DRAGON QUEST Ⅴ ――聖女の足跡――   作:玖堂

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太陽が見える頃に・・・・・・

「やれやれ。手間を取ってしまったのう」

 

 星の一つも見えない屋上に姿を見せた男――――アルカパの神父は、夜の冷えた風を受けてそう呟いた。

 

 続けて、共に同行していたシスター数名も屋上に足を踏み入れる。裏からこの古城に入るには、長い梯子を上らなければならない。若い彼女達はともかく、すでに最盛期を終えて久しい神父には、少々酷だったようだ。

 

 かといって、休んでなどいられるわけもない。行方不明の少年達だけではなく、今は見習いのシスター・アリスまで城に閉じ込められてしまったのだ。出入り口が閉まってしまった以上、もはやこの場所しか侵入経路はない。

 

 たどり着いた先は、東の塔の最上階。アーチの上がっている入り口に入ると、ドーム型の空間になっているのが分かる。少なくとも、生き物の気配は感じられない。

 

 初めに神父が。続いてシスター達が内部へと入る。最後の1人が入ったところで――――

 

「むっ!」

 

「あ・・・・・・」

 

 耳障りで、かつ不吉な轟音が鳴り響く。振り返ると、ギロチンのような勢いでアーチが落下し、城と外を完全に遮断してしまったのだ。

 

 シスターの1人が鉄棒を動かすものの、ビクともしない。おそらくは、単純に上げられるようなものではないのだろう。

 

「しまった・・・・・・閉じ込められましたか」

 

「ちょっと。アリスの時と同じじゃない。やっぱり、誰かがこの城にいるんだわ」

 

 若いシスターに動揺が走る中、更なる異変が彼らの前に現れる。

 

「あれは・・・・・・」

 

 中年のシスターが、塔の内部に生まれた空間のうねりに気付く。古ぼけた絨毯の上に生まれた歪みは、いくつかの形を成して姿を見せる。

 

 先ほどまで何もなかった場所に、大きな物体が置かれていた。それは、棺である。教会の関係者なら馴染み深い、どこにでもありそうな十字架の塗装が施されているものだ。しかも、1つや2つではない。どう見ても、8つは確認できる。

 

 さらに、壁には戦士の像。重そうな剣を構えた像だ。世界中でオブジェとして量産されているタイプの作品なので、ちょっとした富豪なら誰でも持っている。それが、全部で5体。

 

 なぜ、唐突にこんな物が現れた? その疑問は、すぐに解けることになる。

 

 ガタガタ、と棺が動く。ギシギシ、と戦士の像が震え始めた。

 

 そして――――棺の中からは人骨が。像の中からは石像が。

 

「魔物!」

 

 誰かが声を出した。この不気味な魔物達は、侵入者を待ち伏せしていたのだ。しかも、外のそこいらにいる魔物達では断じてない。

 

 声にならない雄叫びを上げて、骸骨が棺から身体を乗り出す。ジリジリと神父達に近寄ってきた。

 

「神父・・・・・・もしかして、こいつらが」

 

「おそらくは、な。となると・・・・・・」

 

 一刻の猶予もない。この場の者達は、そう悟った。

 

 この一連の事件には、魔物が関わっている。そうと分かれば、ただのお祓いなどでは済まされない。神父達は魔物達を躱しつつ、どうにか応戦する。

 

 時折補助呪文を交えつつ、時間をかけて魔物達を弱らせた。やがて、ゴトリと倒れる魔物達。

 

「動きません。どうにか倒せたようです」

 

「うむ」

 

 魔物の群れが守っていた階段に向けて、一行は歩いていった。次の階には、通路のような一本道だ。左右に台座のようなものがあるが、ここに先ほどの騎士の像が立っていたのだろう。今は当然だが、もぬけの空だ。

 

 先へと急ぐ。ドアを開けると、今度はテラスに出た。夜の風が神父達を歓迎する。

 

 反対側には西の塔へ続く入り口がある。しかし、彼らはこの場で奇妙なものを見つけた。

 

 テラスの中央には、墓がある。王家の墓が、この城から見える景色を一望できるようにこの場に立てられたのだ。

 

 それはいい。だが、神父が目に付いたものはそれではないのだ。

 

 墓の後ろに、足が見えた。人間の足だ。近寄ってみると、それは見覚えのある男が倒れているのが分かる。

 

「番兵さん!」

 

 シスターの1人が駆け寄った。紛うことなく、そこにいたのは行方不明になっていた番兵だった。顔を軽く叩くと、呻き声を上げて反応を返す。顔に痣があるものの、命に別状はなさそうだ。

 

 しっかりしてくださいと身体を起こすと、ようやく彼が閉じていた目を上げる。周囲を見回し、ここがどこなのかを悟った。

 

「うう、ここは・・・・・・神父様、ですよね。なぜ、ここに?」

 

「お主らを探しに来たんじゃよ。朝のうちに帰ってこないから、心配しておった」

 

「ということは、あれから半日も、ですか。それは申し訳ありません・・・・・・まさか、この城に魔物が住み着いていたとは。しかも、あんなに手強い・・・・・・いてて」

 

