クソ、ブラック企業め!   作:白痴の蝸牛

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 前の投稿から一年開いたので初投稿です。
 オリジニウムレコードのロリサリアが可愛すぎて虐めたくなったので書きました。オリジナル設定や解釈注意です。


サリア

「ハッハアー!おらおらどうした!?俺に攻撃当てねーと訓練終わらねーぞ!」

 

「うわぁ!」

 

 俺の名はカクヨウ。ケツの青いひよっこどもを扱きまわす戦闘狂だ。今日は行動予備隊A1のメンバーを教官二人体制で扱いている。なんでも実践で不足しがちな『特記戦力相手の多対一』を想定した訓練だそうだ。

 

「カクヨウさんの動きが早すぎます、陣形が…!」

 

「ビーグル!前に出過ぎだ!俺の攻撃をいなせる装備を持ってるのはお前だけだ!敵の進撃に合わせて医療兵と先鋒を先に後退させて、前衛と重装のお前が俺を押しとどめて、術師と狙撃の牽制の間に残りのお前らが下がって治癒を受けたりだのアーツを練るだのして陣形を立て直す!多対一下での消耗戦の基本だ覚えときな!」

 

「は、はい!…わっ!?」

 

「武器の攻撃だけに意識を裂かれすぎだぜ!俺の左手に視線を合わせて動いてちゃあ今みてーに意識外の攻撃にやられっぞ!」

 

 盾で木刀による攻撃を捌きながら返事をするビーグルの訓練用ナイフをはたき落とし、その体を盾ごと蹴りで吹っ飛ばして無理矢理後退させる。医療兵のハイビスカスはすぐさま治療アーツを施し、狙撃兵のクルースはビーグルが俺を押しとどめているときから頭に狙いをつけていた。ふむ、この2人は及第点か。

 

「フェン!隊長のお前が判断を遅れてどうする!突起戦力を前に1秒でも油断したら死ぬと思え!重装に立て直しが必要になったら真っ先に指示を出して陣形を変更、アーツや遠距離攻撃への対策をしろ!負傷兵の治療が終わるまで一箇所にいるなんざまとめて攻撃して下さいって言ってるようなモンだ!」

 

「あっ、ああ!はい!ラヴァ!アーツで牽制!」

 

「了解!」

 

 正解だ。範囲術師のラヴァ、彼女のアーツはシンプルな爆発。術の威力は高いが故に、この局面では敵への決定打にはならない。戦場で狙撃とアーツを警戒しない歴戦の兵士なんて存在しないからだ。

 

 ならばこの限られた状況で彼女のアーツを十全に活かすならどうするか。敵の行動牽制だ。習得している戦術詠唱を使えば爆破の間隔を大幅に短縮して相手にアーツを避けることに集中せざるを得ない状況を作り出すことができる。

 

「ハイビスはアーツを展開していつでも応急処置ができるように構えて!クルースは狙いを定めて待機して!」

 

「了解です!」

 

「わかったよ〜!」

 

 医療支援オペレーター、ハイビスカス。ラヴァの実の姉ながらそのアーツの性質は全く異なり、回復を得意とする素直で心優しい少女だ。

 

 余談だがロドスで最も俺に死を覚悟させた人物の1人でもある。主に手作り料理で。

 

「了解!」

 

「ビーグル!武装は!?」

 

「訓練用盾がひしゃげてます!ナイフも取り落としちゃいました!補充が必要です!」

 

「わかった!一度物資を補給、戻り次第前線のカバーをお願い!」

 

「了解です!すぐ戻ります!」

 

「カクヨウ教官!行きます!」

 

 俺に向かってフェンが駆け出す。うーん、それは不正解だ。あまりに詰めるのが速すぎる。

 

 ラヴァの戦術詠唱はまだ継続時間を残しているが術耐性のないこいつが前線に上がればアーツを止める以外選択がない。ここはラヴァの継続時間限界まで遠距離組で牽制してビーグルの補給時間を1秒でも稼ぐのが正解だ。

 

「はああ!」

 

 突き、横薙ぎ、速度も打ち込みの威力も足りていないが戦闘経験や訓練期間を鑑みればまあ及第点でいいか。

 

「ここだ。ほれ」

 

「うわっ!?」

 

 馬鹿正直に正面から突撃する度胸は褒められたもんだが、攻撃まで馬鹿正直なのはいただけない。体重のこもった突きをひらりと躱すとフェンは重心を崩して転びかけたが、何とか自前の体幹で攻撃を継続する。

 

「くッ!…まだ!」

 

 続く横薙ぎ。お、スピードが上がった。だが攻撃が当たらない焦り故に無駄に力みすぎているが故の力の篭り方だ。視線と攻撃前の一呼吸でタイミングと狙いがバレバレ、半身を反らすだけで避けられる。

 

「分かりやす過ぎるぞ!それで当てたいなら5倍速で槍を振れ!」

 

「無茶をっ!言ってっ!くれますねっ!…うわぁ!」

 

 続く3撃、4撃も余裕を持って回避する。5撃目の刺突で伸び切った腕を掴み、体を捻って巻き込むかのように重心を崩して、背負い投げの要領で地面に叩きつけた。

 

「かはっ!?」

 

 受け身は取れる速度で投げたつもりだが、唐突過ぎたらしく受け身らしい受け身が取れておらずそのままダウンした。攻めは60点だが守りは30点だな。

 

「おっと」

 

 ひゅんと風を切る音が鳴る。クルースの狙撃だ。飛んできたクロスボウの矢を掴みへし折り投げ捨てる。精度は申し分無いがいかんせんタイミングが悪すぎる。動きを阻害してくる先鋒のフェンを倒して手が空いた状態で狙撃されてもどうとでも対応できる。

 

 ラヴァのアーツで起きた煙幕と、先鋒が距離を詰めるのが速すぎて狙撃のタイミングが噛み合わなかったのだろう。

 

「はあああああ!」

 

 ここで装備を整えたビーグルが盾を構えて突撃。

 

「戻るのが遅え!フェンもそうだが一対一では絶対に戦おうとするな!お前がやられたら残りの軽装備の後方支援組はなぶり殺されるだけだ!」

 

「うぐっ!?あっ!」

 

「盾で視界を塞ぐなら全方位を警戒しながらだ!間違った判断じゃないが一つのことに気を取られすぎるなよ!」

 

 足下に転がっていたフェンの槍を投げ、慌てて防御しようとしたその後ろに回り込んで木刀で横薙ぎ。盾を叩いたが、ビーグルは軽く吹き飛ばされる。

 

「そこまで。休憩だ。回復するまで反省点を振り返ろうか。てことでみんな一旦お疲れ。ハイビスカス、ラヴァは及第点だ。クルースはもっと狙撃の位置取りの把握と回数を増やすべきだな。ビーグルとフェンは白兵戦を見直そう」

 

「……また負けちゃいました……」

 

「惜しい……とは言えない結果ですね。私だけでも反省点がたくさん思い当たります」

 

「仕方ないよ〜カクヨウさん、前の合同訓練でやったけど予備隊A1からA6のみんなで攻撃しても勝てないんだから〜」

 

「今回は少人数だった分、前の訓練よりも動いて考えることも多かったはずです!次に活かしましょう!」

 

「なんたってカクヨウさんはあのLogos大先生と並ぶロドスの白兵戦最終兵器だからな。今の私たちじゃ勝てなくて当然だ」

 

 真面目で負けず嫌いなビーグルとフェンをクルースとハイビスカスがフォローしている。ラヴァのそれはフォローになってるのか?

