クソ、ブラック企業め!   作:白痴の蝸牛

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ひさびさの投稿なので初投稿です。
時系列的にはシラクザーノになります。

え?何で今更シラクザーノかって?

だってこれ、リアルタイムでシラクザーノ読んだあとから書いたんですもん…(ホントウニアッタコワイハナシ)


ラップランド(上)

 

「……………………………………暇だ!」

 

 俺はカクヨウ。暇すぎて絶賛死にそうになっている。

 

「君もこんな場所だと流石に大人しくなるんだね」

 

「誰のせいだよ誰の。帰ったらドクターになんて言えばいいんだよお前マジで」

 

 ベッドの上で仰向けに寝っ転がる俺…の上に寝っ転がっているこいつ、ラップランドと共にシラクーザに楽しい旅行(?)に来た筈が、かつてない暇に殺されかけている。

 

 ロドスが誇る戦闘狂(アホ)2人がなぜ同じ部屋の同じベッドでくつろいでいるのか。答えは簡単…でもないか。

 

「(シラクーザ語)うるさいぞ!私語は慎め!」

 

「何言ってるかわかんねぇよ!共通言語か極東語で喋りやがれコラ!」

 

「うるさいって言ってるよ」

 

「知るか殺すぞって伝えてくんね?」

 

 2人揃って仲良く監獄に収監されているからだ。

 

ーーーーー

 

 ことの顛末は2週間前に遡る。

 

「カクヨウ、シラクーザに行こうよ」

 

「あん?シラクーザ?」

 

 訓練終わりの着替え室でラップランドがいきなりそう言って迫ってきた。ナチュラルに男子更衣室に入ってきているが、こいつは普通にバスタオル一枚で風呂に入ってきたりするので今更だ。

 

 その際他のやつが話しかけたりチラチラ見てたりすると殴ったり眼を抉ろうとするもんだから触らぬ神に祟りなしって感じで皆無視する。嫌なら入らなけりゃいいのに…

 

「……今何か僕に対してとても失礼なこと考えてないかい?」

 

「いや何も?」

 

「……ふぅん。勇気を出してせっかく行動した乙女に対してものすごく失礼なことを考えている*シラクーザスラング*がいる気がしたんだけどね」

 

「ソッカー、ウン、シツレイダナー」

 

 なんて言ったかわからんけど多分やばい。殺る奴の目だもん。そしてここで『乙女とは?』とか言うとその日の気分で体のどこかを斬り落とそうとしてくるので余計なことは言わない。これを覚えるまで8箇所なくなっている。

 

「話を戻すけど、シラクーザのウォルシーニ!僕の生まれ育ったピッツァが最高の町さ!」

 

「ウォルシーニ?故郷?何でまた急に」

 

 旅行か、別に嫌じゃないが…

 

「聞いてよ!テキサスってば、僕に何も言わずにシラクーザでの自分の過去にケリをつけに行っちゃったんだよ!?」

 

「よくわからんがいいことじゃねーのか?」

 

「あそこに僕が居ないのにテキサスが過去との決別なんてできるわけないよ」

 

「何だそのテキサスの中でのお前の大きさは…」

 

 いやこいつらの過去を知らんから実際でかい確執があるのかもしれんが。……テキサスがお前に黙って行ったってことはそうでもないんじゃね?とか言うと斬られるから心にしまっておく。

 

「一言声をかけてくれてもいいのにね」

 

「(多分声かけなくてもどうせついてくるとか思われてるんだろ)」

 

「とりあえず決定だね!ひさびさに実家にも顔出したいんだ!」

 

「実家?お前勘当されたとか言ってなかったか?」

 

「そうだよ?でも僕があっちの都合を守る義理はないからね」

 

「……見習いてぇもんだな」

 

「なにか言ったかい?」

 

「いや、独り言だ」

 

「そう?で、流石の僕も1人で家に帰ったらお父様に殺されちゃうかもしれないんだ。君がいてくれると心強いよ」

 

 いつになくラップランドは真剣な眼差し。少し頬も赤く、興奮気味のようだ。絶対嫌な予感する。マジでこいつなんかやる。わかってる、わかってはいるが、

 