 腕を押さえる番兵。見かねたシスターが、回復呪文をかける。

 

「ああ、すみませんね、シスターさん」

 

「いいんです。それよりも、無事で良かった」

 

「無事、というわけではありませんが」

 

 そう言うと、番兵は立ち上がる。その表情は、どこか焦燥に駆られているようだった。

 

「このレヌール城に来たときから、妙な違和感があることにはすぐに気付きました。私はとりあえず、裏から城へ入ったのです。このテラスまでたどり着いたときに・・・・・・」

 

 その時を思い出したのか、番兵の顔が暗くなる。

 

「恐ろしい魔物でした。ローブを着た、冷たい目のする老人のような魔物です。いくつもの魔法を使い、手も足も出ず・・・・・・」

 

「分かった。もう良いぞ。辛いことを思い出させてしまって、すまなかったね」

 

「いえ、そんな」

 

 誰も彼を責めるような愚か者はいない。それよりも、この城の中にはまだ・・・・・・

 

「番兵よ。我々は子供達を探しに行くが、どうする?」

 

「決まっています。私も・・・・・・!」

 

 言うまでもない質問だった。そこで、ふと遠くから何かが聞こえた。

 

 レヌール城の下層。何か金属をたたき合うような音だ。それに加えて魔法を撃つような・・・・・・複数の子供の声が、微かに混じっている。

 

 神父達は顔を見合わせる。

 

 間違いない。あの子達だ。

 

 

 

 

「なんと。子供が3人だけで俺に刃向かおうというのか」

 

 謁見の間に姿を見せたリュカ達を見た親分ゴーストは、流石に驚きの顔を見せた。王様気取りで玉座に腰掛けていたポーズを止めて、自分の足で立ち上がる。

 

 たったそれだけで、どこか小悪党のような雰囲気から、魔物を統率する老練の主としての風格が湧き上がってきた。

 

 間違いない。今の親分ゴーストは、完全に戦闘態勢だ。

 

 だが、それがどうしたというのか。それはこちらとて同じだ。

 

 油断なく、リュカとビアンカ、そしてアリスはそれぞれの武器である剣とナイフを握りしめる。

 

「甘く見ないでよ。メラ!」

 

 ビアンカから放たれた火球は、親分ゴーストのローブを焦がすことはなかった。すぐさま同じメラが親分ゴーストから放たれ、お互いに打ち消し合ったのである。

 

 いや、お互いに、というのは間違いだ。親分ゴーストの放ったメラは、ビアンカのメラを貫いてなお生きていた。大きさこそ半分程度まで小さくなったものの、勢いだけは失わずにビアンカの身につけている手織りのケープを焦がす。

 

「あっつ!」

 

 慌てて袖で擦ると、種火程度の火はすぐに消えていく。それでもビアンカの心には、疑問と焦りが生まれていた。

 

「ど、どうしてっ! 何で私のメラだけ消えちゃったのよ!?」

 

「これだから子供は・・・・・・まあ、無理もない。人間の小娘ごときでは実戦経験など数えるほどもなかろうさ」

 

 どういう意味よと怒るビアンカだが、横から努めて冷静にアリスが解釈する。

 

「同じ魔法でも、使う者の魔力の質によって威力は変化するんです。親分ゴーストと呼ばれている名は、伊達や酔狂では無いということですね」

 

「なんですって・・・・・・?」

 

 キッと、ビアンカは親分ゴーストを睨む。それは、子供とはいえ魔法を扱う少女の自尊心を、著しく傷つける事実だったからだ。

 

「今度はこちらです。ヒャド!」

 

 続けて放たれたのは、アリスの手の平から打たれる氷の魔法。だが、親分ゴーストの余裕は消えない。

 

「同じ事だ。ヒャド」

 

 またしても同じ魔法で迎撃する。そして貫かれたのは――――アリスの方。

 

 しかし、アリスはそれを甘んじて受けるような真似はしなかった。もとより、ビアンカとアリスの魔力はほぼ同格。ならば、貫かれるのも承知の上。

 

 横に飛んで、ヒャドの射線上から身を躱す。夜の虚空に向かっていく氷柱とすれ違いつつ、懐のブロンズナイフを構える。青銅の短剣を逆手に持ち、飛びかかった。

 

「やああっ!」

 

「ふんっ!」

 

 振り下ろされたナイフは、親分ゴーストが掲げた腕に突き刺さった。血液らしい青色の体液が傷口から垂れる。

 

 しかし、それだけだ。親分ゴーストの表情は、むしろ笑みすら浮かべている。避けもせずに腕だけで防いだ魔物は、もう片方の手の平を少女の腹に向けた。

 

 瞬間、全身が赤い炎に呑まれる。数瞬遅れ、アリスは悶え苦しむほどの熱に床を転がった。ビアンカと違い、直接受けたメラの火は少女の全身を燃やすには充分だったのである。

 

「アリスっ!」

 

「ダメです、リュカさん!」

 

