北条悟史のカケラ紀行 作:三和
僕が決意を固めたところでもう出来る事なんて無いのは…何となくだけど分かってた…それでも、諦めたくなんて無かった…
「圭一。」
「っ!……悟史か。」
その日、僕は久しぶりに圭一と正面から目を合わせた…
昼…以前までは教室で弁当を食べていた圭一は…最近は午前の授業が終わると同時に教室を出て行ってしまう…席を立ち、彼を追おうとする僕に魅音が声を掛けて来る…
「今は刺激しない方が良いんじゃないかな…?」
…それは僕自身も感じてたし…他の皆からも言われた…でも…
「その…何て言うか……いや、ちゃんと言おうか…男同士だから話せる事も有るんじゃないかと思うんだ…」
僕は皆の事を大事な仲間だと思ってるし、少なくとも圭一だって最近はともかく…元はそう思っていた筈だ…でも、皆は女子で僕と圭一は男子だ…他に歳の近い男子も居ないし…実際、向こうでも圭一はそれで色々と苦労してるらしく…病室で二人だけになった時に相談された事も有る(ちなみに、彼の悩みの大半は当時僕も抱えてた様な物もかなり有った…結局解決策こそ出してあげられなかったけど、結構共感は出来た)
「…うん、そう言う事なら任せるよ…圭ちゃんの事、頼むね?」
「うん…行って来るよ。」
……まぁ、僕もあの状態の圭一とまともに話す自信は無い…でも、このまま何もしない訳には行かない。
『悟史、どうやって圭一と話すつもりですか?』
「う~ん…まぁ、何とかやってみるよ…」
焦れば焦るほど状況が悪化するのが目に見えてる…だから、僕は楽観的に振る舞う…そうだ、多分…きっと…まだ何とかなる…
そうして、分校の裏…地面に座り込んで弁当を食べる圭一を見付け、声を掛けた。
「…何の用だよ?」
「(いきなり核心を突いたら、また荒れるよなぁ…)…いや、たまには男二人でご飯食べるのも良いかと思ってさ…邪魔なら戻るけど?」
「…そう、だな…たまには良いか。」
ふぅ……やれやれ…先ずは第一関門突破だ…さて、何処で切り出すかなぁ…
取り敢えず弁当を食べながら、他愛の無い話を圭一に振って行く…とは言え、圭一は生返事を繰り返すばかりで聞いてるんだか聞いてないんだか(まぁ、今してる話に関しては別に聞いて貰わなくても良いんだけど)
「ハァ…なぁ、悟史?」
「っ…え?」
「惚けるなよ、お前…本当は何か、ちゃんとした用が有って来たんじゃないか?」
……どうする?今、切り出すか?
『悟史…』
「…圭一、最近何か悩んでる?」
「……」
「えっと…圭一?」
「…何だよ?」
「僕はさ、別に無理に聞き出そうとは思ってないよ?」
「!……へ?」
「話したくないなら、それでも良い…いつか、気が向いたらで良いし…何なら僕じゃなくても良い。」
「……」
正直に言えば、あの頃の事を全部覚えている訳じゃない…でも、無理矢理に聞き出そうとすれば、暴走する…それは分かってる。仲間に対する不信感は中々拭えず、ちょっとした仕草全てが敵対行為に見え…しまいには自分の事すら信じる事が出来ず、最後には精神が崩壊する…
真っ直ぐ正面からぶつかる…それは、最終手段だ…今の段階でやるのは確実に逆効果になる…
「ま、そうだね…今度の日曜日二人で出掛けないかい?」
「……は?」
今まで感じてた圭一の鬱屈した雰囲気が少し消えたのが分かった…上手く、行ったのかな…
「どうかな?」
「…まぁ、良いけどさ。」
行き当たりばったりなのは分かってる…でも、出来る事は全部しておきたいからね…さて、どうするかな…