 

「まあタイマンだと俺よりLogosの方がほんのちょっと強いけどな。うん、本当にちょっと。マジで僅差。それでも認めるのは癪だが。極めて癪だが」

 

「どっちかが死ぬまで」ってルールなら確かにあいつの方が強い。ただ「ルールなし」なら俺の方が強い。俺はほぼ不死身、だがあいつは1回しか死ねない。生き返れる、再生できる俺がゾンビ戦法を繰り返せばいつか体力の限界が来る。

 

「当然だな。Logos大先生は無敵だ」

 

「はあああ?ルールなしなら俺が勝つもんね!つまり実戦なら俺の方が強い!はい論破!」

 

「はあああ!?カクヨウさんのインチキアーツなんてダメに決まってるだろ!あんなものノーカウントだ!」

 

 アーツ全開の本気で戦えば一応俺が5回ぐらい殺される代わりにその間で1回ぐらいはLogosを殺せるチャンスが有りはする、というのが正直なところだ。当のLogosが仲間同士の本気の死合いを好まないのと、お互いの好奇心で1回やったときはケルシーセンセとドクターに本気でブチギレられたから2度とやらんが。

 

 ドクターが本気で怒る=2回目はない、これがロドスでの線引きだ。ここエリートオペレーターのテスト出るぞ。

 

 余談だが、あの野郎なんだかんだ理由つけて全部俺の責任にしやがったから復讐でアスカロンの下着をLogosの部屋に置いといたらアスカロンに殺されかけてたな。そのあと俺も殺されかけたが。いや実際殺されたが。10回ぐらい。

 

 あいつが最強だよ。

 

「うるせー!アーツも実力のうちだ!それに多数対多数なら絶対俺のチームが勝つし!」

 

「敵に張り付いてWに自分ごと爆破させるのはチームプレーじゃないだろ!ドクターにも苦い顔されてたの知ってるからな!」

 

「2人とも、子供みたいだね〜」

 

 クルースが笑顔で毒を吐いている。この顔と声でナチュラルに毒づいてくるから怖い。将来相方を尻に敷くタイプだ。

 

「俺にしかできないんだから俺の戦術だろ!できること全部やるのが戦闘だ!」

 

「でもカクヨウ教官、観戦する人がいる時にあんなことは2度とやらないでくださいね。また退院までハイビスカスの健康食漬けは嫌でしょう?」

 

「アッハイ。ニドトヤリマセン。ユルシテクダサイ」

 

「どういう意味ですか!?なんでカクヨウさんもそこで謝るんですかー!」

 

 静かに横槍を入れてきたフェンが目だけ笑ってない笑顔で威圧してくる。どこで習ったよその脅し。

 

 1ヶ月前に開かれたロドス最強コンビ決定戦にて、スカジと正気に戻ったスペクターのアビサルハンターズと俺とWのチームゴキブリ(生命力と触覚)がトーナメント初戦だったんだがまぁあの2人強いのなんの。

 

 戦術もアーツも腕力でぶっ潰してくる2人に苦肉の策としてWの持ってた爆弾全部俺が奪って特攻したら何とか勝てた(土俵から片足が出た程度、無傷)が、代わりに俺の臓物が至る所に飛び散った。観戦者で満員のシュミレーションルームにだ。

 

 お陰様で大会は中止、俺とWは大目玉。俺は医療部へ運び込まれた関係でケルシーセンセからのどぎついお説教で済んだが、Wはドクターに執務室に呼び出されて『おはなし』されたらしい。バベル時代のトラウマスイッチがオンになって女児みたいな泣き方してたWは思い出すにも不憫極まりない。俺のせいだが。

 

 そのまま流れで1ヶ月入院させられたわけだが、そこでの食事担当がハイビスカスだった。うん。あとは語らないでも良いだろう。言うとすれば、退院後にジェイの料理を食ったら本気で泣いた。冗談抜きで人生で食ったメシで一番美味かった。

 

「休憩はその辺で終わりだ。これから私とカクヨウの模擬戦闘を見せる」

 

 今回の実技訓練のもう1人の教官、元ライン生命警備課主任、長く美しい銀髪のヴィーヴル・サリアがいつも通りの鉄皮面でこちらに声を投げかけた。

 

「……げっ。サリアも混じるのかよ」

 

「当初は指揮だけの予定だったが、先ほどの訓練風景を見るあたり彼女たちの動きにはモデルが必要だろう。なに、加減は無用だ」

 

 なんて建前を言ってはいるが、サリアは既に格闘技用のスポーツウェアに着替え、テーピングを済ませた拳にオープンフィンガーグローブをはめて準備万端と言いたげに悪い笑みを浮かべている。

 

……こいつのパンチ、顎とかレバーとかみぞおちとかしか狙わないから痛いんだよな。熱中するとカルシウムまで纏いだすから素手や訓練用の木刀やナマクラじゃどう足掻いても受けられん。

 

 でも素手とか蹴りで金的狙わないだけブレイズの嬢ちゃんよりマシか。『相手が男でも女でもまずは股ぐら蹴り上げろ』って教えたの俺だけどな!

 

「ま、いいや。本気で動きたかったのは俺も同じだし。てことでそこの5人組!今からお互い殺すつもりでやるからどっちか死んだら後処理手伝ってな!」

 

「「「「「えっ」」」」」

 

ーーーーー

 

「があああっ!」

 

「甘い!」

 

 刃引きした鉄刀がサリアの右腕に弾かれ、こちらの踏み込みに合わせて加速された左の拳が顔を捉えようと迫る。

 

「読めてるぜ!」

 

 狙いだった右頬に手ぶらだった俺の手のひらをかぶせ、クッションにしてそのまま拳を受け止め、掴む。横殴りにされた歯列から鼻に向かって血臭が走る。関係ない。掴んでいた拳を思い切り引き込み、サリアの重心を崩す。

 

「(チャンスだ!)」

 

 弾かれ、狙いから大きく逸れていた右手の鉄刀を腕力で引き戻し、首筋を殴りつけるように力任せに振りかぶる。

 

「分かっていたさ……ふんっ!」

 

「がっ…」

 

 刀がその首に届く前にサリアの右拳が俺の顔面を捉え、予想外の打撃に3歩後ずさる。

 

「いっ…てぇ…倒れないように地面に手ぇつくだろ…普通!」

 

 重心が崩され前に倒れる勢いを利用しパンチを加速させたのだ。

 

「ほう?お前にとって私は普通の域という認識だったということか?心外だな」

 

「へっ、言うじゃねーか、よっ!」

 

 踏み込みからの大きな逆袈裟、これも最低限の体捌きで避けられる。ガラ空きの体を狙って拳が来るが…想定内!