 駆け寄ろうとしたリュカに、他ならぬアリス自身が待ったをかけた。思わず、足を止めてしまう少年。

 

 思ったよりも、普通の声が出せている。ならば、まだ動ける。袖とスカートの裾が焦げているものの、肌にはそれほどの火傷はない。見た目よりも軽症だ。

 

「今は、この魔物を討つことが先です」

 

「・・・・・・うん!」

 

 毅然としたアリスの声に、リュカの瞳も不安から真摯に変わる。それはまるで、あのパパスの瞳を彷彿とさせる何かがあった。

 

 リュカは銅の剣を握りしめ、魔物の右へ回り込む。対して、アリスはナイフを手に左へ。

 

「無駄だ。ヒャド、メラ!」

 

 アリスにはヒャド。リュカにはメラ。それぞれの魔法が直進するも、もうそれに怯む子供達ではない。

 

「――――マヌーサ!」

 

「ぬうっ!?」

 

 必ず、ビアンカが援護をしてくれると信じていたから。

 

 幻惑呪文。途端、親分ゴーストの周囲に3人の子供達が何人も増えたような錯覚を受ける。

 

 これで追撃は封じた。後は、2人が自分に向かってくる魔法をどうにかするだけ。

 

 パパスの息子は左腕を目の前で盾代わりにする。腕が決して軽くない火傷を負うものの、少年の足は強く床を蹴り上げ、跳躍した。

 

 少女に発せられたヒャド。先ほどよりも至近距離で放たれた呪文は、今度こそ喰らえばタダではすまない。しかしアリスは、冷静に手に持っているブロンズナイフを正面に放り投げた。魔法の氷柱の射線上に投げられたそれは、アリスよりも先に当たる。

 

 途端、ブロンズナイフをヒャドの氷が包み込む。ナイフはすぐに結晶のように破壊されるものの、一瞬だけ身を躱すために時間稼ぎが出来る。少女が正面に前転すると、氷柱が彼女の上を通り過ぎていった。

 

 自分も扱う魔法だ。対処法の基礎なら知っている。いつも使えるわけではないが、少なくとも今は上手くいった。

 

 いける。今度こそ決定打を与えられる!

 

 その確信も、ここに来て意地を見せた親分ゴーストによって巻き返されてしまった。予想以上に抵抗する子供達に、初めて顔色を変えたのだ。

 

「ギラァッ!」

 

 閃光呪文、ギラ。これまでのような火球とは違う、炎が奔る魔法。

 

「見くびるなよ、小僧共!」

 

 マヌーサによって幻覚が見えている親分ゴーストは、広範囲の魔法を使うことで本物も偽物も纏めて焼き尽くそうとしたのだ。そして、それは正しい判断である。

 

 ある程度の広範囲の魔法ならば、幻惑を受けても大した問題にはならない。幻ごと消すことも出来るからである。

 

 リュカ。ビアンカ。アリス。3人の少年少女が広い謁見の間で転がり回った。肌の何カ所かに火傷を負う。

 

 それでもなお、3人は立ち上がった。どこまでも、その視線は真っ直ぐに自分を見つめて。

 

 ギョッとする親分ゴースト。荒くれ者の彼からすれば、なぜここまで人間の子供がしぶとく立ち上がれるかが理解できなかった。

 

「お、お前ら・・・・・・痛くてたまらないはずだろ。なんでそこまで・・・・・・」

 

「決まっている。お前みたいな奴を、好き勝手にさせるわけにはいかない」

 

 リュカ。

 

「私たちには、可哀想な猫ちゃんを助けるっていう目的もあるのよ」

 

 ビアンカ。

 

「いなくなってしまった人を、返してください。そして、怖がっている町の人たちを安心させてあげたい」

 

 そして、アリス。

 

 それぞれが、戦う目的を持ってここに立っている。だからこそ怖いからとか、痛いからとか、そんな弱虫のような言葉で逃げ出すわけにはいかないから。

 

「・・・・・・」

 

 それはきっと。長年生きていた自分には縁のない、確固たる目的。強い者へと立ち向かう勇気を持つ者達だけが持つ輝き。

 

 魔界のはみ出し者として強い者にへつらっていた自分には、どこか眩しく見えた。

 

「そうか」

 

 自分でも驚くほど、静かな声が口から出ていた。拳を固めて、そこから炎を纏う。

 

 両手の拳から、ギラの炎が燃えさかる。それはまるで、はぐれ者の魔物達を束ねる長としての、意地のようなものを感じた。

 

「ならば、こちらも遊びは無しだ・・・・・・小僧共とはいえ、容赦はせん。かかってくるがいいっ!」

 

 心のどこかにある慢心を捨てた。今の親分ゴーストは、間違いなく3人を明確な敵として認めたのである。

 

「そんなの、今更だっ!」

 

 渾身の力で、リュカが床を蹴る。それに続いて、ビアンカとアリスも両手に魔力を込めた。

 

 戦いは終わらない。夜明けの時間には、あまりにも遠かった。

 

 

 

 

