鉄火場の後、奈緒達は龍臣の車に乗っていた。
「…………」
「…………」
二人共一言も声を発さない。
(うー、この車豪華だよな。これだけでも一般人じゃないよな。
それに…………)
奈緒は龍臣を見る。
鉄火場での鋭さはなく、陰のあるカッコイイ表情で外を見ていた。
(うー、カッコイイ! 余計に聞きづらい!)
「着いたぞ」
龍臣がそう言うので正面を見ると、巨大な日本家屋が見えた。
「これが桐生さんの家?」
「部屋住みの奴もいるが、俺の住んでる家だ」
(桐生さん絶対一般家庭じゃない!)
奈緒は確信を持った。
車が止まり、龍臣達が降りると、
「お帰りなさいませ若」と強面の集団が並んで挨拶した。
奈緒は龍臣の後を着いて行く。
(無数の監視カメラ、強面の集団、やっぱこれって……)
そう考えながら龍臣に着いて行くと、一つの部屋にたどり着いた。
「ここが俺の部屋。どうぞ」
龍臣は障子を開け招き入れる。
「ここが桐生さんの部屋……」
「…………奈緒は全て知りたいといったな。
じゃあ、まずはこれを見てくれ」
龍臣はそう言うとスーツを脱ぎ始めた。
「えっ!? えっ!?」
奈緒が何かいう間もなく龍臣は上半身裸になる。
奈緒はそこに描かれた物に呆然とする。
龍臣の背には昇り龍が彫られていたのだから。
「桐生組次期組長桐生龍臣。それが俺の正体だ」
「…………触ってもいい?」
「いいぞ」
「それじゃあ……」
奈緒は龍臣の入れ墨に触った。
「……痛くないの?」
「小さい頃に彫ったからな。よく覚えていない」
「へえ……」
「そろそろいいか?」
「へ? ああ。ごめん!」
龍臣は服を着だす。
そして着替えると、奈緒に座るよう勧めた。
「それで何から聞きたい?」
「桐生さんは極道なの?」
「ああ。将来は三代目を継ぐ予定だ」
「あんな殺し合いいつもしてるのか?」
「いつもじゃない。シマ荒らしとかが起こった場合だ」
「女性を幸せに出来ないってのは……」
「こんな稼業だ。渡世のことに巻き込めない」
「…………それで桐生さんは納得してるのかよ」
「…………仕方ないことなんだ」
「この前の名刺ホルダーの中身って……」
「開けてみろ」
奈緒は名刺ホルダーを開けてみる。
中には組の名前が入った龍臣の名刺が入っていた。
「それを出せば裏の奴はビビッて手を出さない。
うちは武闘派極道で通ってるからな」
「危険な個所を知ってたのも……」
「あの歓楽街……九龍街はうちの重要なシマだからな。
だから細かいことも知ってるのさ」
「…………」
「俺が極道で失望したか?
それならちひろさんに頼んで別の人をプロデューサーに……」
「バカ!!」
バシッ!!
「!?」
「何勝手に言ってんだよ! 私がそんなこと望んだかよ!」
「でも今日のでわかっただろ! あんなことにいつ巻き込まれるかわからない!」
「桐生さんの意志はどうなんだよ?」
「え?」
「桐生さんは優しく見えて、自分の意見を押し付けてるだけだ!
私の意見はどうなんだよ! 聞いてくれるのも優しさじゃないのか!」
「…………」
「桐生さんだってそんな我慢して幸せなのかよ!
人を愛して何が悪いんだよ! 全部ひっくるめて愛するってことだろ!」
「奈緒…………」
「はあ……はあ……プロデューサーなんだからしっかりしろよ」
「…………そうだな。俺が間違っていた」
「やっとわかったかよ」
「すまないな。俺は極道というものに負い目を感じて生きてきた。
そうあれかしとな」
「桐生さんは極道だけど私のプロデューサーなんだ。それに……」
奈緒は龍臣に顔を近づける。
「もしもの時は守ってくれるんだろ?」
「ああ。守る」
「なら、よろしく。桐生さん」
「よろしく奈緒」
龍臣は奈緒との結びつきが強固になったと感じた。