北条悟史のカケラ紀行   作:三和

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「良しっ、と。」

 

僕はノートからこれからの事を書き込んだ部分を千切った。

 

「…ねぇ羽入、こんな感じでどうかな?」

 

『どれどれ…特に問題は無さそうですね…でも…』

 

羽入が不安そうな顔をする…大丈夫だよ。

 

「うん。分かってるよ…僕が動く以上必ずこうなるとは限らないんだよね?」

 

悲劇が起きると分かっている僕がいる以上、そう簡単に事件を起こさせるつもりは無い…と言いたい所だけど…起きると想定して動く僕がいる以上予想も出来ない展開になる可能性は否定出来ない…それに…

 

「…ねぇ羽入?」

 

『何ですか?』

 

「…実を言うと良く分からない事があるんだけど…」

 

『…どうぞ、聞いて下さい…今の悟史になら、大抵の事は答えられますから…』

 

「…それじゃあいきなり核心に触れる事になると思うんだけど…そもそも皆から聞いた話だと昔から雛見沢に存在する山狗っていう組織が一連の事件の黒幕だと聞いてる…裏で始末をしたりもするけど…大抵は僕もかかっていた雛見沢症候群にかかっている人を利用したりするって…」

 

僕は皆から聞いた話を冷静に分析する…いや、皆の場合、僕を楽しませるためなのか、それとも素直にそういう印象だったのか分からないけど…大抵はラストの山狗との肉弾戦の辺りばかり掘り下げて一番大事な切っ掛けの部分をぼかすからこっちである程度考えないといけないんだよね…

 

「それで良く考えたら仮にも訓練された軍人もいたって言う山狗の連中を出し抜いて皆が今回の悲劇を防げたって言うのがどうしても納得行かなくて…でさ、羽入?」

 

そこで僕は一旦口を閉じて深呼吸する…羽入は僕を黙って見ている…まるで推理小説の探偵役をやってるみたいだ…観客は一人しかいないけど、こういうのはやった事無いから緊張する…それと同時に興奮もしてるけど。

 

「すっごい荒唐無稽な事言うよ?もしかして皆には他の世界の記憶があったの…?」

 

『はい。その通りですよ、悟史。』

 

あっさり笑顔で肯定されて、思わず座っていた椅子から転げ落ちそうになる…僕が記憶を持ったままここにいるわけだしそういう事もあるかと思ったけど…えっ?本当に?

 

「…じゃ、じゃあ皆もカケラの世界の事を『それはちょっと違いますかね』えっ?」

 

『皆はカケラの世界の事を認知していたわけではありません…ただ、確かにあったのです…疑心暗鬼により仲間や家族、そして、最期には自分自身すら殺してしまった過去の記憶を…』

 

『ボクとずっと世界を渡って来た「梨花ちゃんだよね?」…気が付いてたんですね、その通りです…ボクと梨花以外、誰も過去の事は覚えてないのだと思ってました…そして梨花が真実を話しても大抵は信じて貰えず、悲劇は起き、生き残った仲間もバラバラのまま、梨花は一人、殺されてしまう…それがずっと続くのだと思っていた…でも、皆の中にも確かにその記憶はあった…そしてそれは梨花と関わった他の多くの人の中にも…皆が悲劇が起きる、そして梨花が殺される…その事実を正しい物であると認識して行動出来たから…私たちは運命を打ち破れた。』

 

「…つまり、僕は…」

 

『皆が勝ち取った未来を一人で手繰り寄せなければなりません。…貴方に出来ますか?一人で悲劇に立ち向かう事が?』

 

……決まってるよ羽入。

 

「…出来るよ。僕は運命に屈しない…でも一人じゃないよ?羽入がいるし、僕には他にも仲間がいるんだ…記憶が無くたって僕が皆を引っ張っれば良い。」

 

……それが出来ないと僕は圭一に胸を張って仲間だって言えないからね…記憶が有ろうが無かろうが皆を纏め上げたのは間違いなく彼なんだから…

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