凛達は龍臣の家に向かっていた。
(黒塗りの高級車……やっぱり極道なんだよね)
凜は龍臣を見やる。
龍臣が極道だということは知っている。
しかし、窓の外を見る龍臣の表情はアンニュイで、
おおよそ極道らしくなかった。
(奈緒が桐生さんのことカッコイイと言ってたけど、
何か分かる気がするな)
「武内プロデューサーに連絡は入れた。迎えに来るそうだ」
凛達に目線をやることなく龍臣が呟いた。
そして、しばらく車を走らせると、
「家に着いた」
龍臣の声に皆が外を見ると、立派な日本家屋が目に入った。
車が家の前に止まる。
龍臣が降りると、強面の集団が一斉に挨拶をした。
それに慣れた様子で歩く龍臣を、凛達は追った。
家の中に入ってしばらく歩くと、とある一室にたどり着く。
「ここが俺の部屋。どうぞ」
龍臣が襖を開けて、中に入るよう勧める。
卯月は部屋が広いわりに生活感が薄いなと感じた。
「適当に座ってくれ。着替えるから」
そう言うとスーツを脱ぎ始めた。
「ちょっと! ストップ! ストップ!」
慌てて未央が止める。
「どうした?」
「いや、女の子がいるんだしさ!」
「自室だから問題ないだろ。それに男の裸を見ても面白くないだろ」
そう言って服を脱ぎ続ける。
そして、シャツを脱いだ時、背中の入れ墨が露わになった。
皆がそれを見て息を飲んだ。
皆が静かになったのを龍臣は不思議に思い、
次いで背中の入れ墨に気付く。
「怖いか?」
龍臣の問いに皆は沈黙した。
怖いわけではなかった。
むしろ美しくさえ思ってしまった。
しかし、龍臣は怖がらせてしまったかと考えてしまった。
手早く着替え入れ墨を隠す。
「さて、何を聞きたい?」
龍臣が聞いてくる。
「なんで346プロで働いてるの?」
凜が口火を切る。
「堅気の生活を体験したかったのさ。社会勉強だな」
「刀、得意なんですか?」
卯月が聞いてくる。
「これでも免許皆伝だ。後は渡世の中で人を斬ってきた」
「薬物も扱ってるんですか?」
美波が真剣な顔で聞いてくる。
「うちでは薬物と売春はご法度だ。うちのシマで見つけたら即粛清だ」
「そうなんですね」
美波がホッとする。
「うちは男を上げる為に渡世に身を置いてるんだ。お金を稼ぐなら手段は別にある。
堅気を踏みつけて稼ぐのは間違ってる」
「踏みつけるのもいるってこと?」
未央が尋ねてくる。
「ああ。最近勢いを伸ばす龍極会。ここが堅気を踏みつける商売やってる。
いずれ決着をつけないとな」
「若」
「真田か。どうした?」
「それが親父と姉御が皆さんに挨拶したいと」
「そうか。わかった。皆、すまないが両親に会ってくれ」
「組長と姉御……」
凛達は緊張した。
「緊張しなくていいさ。堅気に手は出さないよ」
龍臣達は両親の待つ部屋に向かった。
「龍臣です。失礼します」
そう言って龍臣達は部屋に入る。
「おう。今回は災難だったな嬢ちゃん達」
「渡世の世界に巻き込んですまないね」
「いえ。助けていただきありがとうございます」
凜が返事をする。
(これが極道のトップ……。オーラが違う)
「それでどうだい。龍臣は仕事出来てるかい?」
「友人から聞く限り、出来てると聞いてます」
「周りとは上手くやれてるかい?」
「はい。仲良くやれてます」
「それは良かったよ。小さい頃から友人が少なかったからね」
「ところで龍臣はいい人はいるのかい?」
「いえ。聞いたことはありませんが」
「かーっ、龍臣! いい加減嫁さんもらえ!
ここのお嬢さん達でもいいじゃないか」
「冗談を。彼女達はアイドルです。堅気の人間を巻き込むわけにはいきません」
「夜の遊びも仕事以外いかない真面目人間が簡単に出来るかよ!」
「アイドルに手を出す方が問題です!」
「まあまあ。お嬢さん達が困ってるじゃないかい」
「むー……」
「…………」
結局こんな言い合いが武内プロデューサーが来るまで続いた。