 

「ペッ!」

 

「何っ!?」

 

 顔に2発食らった影響で砕けた歯を口に含み、目に向かって勢いよく吹きかけて不意をつく。後手から安全に攻撃しようと逆袈裟に対して最低限の距離で回避したのが失敗だった。こちらに向かって殴りかかる体勢を作り終えていたサリアはこの不意打ちを避けられない。

 

「風穴開けろオルァ!」

 

「……ぐ!」

 

 歯のかけらはサリアを怯ませ、人体の反射による瞬きが判断力と視界を一瞬奪う。その隙に土手っ腹に蹴りを叩き込み、2mほどの距離をサリアの体が浮遊する。

 

「(この感触と飛距離……威力を殺しながら仕切り直すためにわざとバックジャンプをしながら蹴りに当たったな?だが5m以内なら俺の間合い!)」

 

「つ・い・げ・き・だァ!」

 

「……ッ!ここだッ!」

 

 流派の歩法、縮地を使いながら刀をその脇腹に叩き込もうと振りかぶる。しかしサリアは俺の動きを捉え、カウンター気味に防御を捨てた全力の右ストレートを放つ。

 

 大盾を振り回しながら戦場を駆け回るそのヴィーヴル元来の筋力が本気で放つ拳は閃光のような勢いで俺との距離を縮め、再び顔面に突き刺さる。

 

「(狙いは顔、なら死なねぇ!)鼻っ柱くれてやるよ!代わりに俺のも食らっとけ!」

 

……しかし、このレベルの相手に最初からダメージを考慮して立ち回るなど無意味な考えは捨てている。殴りつけられる前に振りかぶりを終えていた鉄刀が、捨て身を決行したサリアのガラ空きの脇腹に叩きつけられた。

 

「がはっ!」

 

「(……脇腹!)……ぐぅッ!」

 

 お互い深いダメージを負い、間合いを取る為にバックステップで距離を取る。

 

「す、すごい戦いです!」

 

「これがロドス上位の実力者同士の戦い…!」

 

 外野がなんか言っているがよく聞こえない。俺の全神経は目の前の(サリア)に集中されていた。

 

「はぁ…はぁッ、やはりお前との戦闘は各別に楽しいなカクヨウ!」

 

 普段の怜悧な姿のサリアからは想像できないような凶悪な笑み。治療と防御によって皆を護るオペレーターの姿からはかけ離れた、暴力に喜ぶ一匹の竜。逆巻く闘気はダメージが体に刻まれてなお高まりを見せ、ビリビリと大気を震わすように迸る。

 

「ハァ…ああッ!…ハァ!…最高の時だ!」

 

「ふぅー……名残惜しいが次で決着にしよう。これだけ見せれば訓練生には充分だろう。私から行かせてもらう」

 

 構え直したサリアの右腕はアーツにより作り出された合成カルシウムを纏い、決着の一撃の技の名を何よりも雄弁に語っていた。

 

「ああ」

 

 対し、俺の構えは鉄刀を鞘に収め、腰を深く落とした状態で半身を捻って構えるいわゆる居合。お互いの手の内を晒しながら構える対面に思わず笑みが溢れる。

 

「……あっ!ダメですカクヨウさん!」

 

 何も聞こえない(静寂)中、そこから2人の体の力みが最高に達した。

 

「いくぞッ!」

 

「……来い!」

 

「訓練用の刀で全力出しちゃうと」

 

 サリアはその力みをそのままに足に全力を込めて弾丸の如き踏み込み。大きく振りかぶられた右腕としなる背中はその1発の破壊力を想像させるに余りある。

 

 俺は力みを全て捨て去り、ほんの一瞬の全身脱力を行う。そしてサリアの体が刀身の間合いに入った瞬間に爆発的な力を込め、腰を捻る勢いによって抜かれた刀は肩、肘、手首の鞭のようなしなりによって音速と同化し、人の目には捕らえられない横薙ぎとなって迎え撃つ。

 

「おおおおおお!」

 

「はあああああ!」

 

 究極の先手と究極の後手が放たれ、拳と刀がぶつかる。ならば、後はより強い方の勝ち。

 

 がきん、と硬質な物体同士がぶつかる音が響き、そして

 

「壊れちゃいますよー!」

 

……ばきん。

 

「「あ」」

 

 触れ合ってから0.1秒も持たず砕け、全く勢いの衰えなかったサリアのカルシウムパンチが俺の顔面に突き刺さった。

 

 (非常に硬い物質が高速で人体にぶつかる音)

 

 そして不幸はこれだけに留まらない。俺の体が宙に浮いた瞬間、シュミレーションルームのオートドアが開き、遊ぶ約束をしていたイフリータが元気よく入ってくる。

 

「おーいカクヨウ!オレサマが来てやったぞ!あそぼ」

「ちょっとイフリータ!訓練中の部屋で走ったら危な」

「同意。不慮の事故があれば我々が悲しむことになり」

 

 3人の頭上僅か数センチの高さを俺の体が凄まじい速度で飛んでゆきーー

 

 (壊滅的な破壊音)

 

 (さまざまな人物の猟奇的な悲鳴)

 

ーーー

 

「なーサリア、予備隊の皆に怖がられたと思う?」

 

「恐らくな。……本当にすまなかった」

 

 傷心のまま訓練が終わり各自待機を言い渡した後、治療室でサリアから治療を受けながら訓練を振り返る。

 

 ちなみに何故か膝枕をされているが、サリアに治療や接骨を受ける際は必ずこうしないと不機嫌になるから渋々やっている。でも正直サリア全身鍛えすぎて太ももが硬ーー

 

「……何か失礼なことを考えていないか?」

 

「ソンナコトナイヨー、サリアニヒザマクラシテモラエテウレシイナー」

 

「……なら良い」

 

 サリアの全身全霊で放たれた攻撃は文字通り手加減なしの一撃であり、いつもの刀を振るっている感覚でいた俺は全く対応できずにそれを受けることになった。

 

 それだけなら全然問題はないが、鉄の塊を拳だけで軽く破壊するサリアのカルシウムパンチを全力で受けた俺の体は宙を舞い、最悪なことに壁が比較的薄い出入り口のドア付近に激突してぶち破り、その後通路の壁を2枚貫通してやっと体が止まった。巻き込まれて怪我をした人が出なかったことが不幸中の幸いだ。

 

 当然俺は気絶、それから医療部隊にその場で緊急処置を施されてなんとか起き上がってシミュレーションルームに戻るとてんやわんやの大騒ぎ。

 

 凄まじく混乱して事故処理係の人に上手く説明できていないフェン、青ざめた顔のビーグル、俺のとこに走ってきて治療アーツをかけてくれているハイビスカス、『なんで死んでないの〜?』と不思議そうに質問するクルース、目を輝かせているラヴァ。

 

 最悪のタイミングで部屋に入ってきて大泣きしているイフリータ、に土下座しながら謝るサリア、に向かってこれ以上ない侮蔑を隠さないサイレンス、の隣で無表情のままあたふたしているフィリオプシス。

 

 能面のような顔でチェーンソーと戦術兵器を起動させ、光を失った目でサリアを見つめるブレイズとロスモンティスの2人を必死に宥めるドクターとアーミヤ。

 

 嬉々として俺の歯や血液を採取するアとワルファリン。

 

 この世の終わりだ。

 

「いや〜あんな距離飛んだの久しぶりだ。持ってた刀、訓練用っての完全に忘れてたな」

 

「……すまない」

 

 いつも実戦で使っているアーツユニット兼武器の方なら折れなかった、という事実が訓練中というシュチュエーションを更に忘れさせる原因となった。

 

「特に気にしてねーよ。イフリータも何とか泣き疲れて眠ってくれたし、ブレイズの嬢ちゃんとロスモンティスもなんとか落ち着いたからな」

 

