北条悟史のカケラ紀行 作:三和
方針は決めた、とにかく…四六時中では無くても目を光らせる……言うのは簡単だ、そんな事…完璧にこなすのは結局無理だと分かってはいた…
「悟史、お前は味方なんだよな…?俺を…裏切ったりしないよな…?」
「…大丈夫だよ、圭一…僕は味方だ…それに、皆だってそもそも…初めから君を裏切ってなんて「嘘だ!アイツらは…アイツらは俺を裏切った…!」圭一…」
それでも確かに僕は見張っていた…だけど、今目の前に居る圭一は可笑しくなってしまっている…どうして…
最初に圭一の変化に気付いたのは当然と言うか、やっぱり僕だった…どうにかしたかったけど、彼は僕に話し掛けられると何故か口を噤む…その癖最初は他の皆には積極的に話し掛けて行くのに、彼は途中で声を荒げ…その内、彼は皆から自分で遠ざかって行く様になった…
少なくともこうなる前に皆は圭一と話をしていた筈だ…なので皆に彼とどんな話をしたのか聞いても今度は皆も答えてくれない…これだと、僕も孤立して行きそうだ…まぁ、以前の僕ならまだしも…今の僕は…皆が僕を仲間外れにしようとしてる訳じゃないのは分かってるけどね…
それでも、コレと同じ対応をしていたなら…多分今の圭一は相当傷付くだろうね…僕には何となくだけど分かる…拠り所を求めているのに、皆から冷たい対応をされ(正確にはそう思い込んでる、だけど)て、自分の作った架空の孤独感に押し潰されそうになっている彼の心の内が…
皆だけを責めるつもりは無い…皆の反応で分かる、少なくともこれはお互いに対する誤解が招いた事態なんだと…それにしても、彼はあれだけ追い込まれているのにどうして僕には相談に来ないのか…それが分からない。
むぅ…思った以上に、僕は彼に信用されてないのかな…
『悟史…大丈夫ですか…?』
「ん?ああ、大丈夫。」
今この世界で羽入と会話出来るのは僕だけなんだ…彼女を不安がらせちゃいけない…それに…
「少なくとも、圭一は今僕以上に辛い筈だ…どうにかしないと…」
実際、今は彼が追い込まれてるのに気付いてるのは僕だけなのは間違い無い…どうしたら良いのか…今の所、原因もハッキリしない…
『…悟史、ボクは今…圭一の事より、悟史の方が心配です…本当に大丈夫ですか…?無理、してませんか…?』
「ッ…ふぅ…そうだね、正直に言うと確かに…ちょっとキツいとは思ってるかな…」
圭一は味方が居ない(と、思い込んでいる…)だけど、それは今の僕も同じでは有る…圭一をこのままにしていたら悲劇が起こる…その事を予想出来ているのは確実に僕だけだ…そして、僕はソレを仲間の誰にも相談出来無い…
「分かるんだ、今の皆に話しても誰も信じてくれないのは……凄いな、梨花ちゃんは百年もこんな気持ちをずっと味わっていたんだ…」
『悟史…』
「でもね、だからってこのまま圭一を見捨てる事も僕には出来無いんだ。だってアレは…正しく嘗ての僕の姿なんだからね…」
「…羽入、僕は頑張るよ。だから…もう少し見守っていてくれないかな?」
『…分かりました。…悟史?』
「ん?」
『…何も出来無い、不甲斐無いボクを許してください…でもせめて、ボクは最後まで悟史の傍にいますから…』
「ありがとう、羽入。」