「ーーへえ。お前を殺せるほどに強いのか、親父さん」

 

 血が沸く。ロドスで数少ない俺と対等に斬り結べるこいつを殺せるような奴がいる。その事実だけでドクターとケルシーセンセとアーミヤちゃん相手に有給の交渉する価値があるってもんだ。

 

「で、出発はいつだ?来週ぐらいか?」

 

「え?何言ってるの?今から行くんだよ」

 

「はい?」

 

「後で怒っていいよ」

 

「……がっ!?」

 

 後頭部に凄まじい衝撃が走る。ラップランドの白い脚が俺の頭目掛けて伸びており、表情とスピード、何よりその威力から割と本気で蹴られたのがわかる。…不意打ちで延髄斬りって俺じゃなきゃ死んでるからな?

 

「いっ……ってぇな!何すんだ!」

 

「あれ、気絶しないんだ」

 

 視界が白みかけたが持ち直した。いつのまにかラップランドは手にいつもの変な形した双剣を持っていた。

 

「報告しねぇでどっか行ったら怒られるって前も言っただろうが!」

 

「だから不可抗力で連れ出されたことにしようとしてあげてるんだよ。大人しく気絶してよ。あんまり君を殺したくないからさ」

 

「俺の場合そう言っても信じて貰えねぇんだって!前なんかちゃんと申請したのに『賄賂を渡して後から提出した物の記録を偽造したんじゃないか』とか言われたんだからな!?」

 

 仮にそうだとしても流石に賄賂を受け取った奴にもなんか言えよと思ったねあれは。

 

「それは君の普段の行いが悪いからだと思うよ」

 

「……ぐぅ」

 

「図星だからってぐぅの音だけ出さないでよ」

 

 あっ、馬鹿を見る目してる。ドクターとケルシーセンセがよくやる目だ。よし、久々におしおきだこの*中世極東スラング*(現在は死語)め。

 

「本気で抵抗する気かい?」

 

「あたりめーだろ。最近反省文の書きすぎで200年ぶりに腱鞘炎になったわ、もうごめんだ」

 

 ていうか最近、ラップランドのウザ絡みが冗談抜きでやばい。部屋で飯食ってたらいつのまにか隣に居るし、何も言わずに俺の部屋に酒持ってきて飲ませてくるし、風呂の下りだってそうだし、なんなら感覚麻痺してるだけで上半身裸の男がいる男子更衣室に普通に入ってきてるのもだいぶおかしい。

 

「最近のお前のウザ絡みにも我慢の限界なんでな、おしおきさせてもらうぞ」

 

「……………ウザ絡み?」

 

 視界を切らさないように気をつけながら上着を羽織り、腰帯に刀を通して居合の形に構える。俺の言葉を聞いたラップランドの顔はいつもの狂気の笑みーーではなく。

 

「ーー」

 

 本気で悲しそうな顔だった。

 

「……はい?」

 

 涙目。これ以上ないほど、百点満点のガチ涙目だ。

 

「ーー」

 

 ヤバイ。

 

「あのー、ラップランドさん……?」

 

「ーー」

 

 かしゃり、と音を立ててラップランドが得物を手から落とした。

 

「(え、これどうしよう)」

 

 あまりに予想外のラップランドの姿に凄まじい冷や汗と反対に俺の思考は停止している。

 

 何がヤバイかって、こいつはこの手の泣きマネや傷ついたフリってのを冗談でもやらない。ヘラヘラ笑いながら冗談めかして口で言うことはあっても、表情や仕草には出すことは決してない。

 

 よもや、相手が武器を構えたときに自分の得物を手放すなんて以ての外。

 

「ーー」

 

 こちらが固まっていると、ラップランドは両手で顔を覆い始めた。押し殺すような泣き声が聞こえる。

 

「わあああごめんごめん!待って泣くなラップランド!俺が悪かった!ウザいとか思ってないから!俺の部屋来てもいいから!今から旅行付き合うからぁぁぁぁぁぁ……」

 

「ーーその言葉に二言はないね?カクヨウ」

 

「……………へ?」

 