 子供達が生きている。その希望も新たに、一行は移動を開始することにした。テラスから西の塔へと入る。

 

 そこは、資料室を兼ねた図書室だ。この城の、大体の間取りは把握している神父達にとって、それは別に驚くに値しない。

 

 当然である。アルカパの教会関係者は年に一度、鎮魂の意味を込めてレヌール城へ足を運ぶ催しがあるのだ。秋の時期に行うため、次に始めるのは半年後であるが。

 

 だからこそ、その場に予想もしなかった存在が目に飛び込んだとき、神父達は驚きを隠せなかった。

 

 こちらに背を向け、窓の向こうを眺めている女性がいた。半透明の姿をしており、彼女の身体からうっすらと、視界から遮られているはずの窓の縁が見える。

 

 ほっそりとした身体に、上品なドレスを身につけている姿。こちらを僅かに振り向くと、悲しげな瞳を投げかけてきた。何より、銀の冠を被っている。王族であるという証拠だ。

 

 間違いない。幽霊となった、レヌール王家の王妃だ。

 

 神父も長年神職を経験しているが、こうもハッキリとした幽霊を見たことは今までなかったのである。

 

 それでも冷静さを取り戻し、神父はそっと声をかけた。少なくとも、敵意はない。なんとなく王妃の神秘性を感じ取り、冷静に話しかけようと思ったのである。

 

「もし。私どもは、アルカパの町に所属する、教会の者です。突然の来訪を、お許しいただきたい。レヌール王妃様、でお間違いはありませんでしょうか?」

 

「まあ・・・・・・」

 

 僅かに驚きを見せる王妃。どうやら、怯えもせずに礼節を弁えて接してくれたことに驚いているらしい。

 

「此度よりかつての繁栄を極めしレヌール城にて、不届きな魔物が住み着いておられるという事実は我ら教会もこの目でしかと確認いたしました。僭越ながら王妃様よ、もしや神の元へ向かうべき魂を、長年悪しき魔物に妨げられておいでか?」

 

「おお、おお・・・・・・」

 

 口元に手を当て、宝石のような瞳から一条の涙を流す。心の痛みを伝えることの出来る相手が現れたのだ。無理もない。

 

「よもや、未だこの過去の魂を気にかける者がおったとは・・・・・・まさしく、相違なし。我らがレヌール国は先んずること幾年、突如として暗き雲に覆われ・・・・・・愛すべき民草すらも巻き込み、王家の全てを蹂躙された。そして新たに出でし無慈悲な魔物達は、その後もなお白亜の城にて闇の饗宴を繰り広げる。然るに我らも、命を落とした民草も・・・・・・永久に安らかな眠りにつくことすら許されぬ。神に仕えし者達よ、どうか、我らの無念の声をお聞き届けたもう・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 王家として生き抜いた魂の、無念の声。誰もが無言で立ち尽くす中、美しい女性の姿は煙のように消え去っていった。

 

 一瞬の沈黙。その直後に、広い図書室に変化が起きた。部屋中にあった本棚が、誰かに押されるようにして動いたのだ。隅にあった本棚が中央を横切る。床にうち捨てられていた本が、磁石のように開いている棚に引き寄せられる。

 

 と、不意に動きが止まった。本棚は全て規則正しく壁に並んでおり、部屋の中央には先ほどまで無かった階段が姿を見せている。

 

「まあ、階段が」

 

 シスターが声を出す。今まで、こんな階段は見たことが無かったというのに。

 

 これまで鎮魂の儀式などの理由でレヌール城に出入りをする場合は、正面の玄関からであった。先代が神父を引退する近年になって、どういうわけか内部の扉が強い錆によって開かなくなってしまったため、そういった催しは屋上のテラスで行われていたのである。

 

 実際のところ、この西の塔から下に降りるというのは、神父達とて経験が無かったのだ。だが今は、内部を珍しがっている場合でも無い。

 

 暗闇の廊下にて。シスターが神父に訊いてきた。

 

「あの、神父。先ほどの幽霊が、本当にレヌール城の王妃様なのですか?」

 

「左様。私自身は謁見したことは無いが、あの佇まいを見る限り、間違いはあるまい。あの方こそが、ソフィア様。ソフィア・エル・ロム・レヌール王妃様じゃ」

 

「・・・・・・」

 

 信じがたい、とは言えない。だが、まさかこの目でかつての王族の魂を仰ぎ見ることになろうとは。

 

「暗い雲に覆われて、国民と王族の全てを蹂躙したとおっしゃられていましたが・・・・・・」

 

「どうやら、滅んだ理由は跡継ぎがいらっしゃらなかったというだけではなかった・・・・・・という事じゃ」

 

 レヌール王家には後継者が存在しない。衰退していく一方だった国家を、魔物が襲撃したと言うことだ。

 

「ですが、なぜ魔物が? 当時はすでにこの大陸はラインハットによって統合しているはず。今更レヌール家を滅ぼしたところで、魔物達に何かメリットがあるとは思えません」

 

