「1、2、3、4、そこでターン!」
現在奈緒はデビューライブに向けて、レッスンの真っ最中だ。
「現状でもいけますね」
「はい。大丈夫です。ライブには充分に間に合います」
龍臣がトレーナーと話していると曲が終わった。
「ふーっ」
「奈緒。お疲れ」
「あ。桐生さん。どうだった?」
「現状でも充分だ。後はライブに向けて精度を上げていくだけだな」
「よし! 頑張るぞ!」
「やる気が充分なのは結構だが、頑張りすぎないようにな」
「わかってるよ桐生さん」
トレーニングルームに笑い声が響いた。
「接待ですか?」
「はい、桐生さん」
武内プロデューサーが真面目な顔で話す。
「それは構いませんが、深刻な顔をしてどうしたんです?」
「実は先方がキャバクラを指定してきまして……」
「武内プロデューサーは縁がなさそうですものね。
わかりました。俺の知ってる所に案内します」
「ありがとうございます」
「それでメンツは?」
「先方、今西部長、私、桐生さんです」
「わかりました。予約しておきます」
「助かります」
武内プロデューサーは頭を下げた。
「乾杯!」
接待は盛り上がっていた。
龍臣が事前に綺麗所を押さえておいたおかげである。
「ママ、助かった」
「龍臣さんには世話になってるもの。この位大丈夫よ」
「最近困ったことは?」
「桐生組が睨みをきかせてるから平和そのものよ」
「そうか。困ったことがあったら知らせてくれ」
そう言って龍臣は席に戻った。
「次へ行こう~」」
先方は次のお店へ行こうとする。
「桐生さん。どこか知ってるお店ありますか?」
「武内プロデューサー。俺も全て知ってる訳じゃないです」
「お? ここなんていいんじゃないか?」
そう言いつつ先方は中へ入っていく。
「不味いな……」
「桐生さん。何が不味いんです?」
「ここ新店舗です」
「?。それがどうしたんですか?」
「この手の新店舗はぼったくりの店が多いんです」
桐生組のシマで挨拶なしにやってる時点でな。
「止めないと!?」
「無駄ですね。水一杯五万円とか言われますよ」
今西部長と武内プロデューサーの顔が青くなる。
「…………俺が最悪何とかします。
武内プロデューサー達はその間に店から出て下さい」
「しかし…………!」
「大丈夫です。策はありますから」
お店の中は普通のキャバクラだった。
楽しんでいる先方と違い、今西部長と武内プロデューサーの顔は優れない。
ぼったくりの可能性が高いのだから当然だろう。
龍臣は心の中でどうしてやろうか考えていた。
普通の店なら桐生組のシマで営業する以上、ミカジメ料を払う必要がある。
ぼったくりの店なら…………地獄を見せてやる。龍臣は心の中で決めた。
そして会計になった時、龍臣以外青くなった。二十万。ぼったくりである。
「ぼ、ぼったくりだ!」
先方の顔が青くなる。
「ぼったくりとは心外ですな。正規料金です」
支配人がわざとらしく言う。
「な、な!?」
「ないというなら有り金全部置いてもらいましょうか?」
先方の顔が青くなるが、今西部長と武内プロデューサーの顔も青くなる。
ここで龍臣が声を上げた。
「すいません。家からお金を持ってこさせるんでいいですか?」
そう言うと龍臣が電話をする。
数回やり取りした後、電話を切る。
「数分で来ますんでそれまで待ってます。他の人は帰ってもらっていいですよね?」
「いいでしょう。ただし、来なかったらどうなるかわかってますよね?」
「ええ。大丈夫です。それじゃ皆さん先に帰って下さい」
そう言うと龍臣が皆を店の外へグイグイと押し出した。
数分後、黒塗りの高級車が複数台やってきた。
「若!」
「真田。こいつらにケジメ取ってやれ」
「はっ!。おうコラてめえが支配人か! 誰のシマで営業しとんじゃ!」
「な、なんですかあなた方は!?」
「ワシらは桐生組じゃ! ぼったくり営業しやがって!
しかもうちのシマでミカジメ料払わんとはどういうことじゃ!」
「ひい!」
支配人が怯える。
「真田。怖がらせてやるな。エンコで勘弁してやれ」
「はっ!」
「さて、支配人。指五本で勘弁してやる。右手か左手か選べ」
「ひっ!」
支配人は龍臣の言葉に怯えた。
目が本気だからである。
「む、無理です無理です!」
「ぼったくり料金言っといて、無理だと?」
龍臣はスッと立つと刀を抜く。
「右腕か左腕か五秒で決めろ。どっちか残してやる」
龍臣に殺意が纏う。
「ミカジメ料を他より多く払いますから許してください!」
「一回でも遅れたら、片腕が無くなると思え」
そう言って龍臣は殺気を鎮めた。
「真田。キッチリ契約を詰めとけ」
「了解しました」
龍臣は帰りの車に乗って、家に帰った。
「ありがとうございました」
龍臣が朝一で仕事を始めると、今西部長と武内プロデューサーが部屋を訪ね、
頭を下げてきた。
「頭を上げて下さい二人共。話し合いで解決しましたから」
もし現場にいたら話し合いじゃなく脅迫だとツッコミが入っただろうが、
言葉通りにとらえた二人は、交渉が上手いんだなと思った。
「桐生さん…………」
「俺が困った時に助けていただければいいので、その時はよろしくお願いします」
「はい」
二人は揃って頷いた。