 とんでもない嘘泣きだった。

 

「君、泣き落としに弱いって本当なんだね!いつもみたいに不意打ちで一回殺して連れてくよりこっちの方が速いね!」

 

「………」

 

「アッハハハッ!ケッサクだねその間抜けな顔!写真撮ってもいいかい?」

 

「いやダメに決まってんだろ」

 

「そう?それは残念。びっくりした?」

 

「いやめちゃくちゃビビったぞコラ。誰に教わったよその絡め手」

 

「エクシアだけど」

 

「……あ〜」

 

「思い当たるフシはあるんだね」

 

「……エクシアとモスティマとクロワッサンに似たようなことやられた」

 

 それぞれ別日に、である。つまり3回は既に似たような手に掛かってるし、こいつのせいで晴れて4回ひっかかったというわけだ。学習しろよと自分でも思う。

 

 エクシアはパーティーの誘い、モスティマはトランスポーターの仕事の手伝い、クロワッサンは給料日前の金の無心。面白いほどにひっかかるからとエクシアに吹き込まれたテキサスにもやられたが、流石に違和感の方が勝ってひっかからなかった。照れ隠しで口にポッキー突っ込まれたが。(箱ごと)

 

 別に女の涙に弱い訳じゃない。一度バベル時代にWと口喧嘩に発展した際、本人が気にしてそうなことをワザとテレジア殿下とドクターの前で延々と言い続けて泣かせたことがあるのだが、スッキリして放っておこうとしたら今まで見たことない怒り方した殿下にガチ詰めされたのがトラウマなのである。

 

「……懐かし」

 

 遠い日の、褪せた記憶。あんまり思い出したくはない苦い記憶だが、俺にとっては殿下との最後の会話だった。

 

「何か知らない思い出に浸ってるところ悪いけど、つまらなそうだから詳細は聞かないでおくよ。君の口から僕とテキサス以外の女の名前が出るのも不快だしね」

 

「お前な……」

 

「♪〜」

 

 心底興味なしといった風にこちらに背を向けて更衣室から出ていくラップランド。その背にはさっさと支度を済ませろと書いてあるようだった。

 

 それは良い。こいつの横暴なんて今更だ。それに俺の心配は別にある。

 

「はあ、またあの2人からの説教か〜……」

 

 お土産買ってきたらドクターとケルシーセンセ許してくれねぇかなぁ〜……

 

 

 

 

 絶対ダメだよなぁ〜……

 

ーーーーー

 

「あれ?カクヨウさん…と、ラップランドさん?珍しいですね、この時間帯に発着場に来るなんて」

 

「おう、元気だったかディラン」

 

「ロドスの飛行装置で行くんだね。久しぶりに乗るなぁ」

 

 ロドスの一角にある飛行装置の発着場、そこで専門のエンジニア兼パイロットのディランに声をかける。

 

「はい、何とか。…それで、ご用は何ですか?兄弟は今任務で出てますよ」

 

「あーいや、今日はちょっと個人的にな。あいつはお呼びじゃねぇからちょうどいい。今から一機出せるか?できるだけ内密に」

 

「シラクーザに飛びたいんだ。片道だけで構わないよ」

 

 ロドスにおける飛行装置、その中でも特別なエンジンを積んだ高速移動が可能な型はバッドガイ号とグッドガイ号の名で呼ばれる二機のみであり、それぞれ慎重派のディランと問題児のもう一人が操縦するんだが、俺はディランにしか頼まない。

 

 あと1人の方の運転は……まあ、アレだ。チェルノボーグでのレユニオンの鎮圧戦で1秒でも速く現地に到着するためにドーベルマンと一緒に乗せてもらったが、残念ながらあいつは馬鹿だ。自重って字が頭にないらしい。

 

 初めて聞いたぞドーベルマンの金切り声…二度とあいつの操縦する飛行装置には乗らん。

 

「シラクーザですか?……それ、俺がケルシー先生とドクターさんに怒られる奴じゃないですか?今月こいつの改造で厳しいのに来月も減俸はカンベンですよ」

 

