「兄さん…本当に従軍経験無いんですか…?」
ラウラに手渡されたそれを、部屋の壁に向けて試しに構えてみればラウラにそう聞かれた。
「……どういう意味だ?」
「…意味なら…聞かれた兄さん自身が一番理解してますよね?」
「……」
普通、素人がいきなり拳銃を渡されて構えれば人それぞれではあるが大なり小なり癖が出てしまうのが普通だ…軍ではそれを実戦で使えるようにする為矯正を掛ける。実際私も直された記憶はあるし、若手に教えた事もある…
「ラウラ…私は…?」
構えで素人で無い事を気付かれたと思った私は自分の事を伝えようとしたが、そんな私の目の前でラウラが片手を上げた。
「…やっぱり良いです…この場では私は何も聞きません。」
「ラウラ…」
「クラリッサ…私の副官からは、この銃と弾を用意はされました…」
私は改めて手に持つ銃を見る…何処か懐かしいその形…
「ルガーP08…」
「…ご存知でしたか…ではその銃の説明はしなくて大丈夫ですね…?」
「ああ…大丈夫だ。」
「それは倉庫にあった余り物だそうでろくに調整も手入れもされていません。実戦で使うには不安が残りますが…」
そもそも何処かに展示されていても可笑しく無い骨董品だからな…
「…いや…急な話の上、一銭も払わずに用意してもらったんだ…文句は無いさ…一応確認するが、こちらで弄っても良いんだな?」
「ええ、それはもう貴方の物なのでお好きに。」
「それで…弾丸だが…」
「クラリッサが用意出来たのはこれだけです…」
マガジンが三つ…と言うか…
「わざわざ詰めてくれたわけか?」
「ええ、クラリッサが…箱よりも手渡ししやすいから、と言うのが理由ですが…」
マガジンを一つ手に取り、眺める…弾はきっちり隙間無く詰めてあるが、万が一の為か、八発入のマガジンに七発しか入っていない。
「……」
銃からマガジンを抜けばそれも七発…ま、すぐに使わないと考えればそれが妥当か。
「撃ち方を教えなければ、と思っていましたがその様子なら問題ありませんね?」
「ああ。」
どちらにしろこれでは無駄撃ちも出来んがな…
「…では、私に出来るのはここまでです。」
「そうか…もう決まったのか…」
「ええ…明後日には私は日本…織斑家に行きます…あの…」
「何だ?」
「……ご武運をお祈りしています…」
「……」
何処で覚えたんだ、それは…
「ラウラ、そう深刻に考えるな。私が必ずこれを使う事になると決まったわけじゃない。」
「…何となくですが…」
「ん?」
「予感が…あるんです…きっと兄さんは近い内に生身で敵と相対する事になる…」
「……」
「その時兄さんは「撃つ。敵であるなら私は…そいつを撃つ」……」
「クラリッサ・ハルフォーフだったか、お前の副官の名前は?」
「ええ…最もこれからは他人になりますが。」
「…出来る事なら…彼女が敵にならない事を祈りたいな。」
「……」