 まさか王様を気取るために魔物達が血の途絶える寸前だった城を滅ぼした、などとは考えたくも無い。笑えない国家ジョークだ。

 

「そればかりは分からん。だが、それをあれこれ考えていても仕方があるまい」

 

「そうですとも。まずは、子供達を助け出すのが先決です。私の不覚によって子供達が・・・・・・」

 

 番兵が主張するが、神父はやんわりと止める。

 

「気負うな。お主のせいではないぞ」

 

 遠くからは、未だに聞こえる戦いの音。少年少女が、この魔物達の長に一歩ずつ近づいていることの合図だ。

 

 ならばこちらも、一刻も早く駆けつけなければ。子供達だけに戦わせるわけにはいかない。

 

「・・・・・・まあ、簡単に行かせてはくれませんか」

 

 シスターのジゼルが独り言のように言った。廊下の突き当たりに向けられる視線の先には、人のものではない白い影が次々に姿を見せる。

 

「見たこともない魔物、ですね」

 

 シスターの1人が素直な感想を口に出す。それも当然であった。

 

 白い布を頭から被ったような、典型的なお化けの姿。黒い目と常に笑っているような口が、どこか雪だるまを思わせた。

 

 だが、この魔物から発せられる奇妙な魔力が、尋常ではなかった。おそらくこの魔物は、おばけキャンドルやナイトウイプスなどとは格が違う。図鑑などでは見たことのない相手に、自然と緊張感が奔る。

 

 そして、そのお化けの魔物は1体だけではなかった。続けて3体。そして7体、12体と増えていく。

 

 魔物達は、ジッとこちらを見つめている。何もしないのかと思ったのもつかの間。ゆらりと、先頭の魔物からこちらへと近寄っていく。その目は・・・・・・殺意。

 

 神父達はあずかり知らぬ事ではあったが、この魔物達は正規の魔物ではない。元々はこの先には暗室が存在している。その部屋で地縛霊として、侵入者を拒む壁役の亡霊達である。亡霊達は危害さえ加えなければ道を塞ぐだけで何もしない存在なのだが、今回ばかりは勝手が違った。

 

 侵入者達が次々に部下を討ち取っていることを察して、親分ゴーストが命令を下していたのだ。曰く、侵入者を倒せ、と。

 

「神父様」

 

「古来の王家の誇りを汚す亡者よ。そこを退くが良い。さもなくば、神に仕える者として魔の存在に神罰を下そうぞ」

 

 近寄ってくる魔物達は、怯むことはない。もとより、人が信仰する神の罰など恐れない連中だ。

 

 神父が手に持っている杖を構え、番兵が剣を向ける。シスターは、手に魔力を込めた。

 

 激戦は、もう一つ。今もなお子供達が戦う音にたどり着くには、まだ遠い。

 

 

 

 

「メラ!」

 

 親分ゴーストの声に、3人の少年少女が床を蹴る。

 

 戦闘が始まったときの謁見の間からは、とうに移動していた。炎や氷が放たれている現場は、廊下を挟んだテラスへと変わっている。

 

 お互いが吹き飛ばされたり転がっているうちに、いつの間にか移動していたのだ。それを気にもかけず、魔物の長は不快感をあらわにした表情で魔法を放ち続ける。時には、鋭い爪で攻撃も交えながら。

 

 少年は怯えない。少女達は怯まない。傷が付こうとも、凍傷を負おうとも。そして、火を浴びたとしても。

 

 それは、恐れを知らぬ子供ならではの無鉄砲さと言えるのかも知れない。それでも、子供達の親分ゴーストに向ける目は、紛れもなく勇気を持つ者の瞳だ。

 

 メラを撃つ。ヒャドを放つ。剣を振るう。爪で切り裂く。マヌーサで惑わす。奔る。ギラを放出する。転がる。立ち上がる。投げつけられる。また斬りかかる。

 

 そんな、一種の膠着状態に陥っている戦い。そんな戦いの流れに、変化が起きた。

 

「ヒャド!」

 

 これで何度目かの呪文。アリスは手をかざし、氷の魔法を放とうとした。

 

 だが、少女の手の平からは反応がない。ここに来て、とうとうアリスの魔力が底をついたのだ。

 

 それをチャンスとみた親分ゴーストが、逆に手の平を修道女の少女に向ける。

 

「今だ、喰らえぃ!」

 

 メラ。炎の火球は、これまでのどんな一撃よりも強かった。回避はもう出来ない。

 

 だったら――――

 

 アリスはシスターの象徴であるヴェールを、むしり取るようにして外す。解放された銀糸の髪がフワリと揺れた。

 

 そのヴェールを手にした腕で、メラの炎を正面から左へと受け流した。真横へと思いっきり振り抜き、軌道を僅かに逸らしたのである。とっさの行動だったが、上手く成功した。

 

 反対に、親分ゴーストの身体が僅かに硬直する。その瞬間、リュカが銅の剣を片手に飛びかかっていた。

 

「たあああっ!」

 

 ついに、剣の一撃が親分ゴーストの肩に食い込んだ。その骨にまで到達した感触の嫌悪すら、今は棚上げをして。

 