「しかし……」

 

「不慮の事故ってドクターも納得してくれただろ?逆に良かったよお前が相手で。おんなじ状況で相手がスカジとかだったら問答無用で説教からの始末書、流れるように減俸からの数ヶ月運動禁止だったぜ」

 

「……それは常日頃から『勝手に壊れた』や『壊れる方が悪い』、挙げ句の果てには『エンジニア部に仕事を与えてるだけだ』など反省の気が全く感じられないような物言いばかりするお前たちが問題じゃないか?」

 

「そうとも言う」

 

 でも修理代を給料から天引きするのはどうかと思うぜアーミヤちゃん。先々月の給料とか5桁だったし。

 

 ちゃっかり修理に当たったエンジニア部の人件費も引いてるからタチが悪い。まあ壊す俺が悪いんだが。

 

「そんなことより怪我どんな感じ?割と深刻?」

 

「脊椎の損傷が著しい。歩くこと以前に喋れることが不思議なくらいだ。アーツによる身体機能の維持か?」

 

「あー、まあそんなところだ。ぶっちゃけアーツで再生できるんだけど医療部に止められてて使えないんだなこれが」

 

「お前のプロフィールには目を通したが当然だろう。治療で完治できる怪我のために鉱石病を深刻化させるなど本末転倒だ」

 

「んで、治療ってどのくらい時間かかりそう?」

 

「背骨から首にかけての全身の支柱になる骨だから出来るだけ丁寧に処置したい。2時間ほどだ」

 

「逆に言えば2時間で終わるのか、便利だなぁお前のアーツ。カルシウム操作だっけ?」

 

「厳密に言えばカルシウム元素を含有する物質を粒子レベルでの再構築している。これは私の手足のように操作することができるが、アーツという範囲である以上筋肉などの身体的な構造物を経由してエネルギーを操作するのではなく意思によってそれを可能としている。そもそも分子構造学におけるカルシウムを構成する物質というものはーー」

 

「あー…(やっべ何言ってるか全然わかんねぇ)」

 

「しかしながら私のアーツはこれら分子動力学的な観測を必要とせずにエネルギーの総量・密度の変換を可能とし、ーー従って、ーーであるからに、ーー」

 

「(……これあと2時間聞かされるの?)」

 

 体感時間はもっと長かった。

 

ーーー

 

「ーー以上が私のアーツ、お前たちが硬質化と呼ぶものの実態だ」

 

「あー」

 

「ふむ。では今の私の解説を聞いての感想や疑問について、もしくは改良点をレポートにまとめて提出してもらおうか。期限は…そうだな、明後日にしようか」

 

「あー……え!?おいちょっと待て!?」

 

「ふふ、冗談だ」

 

「お前なぁ……」

 

 こいつに関しては訓練中に動きの悪かったオペレーターにマジでそれやらせてるから冗談に聞こえない。

 

「ともあれ、私のアーツがあらゆるアプローチと実戦・訓練問わない研鑽の中で練り上げられたものあることは事実だ」

 

「まあ、大体察せる」

 

「……それでな、カクヨウ。その、またーー」

 

「すまない、カクヨウはこちらにいるだろうか」

 

 サリアが何かを言いかけたと同じタイミングで部屋に俺を呼ぶ声が聞こえた。返答の間もなく声の主はドアをあけ、資料に目を通しながら部屋に入ってくる。

 

「はい?ケルシーセンセ?……って、ノックぐらいしましょうよ……」

 

「…!?…急を要する案件だ。すまないが1秒が惜しい」

 

 一瞬サリアが俺に膝枕しているのを見て目を見開いて二度見したが、突っ込む時間が惜しいとばかりに話を続けるケルシーセンセ。……急ぎか。

 

 背骨を主軸に全身にアーツをかけ、損傷した頸部を再生させる。ごきごき、ばきばきとおぞましい音を立てて軽い痛みと共に感覚が戻る。

 

 それを聞いた2人はとてつもなく嫌そうな顔だ。しょうがねーでしょ。

 

「ふぅー。で、なんすかセンセ」

 

「君のアーツは回復目的で行使することを極力禁止にしているはずだが。身体にどのような変化が起こっているのかを十全に把握できていない以上は我々医療部門の手の施しようがないような欠損以外での自己再生は控えるように通達したはずだ。今月で18回目の注意だ。聞いていないでは済むような回数ではないが」

 

「1秒が惜しいくらい緊急なんでしょ?お説教は今度聞きますよ」

 

 あれ?もしかしてセンセまだ俺らがやらかしたの報告されてない……?

 

「……此度は提示する案件の緊急性を持って不問とするが、今一度不要な場面で回復目的のアーツを行使した場合は相応の罰を与える。心しておくように」

 

「……」

 

 珍しくサリアが悲しそうな顔だ。そういうの一番効くからやめてくれ。でもラッキーだ、今回は任務でお説教を有耶無耶にできる!

 

「10分後より緊急で感染生物に襲われているサルゴン地区の集落の救出作業を開始する。直近の干魃により食料と水が尽き掛けており、トランスポーターを通じてロドスへSOSが出されていた。

 

 当該地区は政府によって迫害された感染者が身を寄せ合って居住する小さな村が形成されている。君には感染生物の掃討を担当する部隊指揮官に就くことを命じる。サリア、君には保護した住民たちの警護及び指定地までの護送を頼む」

 

「そして」

 

「あえて言葉にしておこう、カクヨウ。君がロドスのために自身にアーツを使い、身体に何かしらの消えない後遺症が残ったのであれば私は私自身の体、君が永遠に失った部位と同じ部位を切除しよう。右目であれば私の右目を。左腕であるなら私の左腕を。感傷でも恩義でもなく、過去の君を知りそれでも尚君に失い続けることを強要した私という存在の責任として。

 

 先程不注意で大怪我をした件も含めて、君が安らかに眠る時を迎えるまでその全ての痛みと苦しみは私の責任へと帰結する。……話は以上だ。出撃に備えるように」

 

 そう言って退室するケルシーセンセの表情はいつも通りの鉄仮面。だが、怒っている。それ以上に悲しんでいる。

 

 呪詛。悪辣な鎖。

 

「……責任っていうのはよ、相手が納得する形で取るもんだぜケルシーセンセ。てめーの体をお大事にってか?死人に向かってよく言うぜ、誰より俺のこと知ってるくせによ」

 

「カクヨウ、前からの疑問なんだが……」

 

「ん?」

 

「ケルシーはなぜ君の治療についてあそこまで執着するんだ?」

 

「……医者の矜持、ってやつかねぇ」

 

 人としての尊重。誰もが平等であるロドスの必要条件こそ俺を最も苦しめる(救う)方法。

 

 出撃準備のため俺とサリアも部屋を後にする。誰のものか見分けのつかない罪悪感だけが部屋に残った。

 

ーーー

 

「ひぐっ、ぐすっ」

 

 泣いてばかりの幼い頃の記憶。

 

「お前にはこんなものもったいないよ!俺たちが使ってやるから貸せ!」

 

「やめて!やめてよ!」

 

 孤独だった。

 

 理解者は1人として存在せず、友人と呼べるどころ者か同級生からは無視や爪弾きにされる毎日。

 

「泣くな!そんな行動に価値はない!」

 

「解決のための行動をしろ」

 

