北条悟史のカケラ紀行 作:三和
「……起きて……し」
誰かの声が聞こえる……僕を起こそうとしているらしい……こんな穏やかな気持ちで眠れるのは久しぶりだからもう少し寝かせてくれると……
「にーにー!いい加減起きて下さいまし!」
その言葉共に布団を剥ぎ取られ僕は慌てて起きる
「うわっ!……あれ?」
「ようやく起きたんですのね!早く用意を……にーにー?何処か具合でも悪いんですの…?」
目の前には沙都子の心配そうな顔……
「…いや、大丈夫だよ、沙都子。」
何が起きてるのか分からないけど沙都子にそんな顔させちゃいけない。
「…本当ですの?病み上がりなんですから無理はしないで下さいましね?……さっ、大丈夫なら早く着替えて来てくださいまし!朝ご飯が冷めてしまいますわ!」
そう言って沙都子は部屋を出て行った……ふぅ。
「…僕、入院してた筈だよな…?」
少なくともいきなり退院出来る状態では無かった筈だ……何せ長い間寝たきりだったせいでまともに歩く事すらままならなかったんだから……
「…んっ…」
取り敢えず立ち上がってみる……異常は無い。僕は部屋を見渡した。
「…僕の部屋?」
そこは北条家の僕の部屋だ。……一体何が起こってるんだ…?
「…着替えるか。」
見慣れた部屋だ。勝手は分かる。タンスに向かい、開ける
「…僕の服…」
雛見沢分校用のシャツとズボンを見つけた。……そう言えば……
「…今は夏なのか…」
そう認識すると急に暑くなってきた……良く扇風機も無いこんな部屋で二度寝しようと思ったものだ。
「…暑い…」
……着替えを終え茶の間に向かう
「遅いですわよにーにー!急がないと遅刻してしまいますわ!」
「みぃ。悟史はお寝坊さんなのです。」
そこにいたのは沙都子と……梨花、ちゃん…?
「…むぅ…ごめん。」
変だとは思ったが待たせたのは事実なので取り敢えず謝る事にする。
「もういいですから早く座って下さいませ。冷めてしまいますわ!」
「ボクはもうお腹ペコペコなのです。」
「……別に先に食べててくれても良かったのに。」
ついそんな事を言ってしまう。……入院中は一人で食べる事が多かったから……学校がある以上平日は詩音も基本的に食事時にはいないし……
「何言ってるんですの!家族なんだから一緒に食べるのは当たり前ですわ!」
「…家族…」
僕は久しぶりにそんな言葉を聞いた気がした。
「…みぃ…早く食べようなのです。」
梨花ちゃん……多分気を使ってくれたんだろうな……
「…ごめん、食べようか。」
『いただきます』
三人で声を合わせ挨拶をする……。何となくそれも新鮮だった。
朝ご飯は白いご飯に煮物と味噌汁……多分残り物なんだろうけど僕は何時も見た目も何処と無く味気無い病院食が多かったから不思議と凄く美味しそうに見えた。……煮物を箸で摘んで口に入れる……美味しい。
「…沙都子、この煮物美味しいね。」
「!…なっ、何言ってるんですの!?昨日と同じ味付けですわよ!?」
「それは沙都子が作ったのですよ。」
「りっ、梨花ぁ!?」
……そっか。沙都子が……何となく涙が込み上げて来て二人が軽く口喧嘩してる間に必死で拭った。
……僕が欲しかった物が今ここにある。何が起きてるのかは分からないけど僕は今ここにいる。
僕は止まらない涙をこっそり拭いつつ朝ご飯を食べ進めた……