 だが、それでも親分ゴーストは蹈鞴を踏むだけで、倒れはしなかった。リュカの焦げかけた衣服の胸ぐらを掴み、床へと叩きつける。

 

「止めなさいよ、メラ!」

 

 横から、それ以上の追撃を防ごうとビアンカのメラが仲裁する。しかし魔物は片腕を振りかざして、火の火球を打ち払う。

 

「終わりだぁ、ギラァァッ!」

 

 ずっと手こずらせてくれた小僧への、トドメを確信したギラ。これが正真正銘、親分ゴーストの本気の一撃だった。

 

 躱せない。そう悟ったリュカの目の前が、真っ赤になる。

 

 瞬間、視界が塞がれる。夜闇の中で黒い影が、しっかりと少年の身体を抱き留めたのだ。

 

 それが他ならぬアリスだと気付いたのは、彼女の背中に受けた炎が舞い上がり、彼女の苦痛に歪む顔が夜の中で照らされたからであった。

 

 アリスがリュカを庇ったのだ。それを理解したとき、全身の力が沸騰するのを感じた。自分でも信じられないほどに、右腕に力を込める。

 

 その力が具体的に何なのかが分からないまま、その力を意識して右手に集める。拳には、確かにこの状況を切り抜けられる何かがある。それだけは確かだった。

 

 それでも親分ゴーストはリュカを狙う。シスターに邪魔をされたところで、もう1発を撃てば良いだけなのだ。これで2人目。

 

 だが、それはもう1人の少女が許さない。彼女の両手には、まるで親分ゴーストと同じような魔力が集まっているのだから。

 

 魔法は見た。何度もこの身に受け止めながら、観察を続けている。魔法力はきっと、これを放てば終わってしまう。だからこそ、この最後の魔法に賭ける。

 

 親分ゴーストの目が見開かれた。慌ててギラを放つ対象を、少年から金髪の少女へ。

 

 一直線に迫る炎の閃光。それを、ビアンカは“同じ力”をもって迎え撃った。

 

「――――ギラァァッ!!」

 

 魔物の長と同じ呪文。先ほどのメラ同士の打ち合いとは違う、互角の威力。閃光が2人の間で拮抗する。

 

「な、なんだとおおぉぉっ!?」

 

 驚愕の叫び。まさか、この戦いの最中に実戦でギラを研究し、成功させてしまうとは。

 

 そして親分ゴーストは失念する。この場にはもう1人、魔物の長を狙う者がいることを。

 

「うああああっ!」

 

 投げつけられた魔力は、竜巻に。魔物の身体すら切り刻む魔法の渦。

 

 風呪文、バギ。そのリュカが人生で初めて成功させた攻撃呪文は、親分ゴーストの身体を瞬く間に切り刻む。全身の至る箇所に切り傷を作り、最後は足元すらも浮かせてしまった。

 

 当然、そのバランスを崩した親分ゴーストはギラの狙いが逸れる。翻って、ビアンカのギラは最後の力を振り絞って突っ切ってきた。

 

 親分ゴーストが、炎に呑み込まれる。魔法の炎がテラスに燃え上がる中、ドサリと尻餅をつくのが分かった。

 

 まだ戦う気か。そう身構えたリュカとビアンカ。しかし、そこで親分ゴーストは・・・・・・なんと、両手を挙げた。

 

「降参だ・・・・・・もう俺は戦わない」

 

「何を言っているのよ。今更そんな都合の良いことを信じろっていうの?」

 

「信じてくれ、としか言えないな。これでも俺は末端とはいえ、魔物の親分としての矜持がある。一度認めたことを覆すような真似はしない」

 

 事実、親分ゴーストからは先ほどまでの覇気が消えていた。その態度に、子供達もまた敵意を削いでいく。言葉をそのまま鵜呑みにしてはいけないのだが、なんとなく話だけは聞こうと思ったのだ。

 

「俺たちは元々、魔界のはみ出し者だったんだ。この古い城を見かけたときは、ようやく自分達の居場所が手に入ると喜んだもんだ。だが、これ以上戦ってもお前達はきっと俺を討つだろう。せめて、そうなる前に命だけは勘弁してくれ、って話だ」

 

「・・・・・・魔物さん。その話、本当だよね?」

 

「負けを認める。俺たちもすぐにこの城から出て行く。そうすれば、もうお前達の町から妙な噂が出ることはないはずだ」

 

「わかった。それなら、僕たちもこれ以上はあなた達とは戦わない」

 

 ハッキリとした声で、リュカは言った。対照的に驚いたのは、ビアンカ。

 

「ちょっとリュカ、勝手に決めないで。この魔物、嘘をついているかも知れないじゃない。簡単に悪いことをした人を信じたらダメってお母さんから教わっているもの」

 

「この人は、嘘をついてなんかいないよ」

 

「・・・・・・信じてくれるのか。それは有り難いことだ。年寄りのささやかなアドバイスだが、その相手を信じる気持ちを忘れずにな。そうすれば、きっと誰よりも格好いい大人になれるはずだ」