「自分の弱さの責任は自分で取れ」

 

「……はい」

 

 親ですらも例外ではなく、私の居場所は家にすらなかった。元からそんなものはどこにもなかったのかもしれない。

 

 虐められて泣けば『お前が弱い』、どうにかして解決しようとしても『当たり前だ』と褒められることはない。解決の方法を教えてくれることなど一切なかった。その弱さを鍛えてくれることなど、一度たりとも。

 

 そんなに私が憎かったのだろうか。母親の命と引き換えに生まれてきた私を許せなかったのだろうか。

 

「うぅ……」

 

 いつも通りの日常。当たり前の日々。怒られないように、これ以上虐められないように路地裏で声を殺してすすり泣く。

 

 辛かった。悲しかった。虐められているという事実よりも、悔しいという思いよりも、誰も見向きもしてくれないことが。

 

「大丈夫か」

 

 そんな私の日常(あたりまえ)から、1人の男が救い出してくれた。

 

「……誰?」

 

「あー…警戒するよな。怪しい者じゃねぇよ。仕事でクルビア(ここ)に来たんだが、道に迷ってな。歩き回ってどうにか戻ろうとしたらお嬢ちゃんが泣いてるの見えたんだ」

 

「(嘘は…ついてない?)」

 

「ホラこれ社員証」

 

「バベル…?」

 

「聞いたことねぇか?…だよな。じゃあこのマークとおんなじロゴが入った服とか帽子とか被った人見なかったか?」

 

「…ううん、見てない」

 

「だよなー。うーん、あいつら急にいなくなりやがって」

 

 不思議な人だと思った。言葉に表せないのだが、纏う雰囲気というかオーラ。私と目線を合わせるために片膝をついているものの、普通に立てば2m近い高身長を誇るであろう恵体だが、発されるそれは陽炎のように全身の輪郭を歪め、より巨大で強大な別の何かに見えていた。

 

「ってか質問ばっかりでごめんよ、どうしてこんなとこで1人で泣いてたんだ?友達とケンカでもしたか?」

 

「っ」

 

「あー、言いたくないなら言わないでいいぞ?」

 

「…いい。私が悪いから」

 

「…そりゃまたどうして?」

 

「私が弱いから虐められるの。私が…何もできないから」

 

「…嬢ちゃん、お父さんかお母さんには虐められてることは言ったことあるか?」

 

「……」

 

 無言で頷く。詳しくは言わなかったが、悲しそうな表情から察したのだろう。

 

「待ってな」

 

 そう言うと男はすぐ近くの大通りへと走っていき、手に何かを持って再び路地裏に戻ってきた。

 

「一緒に食おうぜ。ほら、こっち来な」

 

 確かラテラーノのジェラート?だったか。大通りの出店で買ってきたものだろう。

 

「なんにせよ気分が悪いときは美味いもの食うに限る。甘いものは考えるためのエネルギーにもなるしな」

 

「……」

 

 初めて人から受ける善意の施し。親としての義務でも、教師としての業務上の責任などではなく、肩書きのない者から肩書きのない者への純粋な尊重。

 

 その日初めて私は、嬉しさを胸に路地裏を飛び出した。

 

ーーー

 

「まじか…小せぇのに苦労したなぁ」

 

 ジェラートを食べながら、近くの公園のベンチに座って心にあったものを全て吐き出していた。

 

「お父さんは私を許せないんだと思う…私を産んでお母さんが死んじゃったから」

 

「自分の子供に向き合うための心の整理がついていないのか、それともまだ奥さんの死を受け入れられてないのか。……子は親を選べない、ねぇ」

 

 どこか心当たりがあるような表情でうーんと頭をひねる男。

 

 ただ、それだけで嬉しかった。私の言葉を真面目に聴き、私のことを真面目に考えてくれる人がいる。それだけで心は満たされた。

 

「なあ、お嬢ちゃんはどうしたいんだ?」

 

「えっ」

 

「虐めてくるやつをぶん殴ってやりたいのか?それとも父親の言う通りに強くなりたいのか?」

 

「それは……」

 

 私はどうしたい。

 

 衝撃だった。物心がついているとはいえ当時の私は女児と呼んで差し支えない年齢だった。親の指示に従っていればいいと考えるような一般的で、これといって特筆するところのないどこにでもいる少女だ。

 

「わからない」

 

「そう、そこだ」

 

「そこ…?」

 

「お嬢ちゃん、強くなるってどんな方法があると思う?」

 

「えっと…体を鍛える、とか?」

 

「そうだ。それも強さの1つだ。だけど他にもいっぱいあるぞ?勉強して偉い人になる、友達をたくさん作って味方を増やす、それこそクルビアならお金持ちになるとかだな」

 

「……」

 

「要するに強くなる方法はいくらでもある。でも強くなる目的ってのは必ず持ってなくちゃならない。目的のない強い力は利用されるか使い方を間違えるかのどっちかだ。…それを教えるのが親の役目だと思うんだがな」

 

 私にとってのなりたい強さ、在りたいカタチ。それを考えるうちにふと気になった言葉が口から溢れる。

 

「……貴方にとって強さは、どんなものなの?」

 

「俺?俺にとって強さはーー」

 

 この人は強い。間違いなく。出立ちや気迫だけじゃなく、私に投げかけた言葉は信念を持つ人の言葉だ。続く言葉に何か私なりに見つけられるものがあるかも知れない、そう思っていたが、

 

「こんなところにいたのか」

 

「あっ…お父さん」

 

「ん?ああ、噂をすればなんとやら」

 

「門限を破るとは何事だ、また反省のために部屋に閉じ込められたいのか?」

 

「…ごめんなさい」

 

「おいおい、まだ昼の4時半だぜ?遊びたい盛りの門限にしちゃ早すぎるんじゃねーの?」

 

「君は誰だ?すまないが人の家庭に首を突っ込まないでくれないか」

 

「ハッ、てめぇの事情を家庭の事情にすり替えんな。そんなもん興味ねぇよ、虐待されてるこの嬢ちゃんを心配してるだけだ」

 

「初対面にしては随分と礼儀のなっていない男だ。お里が知れる」

 

「育ちがいいもんでよ、どんな理由があるとしても子供を虐待するような輩に敬意は払うなって教育されてんだよ」

 

「虐待ではない。躾だ」

 

「躾?この意味のない躾でどこがどう成長するってんだ?言ってみろよ」

 

「……チッ、極東の野蛮人の分際で…この子が食べたジェラートの料金は払わせて貰う。話はそれで終わりだ」

 

「受け取らねぇよ。俺に払うぐらいなら明日にでももう一度嬢ちゃんに同じもの買ってやれ、親として」

 

「逐一私の面子を傷つけないと気が済まないのか?つくづく不愉快だな君は」

 

「気が合うじゃねーか、同意見だぜ。いちいち俺がイラつく言動取りやがって」

 

 一触即発の空気の中、いかにもといった傭兵然とした男が1人こちらへ駆け寄ってきた。

 

「隊長!やっと見つけましたよ!……こちらの方は?」

 

「気にしないでくれたまえ。娘の面倒を見てもらっていただけだ。帰るぞサリア」

 

「…はい」

 

 ……お礼、まだ言えてなかったな。

 

「嬢ちゃん」

 

 思わず足を止める。振り向くと彼は怒りと悲しみを混ぜた表情で私と目が合う。

 