「どうせ発着のログでバレるんだ、俺に任務って言われたからって説明すれば怒られねえよ。……ほら」

 

 あらかじめ用意してきた龍門弊をいくらか握らせる。ラップランドと俺の二人分ってことで、多少色をつけてディランの1ヶ月分の給料とほぼ同額だ。結構分厚い。

 

「えっ!?こんなにいいんですか?」

 

「良い仕事にはそれなりの対価を払うもんだ。俺が今回お前の仕事に期待する分って考えりゃ良い」

 

「(ほら見たことか、結局賄賂を渡してるじゃないか。そんなだから疑われるんだよ)」

 

「いいてーことあるなら聞くぞラップちゃん?誰のためにこれ払うと思ってんだ?」

 

「アハハッ、そこだけカンが鋭いのはどうなんだい?そんなことはどうでもいいけど、設備を壊して給料を修繕費に持っていかれている割にはちゃんとお金は持ってるんだね」

 

「先月はドクターの護衛が多かったから潤ってるんだわ。外にいること多かったから物も壊してねーし」

 

 ロドスの給料関係はアーミヤちゃんが管轄してるんだが、ドクターの護衛はめちゃくちゃ条件が良かったりする。採用基準は最低でもオペレーターとしての勤務歴が5年以上で戦闘経験10年以上とかいうかなり狭い範囲だが、立候補者は後を絶たないらしい。

 

 ロドス内でも屈指の要人だからそこは理解できるが、『ドクターを狙った相手との戦闘行為の際は状況にもよるが殺しても構わない』って真顔で言われた時は震えたね。ありゃ14やそこらの子供がやっていい顔じゃねぇ。明らかに私情が入ってますぜCEO……

 

「んで、ここからシラクーザはどれぐらいだ?」

 

「えっと、俺の運転なら3時間半ってところです。ロドスの現在地からシラクーザまでの直線上に天災の予報もないですし、それに今シラクーザは雨季なので雲が分厚いですし、端っこあたりなら市街地まで行けますよ。その場合着陸ができないので飛び降りてもらうことになりますが」

 

「まあそれで構わねぇよ。1番手っ取り早いだろうしな」

 

「決まりだね」

 

「じゃあ、10分後に出します。荷物があれば今のうちに積み込んでください」

 

ーーーーー

 

「なあラップランド、それ何が入ってるんだ?なんか動いてねぇか?」

 

「そうかい?見間違いじゃないかな」

 

「……ちょっと呻き声も聞こえるぞ?」

 

「淑女の荷物にはちょっとばかり秘密が多めに入っているものだよ。あんまり根掘り葉掘り聞くのは褒められないなカクヨウ」

 

「……そっか(明らかに大人が2人入ってるんだよな…知らんふりしとくか)」

 

ーーーーー

 

「安全装置よし、回転数よし、燃料よし。発着準備完了です。お二方、ベルトはオッケーですか?」

 

「問題ねーぞ、出してくれ」

 

 耳鳴りがするような駆動音と共に機体がゆっくりと動き出した。着艦口から見える空は快晴。旅の幸先としちゃあ最高だ。

 

「ねぇカクヨウ。あれ大丈夫?」

 

「ん?あれってな、ん………だ…」

 

 後ろの席に座っていたラップランドが席から外を指差す。その先に居たのはーー飛行装置の準備が完了するまでオペレーターが待機する搭乗口からこちらを見下ろすドクターだった。最高の幸先がたった今終わった。

 

「……」

 

 腕を組んで仁王立ち。やばい。バチバチにキレてる。窓から一瞬で視線を外して足元に落とす。

 

「だ、大丈夫だ、まだ俺らを見てるとは…」

 

「だってこの飛行装置の動きに合わせてドクターの首が動いてるよ?あれ確実に視線合わせようとしているね」

 

「おいそれ以上実況すんな!怖いから!マジでやめて!?」

 

「あれ?珍しいね。ドクターがバイザーを外してるよ」

 

「え?」

 

 ラップランドから出てきた言葉があまりにも奇特すぎてドクターの方向を見ちまった。あの不審者がバイザーを外すなんてそれこそ風呂の時ぐらいだ。日中、それも人の目もある場所でなんて見たことがない。

 

 視線の先のドクターは本当に素顔を晒しており、ワルファリン並みに白い病的で繊細な肌、色落ちではなく元から真っ白い色素を持つ髪を見せている。

 

 そして明らかにブチギレているとわかるこめかみに浮いた血管と、笑っていない目と笑っている口元。そしてゆっくりと唇が動くのが見える。その唇はーー

 

『ケルシー』と。確実にそう言った。

 

………嘘っしょ?

