仕方ないことなんだ」

「何でだよ! 恋することも愛することも出来ないっていうのかよ!」

龍臣は寂しく笑みを浮かべ答えた。

「…………恋することも、愛する事も出来る。だが、幸せに出来ない。

だから恋することも愛することもしない」

「そんなの……悲しいじゃないか……」

奈緒は目に涙をためた。

「…………仕方ないんだ。これは仕方ないことなんだ…………」

双方の間に沈黙が続いた。

 

 「…………名刺ホルダーについて言っておく。

その中身は強力だが、忌み嫌われるものだ。

興味本位で絶対開けるな。約束しろ」

「うん。桐生さん」

「ん?」

「いつか全てを教えてくれる日が来るの?」

「さあな。全てを知ったら嫌うんじゃないか?」

「…………」

「奈緒はアイドルになることに集中すればいいさ」

龍臣は笑いながら奈緒を励ました。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。