「自分より強い人に立ち向かうってのも強さの1つだぜ」

 

 瞳は言葉以上に訴えていた。戦え、と。

 

「何をしているサリア。これ以上失望させるな」

 

「っ……」

 

 公園の外から感情も抱いていない目を私に向ける父親の言葉を聞き、まだ喋っていたい気持ちを抑えて公園を後にする。

 

 やりたいことはわからない。でも、やるべきことは見つかった。

 

ーーー

 

「どういうつもりだ」

 

「……」

 

「あんな公衆の面前で…私に恥をかかせて楽しんでいたのか?」

 

「……」

 

「何か答えたらどうだ」

 

 家に帰った私は反省という名目で詰問されていた。私とカクヨウへの罵倒と、人格を否定するような心無い言葉に必死に拳を握りしめて耐える。

 

 しかしある一言が、私の琴線に触れた。

 

「あの薄汚い感染者の男に何を唆された?」

 

「薄汚い…感染者?」

 

「気づかなかったのか?首筋に鉱石のクラスターがあっただろう。本当に穢らわしい、小国の野蛮人というだけで不快極まりないのにその上鉱石病など時代が時代であれば殺されても文句は言えん」

 

 何を言っているのか理解できなかった。彼が鉱石病であることなどすぐに見て分かった。

 

 地域にもよるがクルビアは感染者への偏見がほとんど存在しない。発達した医療の普及により、感染する方法はかなり限られているということが実証されているからだ。

 

「なんで、感染者は汚いの?」

 

「決まっているだろう、存在するだけで周囲を危険に晒すからだ」

 

「人から人への感染なんて体表のクラスターに齧り付きでもしない限り感染しない!今の侮辱を取り消して!」

 

「……何?」

 

 初めての父への反抗。面食らったかのような表情で私を見つめる父は絶対服従の相手から、私の恩人を侮辱した許せない存在へと変動した。

 

「父親に向かってなんだその口の聞き方は!?」

 

「父親らしいことなんてしたことないくせに、こんな時だけ父親面しないでよ!!」

 

「お前を今まで生かしてやったのは私だ!私の言うことを素直に聞いていればいいんだ!」

 

「誰にも相手にされないぐらいなら、生まれてこない方が良かった!」

 

「…貴様!」

 

「っ!」

 

 本気の平手打ち。考えてみれば、直接父親が私を殴ったのは後にも先にもこれだけだった。

 

 暴力とはこの程度か。誰にも相手にされない痛みに比べれば、こんなものは痛みのうちに入らない。

 

「私を叩いても解決しない!解決したいなら言葉を取り消して!」

 

「〜ッ!」

 

 その程度で今の私は折れない。鉱石病の偏見に踊らされ、物事の道理を弁えず無知のまま他人を侮蔑する者など怖いものか。

 

「来い!」

 

 しかしそれでも父は顔を赤くするだけで、私の腕を掴んで部屋に押し込み、捨て台詞のようなものを吐くだけだった。

 

「頭を冷やせ!謝罪するまで一切外には出さんぞ!」

 

「私は冷静だ!謝るのは貴方だ!」

 

 押し問答もいいところ、結局部屋に閉じ込められた私は決心する。

 

『自分より強い人に立ち向かうってのも強さの1つだぜ』

 

「……やってやる」

 

 手には自分のおもちゃを直すための鉄製のレンチ、そして目線の先には逃げ出せないよう鍵式で設計された窓ガラス。鍵は父が保管している。

 

 私の手でこの最悪な日常をぶち壊してやる。大きな音を立てて壊れたのは、窓ガラスと私を縛っていた窮屈な世界。

 

 勢いのまま割れた窓から飛び出した私は、背後から怒鳴りつける声を無視して日が落ち始めた街へ走っていった。

 

ーーー

 

「はぁ…はぁ…っ!」

 

 30分ほど走っただろうか。ヴィーヴルの肉体が可能にした逃走は、あまりの動揺に追いかけることが遅れた父を撒くには十分な距離を稼いでくれた。

 

「あの人は…どこだろう」

 

 先ほどの近所の公園には既に姿はなかった。どこへ向かったかの確証はなく、無鉄砲に走っただけでは探しきれる道理もない。

 

 それでも、あの人を見つけたかった。立ち向かったよって、強くなったよって言いたい。頑張ったなって褒めてほしい。私を肯定してほしい。

 

「うあっ……ごめんなさい」

 

「あ?……ガキか?」

 

 よそ見をしながら考えていたからか、通行人にぶつかったようだ。相手はガタイの良い眉間に皺のよったループスの壮年の男で、値踏みするような視線を私に向ける。

 

「もう日も暮れるってのに子供が1人でほっつき歩いてどうしたんだ?親とはぐれたのか?」

 

「えっと……はい。2mぐらいの身長の、極東人の男性を見ませんでしたか?」

 

「んん?お前ヴィーヴルだろ?それにクルビアで極東人だぁ?」

 

「うぅ……」

 

 彼と違って目線の高さを合わせることはなく、上から見下ろすように私の顔を睨み付ける男に私は萎縮し切っていた。

 

「……ああ、そういえば身長の高い男なら見かけたぜ。案内してやるからついてきな」

 

「いえ……場所だけ言ってもらえれば…」

 

 怪しい。分かってはいるがきっぱりと断ることができない。もじもじと小さな声で断りの言葉を言うが、男は私の頭を掴んで無理矢理目を合わせる。

 

「ああ?人の親切は素直に受け取るもんだぜ?それにこのあたりでこんな時間に子供を1人であるかせるような奴にはガツンと言ってやらねぇと…な?」

 

「ひぅ……」

 

「ほら、あっちの路地裏だ、来な」

 

「あっ、やめて!誰か助け」

 

「声を出すな!大人しく来い!」

 

ーーー

 

「あれは……」

 

「カクヨウ隊長?何か気になることでも?」

 

「ああ、バベルに通知しろ、目標を見つけた。性懲りも無く誘拐してやがる。スリンカー、待機中のScoutに伝言だ。発信機を起動させておくから追ってきてくれと伝えてくれ」

 

「了解しました、迅速に動きます!」

 

「ああ、少女1人の命がかかっている。元より失敗は許されない。テレジアとドクターに弓引いた馬鹿どもを地獄で後悔させるぞ」

 

ーーー

 

「んん!んんー!」

 

 男に路地裏へと連れ込まれた私は、そこで待ち構えていたであろう男の仲間に目隠しとガムテープが何回転も口にまかれた状態どこかの屋内へと運び込まれた。後ろ手で拘束された手と足首同士を錠で繋がれた下半身は立ち上がることすらできず、もがけばもがくほどに焦りが募っていく。

 

 既に目隠しは取られているが、窓はブラインドが降り切っていて外の様子を伺うことはできない。

 

「ヴィーヴルのガキとは運が良い。身体能力と再生能力はテラ随一、奴隷にすれば物好きどもが大枚叩いて買い付ける。言わずもがな傭兵としての価値も値千金だ」

 

「俺らやっぱ持ってますねボス!バベルの情報をクルビアに明け渡すかわりに国内に拠点を置くなんて普通じゃ考えつかないですよ!」

 

「お前は『絶対殺される!』ってビビりまくってただろうが。しかしまあ、ご覧の通り全ては上手くいった。あの鉱石病の悪魔どもの顔を伺って叩き値で武器を毟られる貧乏生活とはもうおさらばだ。これからは人身売買でデケェ金追っかけるぞ!」