 

「ディラン!今すぐ出せ!」

 

「えっ!?あっ!?どうされました!?」

 

「説明は後だ!とっとと出せ!」

 

「わっ、わかりました!急発進になります!気をつけて下さい!」

 

 ガクンと身体が後ろに引っ張られる感覚と共に、機体がかなりの速度で加速を始める。

 

「(おぞましい唸り声)」

 

 形容し難い声を上げながら、ドクターの真下、飛行装置の停留所の壁をぶち抜いて緑と黒の鈍い輝きを見せる鉱石のような怪物ーーMon3trがこちらに接近してくる。

 

「うわあああ!?なんだアレ!?」

 

「来やがった!」

 

「アハハッ!ドクターはだいぶお冠みたいだね!」

 

 Mon3trの鎌のような腕が機体にぶつかる寸前ーーコンマ1秒で離陸した飛行装置が急旋回し、なんとか攻撃を避けることに成功した。

 

「や、やった!なんとか避けられました!」

 

「油断するな!上昇しながら加速し続けろ!アレはケルシーセンセ(本体)から離れても100メートルぐらいなら追っかけてくる!」

 

「あ、何か口元が光りはじめたよ」

 

「…ビームか!俺だけならともかくお前らが乗ってるなら高熱で誘爆する動力元は狙わねぇ!おそらくウイングかジェットの根本部分を焼き切って飛行能力を殺した後に機体ごと回収する算段だ!ギリギリまで引きつけながら回避しろディラン!腕の見せどころだぞ!」

 

「あー!もうどうにでもなれ!」

 

 帰ったらぜってえぶっ殺されるな。

 

 そんなことを考えながら、Mon3trとしばらく空中戦を繰り広げるのであった。

 

ーーーーー

 

「すまない、取り逃したようだ」

 

「仕方がないさ。対応が緊急すぎた」

 

 カクヨウが乗る飛行装置がロドスから発着して数分、獲物たちを取り逃したMon3trが不機嫌そうな唸り声をあげながら、私の隣のケルシーの脊髄へと帰還した。

 

「あの馬鹿、どこに行ったと思う?」

 

 私に質問されたケルシーが顎に手を当て、ぴったり1秒逡巡する。

 

「恐らくシラクーザだろう。現在のロドスの位置から飛行装置を使わなければならない距離の目的地、同席していたラップランド、今朝方に君宛てで送られてきたテキサスからの手紙。ラップランドが見せるテキサスへの執着心からして何かしら彼女らの過去に絡んだものと予測できる」

 

「……だよね」

 

 また一つ頭痛の種だ。どうせあのアホは強い奴と戦えるとか唆されてノコノコついていったのだろう。あいつは本当に頭がおかしい。

 

 アカフラの密林で喧嘩を売ってきた原住民を片っ端から血祭りにあげ、本人にその気は無いのに族長にならされかけて大揉めしたこともある。

 

 本当にヤバかったのはカジミエーシュでニアールのバックアップをロドスが行なっている際に、私に黙ってレッドパイン騎士団に無理やり加入し、スポンサーの意向や世間に人気の騎士のイメージブランディングなぞ知ったことかとばかりに大暴れした結果、カジミエーシュの経済を大きく混乱させたときだ。向こう一年、ロドスはカジミエーシュに近寄れないだろう。

 

 最近だとクルビアでサリアやMechanistと共にライン生命の闇を暴こうと動いていたとき、ホルハイヤと名乗る傭兵を強敵としてロックオンしはじめ、『先に喧嘩売ったのはてめぇだし、傭兵ならブチ殺されても文句ねーよな』と、独特の持論を展開し、件のホルハイヤがどこにいて何をしていようとも本気で24時間襲撃を行った結果、疲れ切ったホルハイヤが本気で泣いて謝り、雇用主のクルビアの副大統領にから緊急でロドスに苦情が入ったことがあった。