 

「うん。僕、お父さんみたいに格好いい大人になりたいんだ」

 

「ほお・・・・・・それなら、俺もこんな風に落ちぶれちまう前に、会ってみたかったもんだな」

 

 最後には、むしろ穏やかな年寄りのような笑みさえ浮かべながら、親分ゴーストは煙のように姿を消した。気付けば、今までレヌール城が纏っていた怪しい雰囲気もなくなっている。

 

 きっと、城の魔物達は親分ゴーストに付いていく形で去って行ったのだ。あの老いた大将も、少なくとも部下達の前では慕われる親分だったのだろう。

 

「・・・・・・って、そうだ。アリス!」

 

 我に返るリュカ。所々が焦げかかっているテラスの隅に、意識を失って倒れている少女。

 

 そして、自分を庇ってくれた女の子。なぜすぐに駆けつけなかったのだと、リュカは自分を責めた。

 

「リュカ、ホイミを使ってあげて!」

 

「分かってるよ!」

 

 言われるまでもない。リュカはすぐにアリスに駆け寄り、手で背中に触れる。

 

 強力なギラを受けたせいで、アリスの修道服は背中部分が完全に灰になっているため、背中が全て見えている有様だった。本来なら年相応の白い肌も、今は皮膚や肉が焦げるほどの火傷と血で塗れている。

 

 自分があの時、もしもまともに受けていれば命はなかっただろうと、リュカは改めてこの少女に命を救われたのだと実感する。

 

 だからこそ、早く回復をしなければ。そう思ったのだが、少年の手からは魔法が発動しない。まるで、使えなくなってしまったかのような。

 

「ちょっと・・・・・・もしかして」

 

 顔を青ざめさせるビアンカ。考えるまでもない事実だ。魔法力を使い果たした。

 

「そんな・・・・・・」

 

 ビアンカは魔力の相性もあって、回復呪文が使えない。かといって、道具袋の中には薬草もないのだ。

 

 アリスの火傷は、刻一刻とひどくなっている。それが、2人の子供を焦らせた。このままでは、彼女が死んでしまう。

 

「し、神父様達は!? このレヌール城に一緒に来てるってアリスが言ってた!」

 

「今、どこにいるのよ! こんな広い城の中を探していたら間に合わないわよ!!」

 

「それなら、せめて町まで運ぼう!」

 

「無理よ、ここからどれだけ距離があると思っているのよ!」

 

 もはや八つ当たりめいた口論に発展しかける。

 

 だからこそ、2人を仲裁するようにかけられた声に、リュカとビアンカは耳を傾けた。

 

「いいえ、その子は死になどいたしません」

 

 どこからともなく、暖かい風が3人を包み込んだ。身体が楽になっていき、いつの間にか疲労感や怪我も癒えていくのが分かる。

 

 そして、アリスの怪我も。焦げてしまった衣服だけは変わらないが、背中の火傷はたちまち癒えていき、少女の滑らかな背中に戻っていった。

 

 声をかけてくれたのは、誰なのだろう。そう疑問に思うと同時に、2人は浮遊感に覆われた。気を失ったままのアリスは、リュカが両腕に抱いたまま。

 

 突如、身体が空に浮いていく現実も、どこか穏やかな気持ちで受け止めることが出来た。誰かに運ばれるようにして足を下ろしたのは、屋上の墓の前。この辺りを見渡せる美しい景色が、月明かりに照らされて映えている。

 

 墓の前に立っているのは、髪と髭が白い初老の男性。身体の向こう側が透けているので、この者も幽霊なのだ。何より特徴的なのは、深紅のマントと黄金の冠。

 

 このレヌール王家の末裔、エリック王だ。

 

 そして隣に立っているのは、美しい瞳と、煌びやかなドレスを身につけた女性。紛れもなくエリック王の妻、ソフィア王妃である。

 

 2人は互いに寄り添うようにして、子供達に礼を言った。

 

「まこと、感謝致す。我らの安らかなる眠りを妨げし亡霊を討ち果たす姿、余の目にもしかと拝見させてもらった」

 

「これで、エリックも私も、そして・・・・・・最後まで王家に忠誠を誓った者達も、安らかな眠りにつくことが出来ます」

 

「勇敢なりし子供達よ・・・・・・これは、せめてもの礼なり。受け取るがよい」

 

 エリックの前に、小さな光が集まっていく。それは次第に形をなし、黄金の宝玉に変わっていく。

 

「少年達よ。それはまさしく、遠い過去により我らがレヌールへ天から承りし宝玉なり。時の王家は、この宝玉をレヌール家の家宝として代々受け継がせておった」

 

 国の家宝。滅んでしまった王族が後世に残せる宝。それを、リュカはこの時確かに受け取ったのである。

 

「綺麗な宝玉ね。うちの宿屋には、ちょっと眩しすぎるかしら」

 

 隣で、ビアンカがそんな感想を口にする。エリック王とソフィア妃が、クスクスと笑った。

 