 

「うおおおお!」

 

「テラ1の巨大組織になってやろう!」

 

 聞こえてくる話の醜悪さに、ループスの男を涙目で睨み付けるが男は余裕綽々といった態度で近づき、髪を掴んで頭を持ち上げた。

 

「フゥー、フゥー!」

 

「てことでよ、お前には俺らの組織の礎第一号になってもらうぜ。お前ほど顔のいいガキなら変態どもが良い値段を出してくれる。上質なメスのガキを売れば太い客も勝手につくからよ」

 

「ンー!」

 

「だが惜しいなぁ、こんなに顔が良いなら俺らで一度マワしとくか。どうせ買われた後は人間を相手にすることの方が少ないだろうよ。初めてぐらいは人間がいいだろう?」

 

「…!?んんん!んんんんんん!」

 

「はっはっはっ!そんなに嬉しいかぁオイ!?ほら暴れんな!」

 

 ささやかな抵抗も虚しく、衣服が下衆に剥ぎ取られていく。味わったことのない純粋な悪意から逃れようと体を捩ってもささやかな抵抗にしかならない。

 

「いてっ」

 

 そのとき、頭を振った際に男の手のひらを私の角が深く切り付けた。

 

「……チッ!てめぇ!」

 

「ングっ!?」

 

 すると男は激昂し、私の腹や顔を所構わず殴りつける。

 

「テメェはこれから奴隷だっつってんだろうが!言葉もわかんねぇのか!?分かるまで教育してやるよ!」

 

「んん!んぐっ、んんん!」

 

 初めて受ける無抵抗のままの暴力。

 

「ハァ、ハァ…おい、斧と熱した鉄を持ってこい」

 

「ボ、ボス、何をされるんで…?」

 

「ああ?わからねぇか?この邪魔臭え角と無駄に尖った尻尾を切り落とすんだよ!傷口は焼いて塞げば死なねぇだろ」

 

「で、でもボス、あんまり傷つけちまうと商品としての価値が下がっちまいますぜ…?それに10歳もいかねぇガキにそこまでする必要は…」

 

「じゃあ代わりにテメェのそのピコピコ動く目障りなネコ耳を切り落としてやろうか?痛い目に遭いたくなきゃ黙ってとっとと用意しねぇか!」

 

「へ、ヘイ、仰せのままにしますから勘弁して下さい…」

 

「チッ、最初からそうすりゃ良いんだよ…オラっガキ!いつまで寝てんだ!」

 

「ぐふっ!?、んぐえっ」

 

 ぐったりしたまま寝転がる私のみぞおちを男が尖った靴の先で蹴り上げ、無理矢理意識を覚醒させる。競り上がる血臭と嘔吐感が口に到達するが、ガムテープで塞がれた口からは吐き出すことができず、鼻から逆流した血液と胃液で溺れるような感覚に陥る。

 

「テメェの角と尻尾を今からばいばいするぞ。動くなよ?頭に当たったら死んじまうからな」

 

 肩で呼吸するのが精一杯な私は抵抗する気力もなく、男の手に持った斧が振りかぶられていく様子を絶望しながら眺めていた。

 

「そ〜ら〜よっ!」

 

 勢いよく振り下ろされる斧。目を閉じて彼の姿を目に浮かべながら心の中で叫ぶ。

 

「(助けて…)」

 

 その一撃は私に振り下ろされる、事はなかった。

 

「ぎぃやああああああ!?」

 

 つんざくような悲鳴に目を恐る恐る開けてみると、ループスの男は片腕を抑えてのたうち回っている。そして私の前には、見覚えのあるシルエット。

 

「ごめんな、遅くなった。もう大丈夫だ」

 

「(あ……)」

 

 この時の私は知る由もないが、かつて極東の大都市鶴洋(カクヨウ)を一夜で滅ぼした伝説の悪魔が微笑みながら肩越しに私を見つめていた。

 

ーーー

 

「テメェ誰だ!?どこから入ってきやがった!?」

 

「刀だと!?ボスの腕を斬り落としたのか!?」

 

 のたうち回るループスの男を眺めていた配下の1人が、はっと息を吹き返したように行動を始めるとそれにつられた他の部下たちも急に動きを取り戻した。

 

「よくもやりやがったな!死ねーーがはっ!?」

 

 そのうちの1人がいかにもなセリフを吐きながら拳銃を構えるが、横一閃に腹を裂かれ、血飛沫とともに床に倒れ伏して動かなくなった。

 

「べらべらうるせぇな、黙って撃て」

 

「貴様ぁ!」

 

 続く1人がスレッジハンマーを振りかざしながらこちらは突撃してくるが、重心が酷くぶれ、武器の重さによって逆に振り回されていることがわかる。

 

 大ぶりな一撃を屈んで躱して脚を払い、倒れて武器を取り落とした男の顔に蹴りを入れると何かが潰れたような音を鳴らしながら壁に打ちつけられ、またも動かなくなった。

 

「……」

 

「お前ら構えろ!一斉に撃て!ガキはどうなっても良い!」

 

 脂汗と血管を額に滲ませながら唾を飛ばしながらループスの男が叫ぶ。その指示を聞いた瞬間にはほとんどの手下の表情から焦りが消え、落ち着きを取り戻した。

 

「ハッ!」

「了解!」

 

 数人が一斉に銃口をこちらに向け、躊躇うことなく引き金に指をかける。目先の利益でバベルを売った凡愚が頭の組織にしては教育が行き届いている。

 

「意外に冷静じゃないか。でもよ」

 

「撃てぇぇぇ!」

 

 号令とともに弾が撃たれる筈だった。

 

「こっちが一枚上手だ」

 

 凄まじい音を立てて破壊音が響く。ガラスが散乱して部屋を埋め尽くしながら一気に部屋に月明かりが差し込むその光景は不謹慎ながら美を感じるほどのものだった。

 

「何が……!?」

 

 ループスの男の顔が一気に青ざめた。当然だ、先ほどまで圧倒的に数の有利を誇っていたはずの自分の部下たちが、脳漿や内臓をぶちまけながら肉の塊になっているのだから。

 

「ナイスタイミングだ」

 

 配置を終えた別動隊からの援護射撃がこの地獄絵図を作り出したものの正体だ。銃弾の雨で千切れたブラインドから見える、月明かりに照らされながら隣のビルの屋上に並ぶバベルきっての狙撃手とその部隊たちの姿は壮観だ。

 

 月明かりで真っ暗ではないとはいえ、遮光し切った部屋の状況を盗聴レコーダーのみで把握し1発も違えず対象を鎮圧したその腕には感心を覚えるほかない。

 

「さて、と。敢えてこいつは撃たなかったな?お前のそういうとこ大好きだぜScout」

 

「ひぃぃい!」

 

 裏切り者にはバベルが貴様を殺しにきたぞと知らせてやる、俺の流儀を尊重してくれた訳だ。

 

 ループスは腰が抜けたようで、部下たちの死体のなかを這いずり回ってなんとか逃げようとする様は無様という表現がぴったりだ。

 

「お、お前はなんなんだ!?誰の差し金だ!?そいつが払った2倍払う!頼む!見逃してくれ!」

 

「……」

 

 お決まりの命乞い。ならばこちらもいつものお決まりの言葉を渡してやろう。

 

「テレジアから伝言だ。『残念よ』だとさ」

 

「な、あ…」

 

 全てを察したであろう男は口を開いたまま動かなくなり、パクパクと何かを言いたげだが生憎と遺言を聞いてやる気分じゃない。……その時、

 

「ク、ソ……クソクソクソクソがああああ!」

 

 バン!

