「……何?」
「いや…何でもない。」
「そう…」
部屋の前にいた時とはうって変わり今、彼女更識楯無は言葉を発せず黙々と料理をしている……水着エプロンで。
「何?お姉さんに見蕩れちゃっ「百年経っても無いから安心してくれて良いぞ」本当にムカつくわね…!」
もちろん私が彼女に視線をやるのは邪な理由からでは無い……目に毒なのは確かだが彼女が自分の容姿を使って私を揶揄うのは何も今に始まったことじゃない…私が見ているのは彼女の首だ。
「痛むか?」
「…ん?ああ、これ?誰かさんのおかげで痣が残っちゃったけど別に痛くはないわねぇ…」
彼女の首には指の形の痣が残っている。…さっき私が首を絞めたせいだな。
「謝らんぞ?」
「期待してないわよ?」
軽口を飛ばせば軽口で返ってくる…認めたくないが私はこの関係性を嫌ってはいないのだろう。…恋愛感情ではないが。彼女から発せられる好意も恋愛感情では無さそうだが。
「……で?本題は何だ?」
「……貴方の勘違いを質しておきたくてね……」
「……勘違い?…!」
気付くと私の身体は宙を舞っていた。すぐに彼女に投げられたのだと気付く。…私の想定より早かったな…彼女がずっと私の隙を伺ってるのは気付いていたがまさか懐に入る瞬間すら見えないとは…床に叩き付けられる瞬間、手を床に叩き付け身体に加わるだろう衝撃を殺し「チェックメイトよ。」起き上がろうとした私にISを展開した彼女が上からランスを突きつけていた。
「降参だ。強くなったな、刀奈。」
「……今の私は更識楯無よ。やっと貴方から一本取れたわ。」
ニヤリと笑った彼女がランスを退けたので私は立ち上がる……更識家に匿われていた頃私を警戒していた彼女が絡んで来る度に彼女を投げ飛ばしていたのを思い出す……何故護衛が私より実力の劣る彼女なのかと当主の楯無さんに聞いたのもいい思い出だ……そうか。追い越されてしまったか。
「何を考えてるのかも分かるし、浸ってるのも分かるけど私は納得してないわよ?貴方今の対応出来たでしょう?」
「……バレたか。」
そう。私は今の投げは見えてこそいなかったが対応出来ないわけでは無かった。それにここが戦場なら例え無手であろうとも武器を突き付けられた位では私は抵抗を辞めないだろう…
「まぁ今はそれは良いわ。…私が言いたいのはこういう事よ…確かに更識家は国を護るのが使命だけど…政府の犬じゃないわ。」
「……」
「今の政府が腐敗の一途を辿ってるのは分かってる…貴方よりずっとね。」
「……それで?」
「貴方が国に切られたら更識家は貴方につくわ。…私の護りたい国は政府じゃなくて人の事。貴方が日本人で有る限り私は貴方を見限らない。…何より私は見ず知らずの人たちよりも家族を一番先に護りたいの。…貴方と同じでね。」
「……君の中では私も家族か。」
「当然よ♪もちろん私にとっては一夏君も織斑先生も家族よ♪」
「暗部の人間とは思えない発言だな。」
「今の更識の当主は私よ。世界は変わろうとしてる。…これからの時代、昔の様に国の礎という名の犠牲を容認するのが暗部だとは私にはどうしても思えないの。私は誰も諦めたくない!」
「甘いな…だが悪くない。」
私は右手を差し出す。
「?…何?」
「これは私の決意表明だ…君がその覚悟を貫ける限り私は裏切らないと約束しよう…最もどういう形で君に協力するかは私に一任させてもらうがな。」
「勝手な言い分ね…でも、良いわ!」
彼女が私の手を握る
「覚悟してね♪思いっ切り利用してあげるから♪」
「……先の言葉撤回「させないわ♪」そうか。」
とんでもない契約を交わしてしまった事に今更気付くが私にはもう選択肢は無いようだ…