「それと・・・・・・私からも。この勇敢なる少女へ」

 

 ソフィアが、目を閉じる。再び光が目の前に集まった。

 

 しかし、今度はリュカの手元ではない。彼に抱えられているアリスの身体が、白い光で包まれたのだ。至近距離の光に、思わず目を閉じる少年。

 

「あ・・・・・・」

 

 リュカとビアンカは、ポカンと口を開けた。今や穏やかに眠っているアリスは、丁寧な刺繍が入った黒いゴシックドレスの姿へと変わっていたのである。

 

 ワンピースタイプのスカート。手足にはオペラグローブに、ニーソックス。貴族の令嬢が身につけるような、上質なドレスであった。

 

「ささやかな贈り物ですが・・・・・・どうか、僅かなりとも喜んでいただけたら幸いです」

 

 本当にすまなそうに、礼をするソフィア。ボロボロになってしまった衣服のままでは、確かに帰るのは辛いだろう。

 

「大丈夫ですよ、ソフィア様。アリスならきっと、気に入ってくれると思います。だって、とっても似合っていますから」

 

 どこか確信を持って言うビアンカ。その言葉に救われたのか、微笑みを浮かべるソフィア。

 

「感謝致します・・・・・・勇気ある子供達よ。あのアリスという子にも、どうかよろしくお伝えください」

 

「はい。必ず」

 

「さようなら・・・・・・」

 

 王と王妃の姿は、足元からゆっくりと消えていく。最後に見せた2人の幸せそうな顔は、きっと忘れることはないだろう。

 

 魂は消えていく。あるべき世界へ向かっていく。

 

 後には、もう何も残ってはいない。

 

 リュカが持つ黄金の玉と、アリスが身につけている、美しいドレスだけが名残となって・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――なあ、ソフィアよ・・・・・・

 

 

 ――――はい、エリック・・・・・・

 

 

 ――――あの子供達は、これから先も幸せに人生を謳歌できると思うか?

 

 

 ――――わかりません。

 

 

 ――――余もだ。あ奴らはそう遠くない時の後、必ずや運命の鎖に縛られるのであろうと。

 

 

 ――――そうです。そして、その運命はやがて世界の全てを巻き込むと。

 

 

 ――――せめて余らに出来る事が、希望をあの子達に預けることだけだとは・・・・・・なんとも歯がゆい事よ。

 

 

 ――――そうですね。ですが、奇跡は起きます。

 

 

 ――――奇跡、か。希望は1つだけではないと申すか?

 

 

 ――――はい。私には確信があるのです。一目見て分かりました。

 

 

 ――――あの子、か。

 

 

 ――――はい。運命はもはや避けられぬ。ならばこそ、この世の希望へとつなぐ架け橋よ、有れと。

 

 

 ――――だからこそ、お主はあのドレスを・・・・・・

 

 

 ――――そうです。もし、エリックとの間に子供が生まれていたらと、そんな夢を見て作り上げたドレス。いつか、我が子に袖を通してほしかった・・・・・・

 

 

 ――――子を為せなかったこと、誠に無念の極み。余は王族として、為すべき義務を為せなかった・・・・・・

 

 

 ――――いえ。どうかご自身をお責めになって欲しくて、このような事を口にしたわけではないのです。エリック、私はあなたという王の妻となり、後悔したことなど一度もございません。

 

 

 ――――ソフィア・・・・・・余も同じ気持ちだ。

 

 

 ――――さあ、エリック。

 

 

 ――――うむ。参ろう。この世界は過去の魂がいてはならぬ世界だ。未来のことは、これより先を歩むべき者達へと託すとしよう。

 

 

 ――――はい。どこまでも傍に参ります。愛するエリック・・・・・・

 

 

 ――――うむ。共に行こう。愛するソフィアよ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、瞬きほどの時が過ぎたあと。

 

 朝日が、ゆっくりと大陸を照らし始めた。

 

 

 

 

 つづく




オリジナルアイテム:1

名前  :修道服
守備力 :7
特殊効果:なし
修道女が身につける正装。旅の尼が身につけることを前提として作られているので、旅人の服と同程度の防御力。ヴェールも同じ素材。
国によっては若干宗派などの違いから、色や素材にも違いがあるらしい。


名前  :貴族のドレス
守備力 :17
特殊効果:なし
レヌール王家に仕える貴族御用達のドレス。もし娘が生まれたら着せたいと夢見ていたソフィアが、こっそり特注で針子に作らせた一品。いざという時の事態を想定して、戦闘にも耐えられるように素材にはこだわりがあるらしい。
ちなみに、エリックには普通にバレていた。王としては、どちらかというと男の子が良いなあと密かに思っていたとかいなかったとか。
元々、上品さを出すために白いドレスのデザインだったのだが、アリスはこれから先の戦いの中で傷を負い続けるのだろうとなんとなく予感し、即興で色を変えた。理由は「仮にもドレスなのだから汚れが目立って欲しくありません」というささやかな願いのため。



*いくつか修正し忘れた部分が多々ありました。この場を借りてお詫び申し上げます。
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