 

「あ?」

 

「ん、!んん!んんん!!」  

 

 男が隠し持っていた銃をぶっ放した。腹を見れば血が滲んでいる。火事場の馬鹿力ってやつか?

 

「……は、ははははは!どうだ!俺を舐めるからこうなるんだ!」

 

「おう、舐めてたわ。正直油断してたぜ」

 

 意識が朦朧としている筈の嬢ちゃんが俺の負傷を見て自分の体のダメージも顧みずに叫ぶが、限界が近いのかガムテープの端からは血が流れ始めている。

 

「大丈夫だ嬢ちゃん。これぐらいで俺は死なん。もう終わるから待っててくれ」

 

「な、なぜ死なない!」

 

「さあな。なんでだと思う?」

 

 まるでダメージなしと言わんばかりに歩を進める。

 

「クソ、来るな!来るな!」

 

 男が拳銃を乱射する。2発目は肩、3発目は右大腿、4発目は外れる。

 

「ば、化け物!」

 

「そう、正解。化け物だから死なねぇよ」

 

 5発目が頬を掠め、6発目は外れ、7発目は目に当たる。ぐちゃりと音を立てて肉片が飛び散るが、アーツによる再生は瞬く間に穴を塞ぎ視覚を戻す。8発目はーーガチャリ、ガチャリと引き金のみが作動する音だけ鳴り、弾切れであることを知らせた。

 

「あ、ああ……」

 

 策を使い果たしてなお不死の化け物が近づいてくることに男は絶望を浮かべ、銃を持っていた手はだらんと脱力された。

 

「来世はもっと利口に生まれて来い」

 

 月明かりに照らされた鈍色の刀身が、男の首を一太刀で断った。

 

ーーー

 

「う……」

 

「あ、嬢ちゃん起きたか?」

 

「ここは……いっ…」

 

「病院だ。無理に起き上がらねぇ方がいい、内臓けっこう行ってるらしいぞ」

 

「ありがとう…」

 

「良いんだよお礼なんか……おっと」

 

 体に鞭を打って起き上がり彼にしがみつくが、彼は振り払うことなく優しく抱き止めてくれた。

 

「怖かったな。ごめんな、遅れて」

 

「うう……!」

 

 安堵からか、涙が止まらない。今日は人生ではじめてのことが多すぎた。

 

「落ち着いたか?」

 

「…うん」

 

「あー、でよ、嬢ちゃん。ちょっとお願いがあるんだけど」

 

「?」

 

「今日見たこと、警察に言わないでもらえるか?ちょっとほら、……アレだから」

 

「わかった。言わない」

 

「おう。助かる……にしても、嬢ちゃん強いな」

 

「…私が?強い?」

 

「そりゃそうさ。誘拐されて、殴られて、挙句には目の前でドンパチしたの見ても泣きはしても心が折れてない。俺が同じぐらいの歳だったらとっくに折れるだろうよ」

 

「私が…強い…」

 

「あの親父さんの教育の賜物か?まあ悪影響だけじゃなかったと喜ぶべきだな。…でよ、なんであんなとこに居たんだ?嬢ちゃんの家から結構あったよな?」

 

「あっ……」

 

 思い出す。彼に言いたかったこと、彼に褒めて欲しかったこと。

 

「私、立ち向かったよ」

 

「親父さんにか?」

 

「うん。…家から逃げ出したの」

 

「そうか…なら煽った俺の責任だ」

 

 彼が私に向かって深く頭を下げる。私は大慌てでそれをやめさせようとした。

 

「謝らないで!悪いのは誘拐した人たちでしょ!」

 

「…そう言ってくれると助かるぜ」

 

「……」

 

「……」

 

 気まずい沈黙。彼はやはりどこか責任を感じている様子だった。

 

「……あの、」

 

「ん?」

 

「警察に言わない代わりにお願いが…」

 

「なんだ?なんでも良いぞ」

 

「えっと…その…褒めて、下さい?」

 

「…………?」

 

 悲痛な沈黙に耐えられなくなった私は思い切って彼にお願いしたが、他者に甘えられることがなかった私は、あまりにも下手な誘導で彼に甘えることをねだった。その時のきょとんとした顔は忘れられない。

 

「あ、あの…」

 

「ははははは!そっか!そうだよな!」

 

「え、えっと……あっ」

 

 どこか合点がいったような笑いをしながら、彼は私をもう一度優しく抱き止めた。そして優しく頭を撫で、耳元でゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「良くやった。良く頑張った。お前は強い。良い子だ。生まれてきてくれてありがとう」

 

「ぁ、」

 

「あああ」

 

「ああああああああ!」

 

「良いぞ、好きなだけ泣け。その涙には代え難い価値がある」

 

 私を肯定する言葉を。

 

 先ほどとは比べものにならないぐらいの涙と声を出し、抑圧されていた今までの全てを出し切った。

 

ーーー

 

 これが私と彼、カクヨウのはじめての出会い。私に道を与え、私を救い、私を肯定したはじめての人。何年経とうとも忘れない、そう誓って別れた憧れだった人。

 

 彼の言葉を胸に私は私を磨き続けた。格闘術、現代医学、アーツ、科学知識。強くなるために、強くあるために進み続けた我道の中で無二の理解者に出会い、鉱石病を世界からなくすという信念の元にライン生命を共に立ち上げ、そして私がライン生命を去ったとき。

 

 私が私として生きる時、ほんの少しの寂しさと共に必ず彼がどこかに居た。

 

 そしてあの子…イフリータを治療するためにロドスと契約を結び、ロドス本艦を訪れたその時、

 

「よっ。でっかくなったな嬢ちゃん」

 

 恥も外聞もなく抱きついたが、周囲に人がいなかったことが幸いだ。

 

 お互い面倒な立場になったものだ。休日一つ合わせることすら難しい。あの時のお礼も、イフリータに良くしてやってくれていることも、私は何一つお前に返せていないというのに。そして何よりも、もう一度、もう一度だけで良い。

 

『……それでな、カクヨウ。その、またーー頭を撫でて、褒めてくれないか?』




おまけ

「あの、貴方にとっての強さって…」

「ん?ああ、そういや言いそびれてたな。そうだな、倒れねぇこと、かな?」

「倒れない、こと?」

「ああ。相手が誰であろうと、どんな状況だろうと倒れない。それって最強だろ?」

「最強…」

「絶対に倒れない仲間を守り抜く盾。それが俺の理想の強さだ」

カクヨウ
 珍しくロドス辞めたいって言わなかった

サリア
 幼い頃に脳破壊された少女No.2。本編より多少丸くなっているように書いたつもり。ついでに児童福祉についても学んでたり。
 大学卒業してライン生命立ち上げたのが15年前ってマジ?飛び級とかなければ現役で四年制の一般大学を卒業してたとしても実年齢36歳という事実に勃起する。童顔すぎるだろ……

ロリサリアかわいすぎる、甘やかしたあとにいきなりビンタしたい
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