北条悟史のカケラ紀行 作:三和
「…ここは…!?」
「カケラの世界なのです。」
「カケラの、世界…?」
「…雛見沢では今の未来を皆で勝ち取るまでたくさんの悲劇がありました。……ここはそんな悲劇の起こり犠牲者のたくさん出てしまった雛見沢のカケラが集まる世界なのです…」
「…ここはパラレルワールドの集まる世界…?」
「簡単に言えばそうです。……そしてある人物はこの雛見沢の全ての悲劇を見て来ました。」
「…そんな……」
たった一人で人が死ぬ光景を見続けるなんて……
「……」
羽入がいつの間にか流れていた涙を指で拭ってくれていた。
「…泣かないで下さい。その人はもう仲間と協力して悲劇を乗り越えました。……もう一人じゃありません……」
「…その人は、誰…?」
羽入が伝えてくれてる時点で何となく分かるが一応聞いてみる。
「ボクの口からは答えられません……」
「…僕はこれから…その人と同じ体験を…?」
「…それは……無理です。その人は体感で百年分のカケラを見て来ました。……ここと現実世界は時間の流れが違うとはいえ、一晩では足りません。」
「…百年!?」
そんな、途方も無い時間をたった一人で……!?
「…悟史、貴方にはその中でも特に酷かったいくつかのカケラを見てもらいます。もちろん、当事者として。」
「でも僕は……そっちの世界でも眠ったままじゃ…?」
「…貴方が叔母を殺した事実は無かった……今から体験するのはどのカケラもそういう前提の世界です……」
「……」
「…止めたいですか?今ならまだ間に合います……」
「…いや、行くよ。……僕は皆と同じものを見てみたい。例えどれほどの悲劇だろうと。」
そうだ。そうしなければきっと僕は一歩も前に進めない。
「…分かりました。……ボクから一つお願いがあります……」
「…何かな?」
「どうか……彼女を守って欲しいのです……。全ての悲劇の中心にいる彼女を……」
「…分かった。約束は出来ないけれど出来るだけ守ってみせる……」
「…悟史、ありがとうなのです。……でも無茶はしないで欲しいのです……仮にその世界で悟史が死んでも実際に現実の悟史が死ぬ事はありませんが悟史はその事をずっと覚えているのです……それはとても辛い事なのです……」
「…分かった。気を付けるよ……」
「悟史、本当に良いのですか…?僕だって本当は悟史に辛い目に…わっ!」
僕は彼女の頭を撫でる。
「…さっ、悟史?何をしているのですか…?」
「何って頭を撫でてるんだけど……嫌だった…?」
「いっ、嫌では無いのです……でもどうして、急に…?」
「…羽入が悲しそうな顔をしてたから。……ねぇ羽入?大丈夫だよ。僕は挫けない。絶対にその人を守って帰って来るから。そして皆の本当の仲間になるんだ。」
「…悟史…」
「だから、笑って送り出してよ。僕は大丈夫だから。」
「…悟史……分かりました。行ってらっしゃいなのです。」
そうして笑顔を浮かべた彼女の顔を最後に僕の意識は途切れた……