 

「クロージャ」

 

 通信機のスイッチを入れ、エンジニア部のチャンネル、その統括を担当するクロージャに直接繋ぐ。

 

 次の策だ。万が一、カクヨウがロドスを辞める為にどこかへと向かったのであれば、どんな手を使おうとも連れ戻す必要がある。

 

『はいはーい?何か用?今ちょっと忙しいんだけど』

 

「カクヨウが逃げた。グッドガイ号だ。座標をリアルタイムで補足して私のPRTSに表示してくれ」

 

 通信機越しに聞こえていた機械の駆動音とデバイスにデータを打ち込むカタカタという音がぴたりと止んだ。

 

『……OK。最優先で探知するよ』

 

 いつもの砕けた口調が消え去り、すぐさま通信が切られる。

 

 カクヨウをここから逃さない。執着にも似たこの思いを強く抱いているのはロドスには多い。しかしながらその思いを実行にまで移せる者は少ない。それが可能な者の1人が、何を隠そうクロージャだ。

 

 過去、カクヨウが本気でロドスから逃げ出したことが一度だけある。

 

 アーミヤの精神感応、アスカロンとレッドの追跡、Mon3trとブレイズの襲撃を受けてなお全て凌ぎ切り、本当に後一歩で脱出というタイミングでクロージャがロドスの緊急防護システムを起動し彼を無力化した。その時のクロージャの表情は忘れることはできない。

 

『ダメ。これは本当にダメだよカクヨウ。君の家はここ。外に君の帰る場所は無いよ。私たちを捨てるなんてダメ』

 

 押し倒したカクヨウの顔を覗き込んで無表情のまま涙を流し、光のない瞳で言い聞かせるようにそう呟き続けるその姿は彼女を知るものは同一人物と言われても絶対に信じないだろう。

 

 それほどにクロージャはカクヨウがロドスを抜けることに途轍もない拒否感を示し、あのブレイズに勝るとも劣らない激しい執着を見せる。

 

「グラベル、シラユキ」

 

 PRTSの人事連絡を運営するチャンネルを開き、操縦の腕を信用ているオペレーターに個人チャットで招集を行う。

 

「お呼びかしら?」

 

「ここに」

 

「伝達だ。シュヴァルツ、カンタービレを呼んでくれ」

 

「了解よ〜」

 

「ただちに」

 

「ケルシー」

 

「ラップランドとディランは減俸としてカクヨウの処罰はどうする?」

 

「彼は私から言っておく。それ以上は必要ない」

 

 バイザーを付け直し、発着場に向かって歩め出す。

 

「直接ね」

 

 シラクーザのウォルシーニ、ピザが美味いと聞く。あのアホをとっ捕まえてその財布から支払わせてやろう。

 




カクヨウ
ピザは好き。パイナップルピザが出るとパイナップルだけ除いて食べたあとにピザを食べる。ただし一度パスタを食べた時にそばの要領で行って白い目で見られたことがあるのでシラクーザ料理を食べるときは周囲の目を気にする。

ラッピー
異格S1のモーションがどじょうすくいにしか見えない。恐らくパイナップルピザが出てくるとわかりやすくブチギレながら他人にあげる。欲しがる人がいない場合は心底不服そうな顔して食べる。一応お嬢様だから捨てるとか無駄にするという発想がなさそう。戦闘中なら普通に中身の入ったワインで敵の頭カチ割るしピザも投げる。

テキサス
パイナップルピザが出てきたら普通にゴミ箱に捨てそう(偏見)
その後作った人のところに行って静かに詰めそう(ド偏見)

ドクター
砂虫食うやつがピザのトッピングぐらいにあれこれ言わん。全部食うし全部美味い。馬鹿舌とかじゃなくて純粋に美味いと思ってる。

クロージャ
1番好きなトッピングはクアトロフォルマッジ。




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