儚き少女とホロライブ 作:配信機材 N
それとネタが浮かぶ限りは更新していこうかと思います、よろしくお願いします。
鈴蘭たちの通う学校の食堂はとても広いスペースを有しており、豊富なメニューが立ち並んでいるので多くの学生が訪れて舌鼓を打っている。
<ハァチャマッチャマーッ!
「・・・?」
「どうしたのですか、鈴ちゃん?急に周りを見渡して?」
突然立ち止まって左右を確認するように首を動かす鈴蘭に、手を握っていたるしあは引っ張られる感覚を感じて彼女に声をかける。
「なんだか先輩の声が聞こえた気がして・・・気のせいかな?」
鈴蘭と同じように周りに視線を向けたるしあだが、見える範囲に見知った顔を見つけることができずに彼女に視線を戻す。
「知っている先輩は見当たらないのです、気のせいではないですか?」
「鈴蘭ー、るしあー!ノエルを見つけましたよー!」
自分たちを呼ぶマリンの声に反応して顔を向けると、手招きするマリンとすでに席に着くノエル、それと席に座ろうとするフレアの姿を発見する。
「今行くのです!ほら、鈴ちゃん。行くのですよ」
「んっ、うん」
手を引くるしあに促されるまま歩き出した彼女は、一旦声のことは頭の片隅に追いやって昼食のことへと思考を切り替える。
「鈴蘭、こっちこっちー!団長の隣が空いてるよっ!」
そう口にして隣の椅子を引いたノエルに流されるままに席に着こうとした鈴蘭だが、それよりも先にるしあが腰を下ろしてその隣の椅子を引く。
「鈴ちゃんはこっちに座るのです・・・ノエルはさっき鈴ちゃんに頭を撫でてもらったんですから、抜け駆けは許さないのです」
「抜け駆けじゃなくて、戦略だよっ!」
るしあの言葉にふふんっと豊満な胸を張ると上下に大きく揺れ、それを目にしたるしあは瞳から光を消して睨みつけるように眼力を増す。
「・・・もぐ」
素早い動きでノエルの側まで移動したるしあはその勢いのまま手を伸ばし、たわわに実った果実を取るために鷲掴みにする。
「えっ、も・・・?ひゃぁっ!?暴力反対っ!!」
強く引っ張られたことでお餅のような弾力が見て取れる光景に、食堂で食事をしている男女ともに視線を釘づけにされる。
「二人とも、食事中に暴れないの。鈴蘭も二人を止めようね?」
「んっ・・・はむっ、わかった」
フレアがるしあとノエルに注意を口にして、隣で平然と弁当を開けて口に運ぶ鈴蘭にも声をかける。
「・・・え?これって団長も悪いの!?」
「ノエル、騒がないの」
「フレアが何故か冷たい!?団長悪いことしてないよね、フレア~!」
どこか素っ気ないフレアに困惑した様子で縋りつくノエルに、フレアは持参した弁当を広げて気にした素振りを見せずに食事を進めている。
「そうなのです、ノエルのおふざけに付き合っていて聞くのが遅れてしまったのですがっ「おふざけ・・・?」――どうしてこの席なのですか?」
るしあの問いに鈴蘭は弁当から視線を外してテーブルへと視線を向ける、このテーブルは大きく十人ほどが座れるスペースのある大人数用の席である。
「あ~、それは・・・実はこの席取ったの団長じゃなくて、面識のない後輩の男の子だったんだよね」
「後輩の男の子?なんで面識がないのに席を取っといてくれたぺこか?」
「あと、そのまま受け取るのも船長はどうかと思いますけど・・・」
注文した食堂の定食を持って戻ってきたぺこらとマリンの言葉に、ノエルは首を傾げながら続きを口にする。
「なんでも誰かに頼まれたみたいで、団長に席を譲ったらどこかへ走っていっちゃったんだ」
「あぁ~・・・理由はなんとなく分かるんですけどね~、誰かまではちょっと船長も分かりませんね」
モグモグと食事をしながら言葉を漏らすマリンは視線を鈴蘭に向け、彼女はおかずの卵焼きを口にしながらキョトンとした表情を浮かべる。
「わざわざ大人数用の席を取っていたってことは、このまま相席するつもりなんじゃないかな?それで誰の差し金か分かると思うよ」
「・・・なんだかフレア、さっきからちょっと刺々しくない?」
ノエルの言葉に隣に座るるしあは頷きで返して視線を彼女に向ける、その先ではパンダのような見た目をしたフレアの小さな妖精『きんつば』に自身の弁当のおかずを与える鈴蘭の姿があった。
「おいしい?ふふっ、よかった」
「んぶっ!」
そしてその光景を目にして抑えられなくなったのか、感情を口から漏らした後に口元を手で押さえて天を仰ぐフレアの姿が出来上がる。
「? フレア?」
「な、んでもないから・・・気にしないで、うん・・・」
フレアの言葉に首を傾げる鈴蘭と彼女の真似をするように首を傾げるきんつば、その仕草でさらに追い打ちをかけられたフレアは胸を押さえてテーブルに額を打ち付ける。
「ふっ、フレアーっ!?頭大丈夫っ!?」
フレアの突然の奇行にノエルが心配の声を上げ、ぺこらはその言葉に呆れた様子で口を開く。
「その聞き方はアウトぺこ、それにそこまで騒ぐほどのことでもないぺこだよ」
「って言いつつ、どうして鈴蘭の方を見ないようにしてるんですか〜?」
「ふ、深い意味はねぇぺこ・・・ニヤニヤするなぺこっ!」
「いったぁ!?物理は反則でしょうがっ!」
ギャーギャーと騒ぐぺこらとマリンに呆れたような視線を向けてから、鈴蘭に視線を向けたるしあは楽しげに頬を緩ませる幼馴染みの姿を視界に捉える。
「嬉しそうですね、鈴ちゃん」
「うん。皆の元気な姿を見るのは好きだから、つい頬が緩んじゃうね」
そう口にする鈴蘭につられるように笑みを溢したるしあが彼女に声をかけようと口を開いた瞬間、鈴蘭の頭の上に何かが飛来してきてぽすっと優しく着地した。
「? 頭になにか、んしょっ・・・あれ?だいふく?」
頭の上に感じる柔らかな重みに気付いた鈴蘭が手を伸ばしてその姿を確認すると、とある雪の令嬢のお供であり雪の精でもある『だいふく』だった。
「どうしたの?今日は一人?ご主人さまの側にいなくて平気?」
彼女からの問い掛けにジッと視線を向けていただいふくだが、ふと明後日の方向へと顔を向けたので彼女もつられて顔を向ける。
「だいふくー?急に飛んでいってどうしっ―――鈴蘭先輩っ!?」
視線の先には小走りでだいふくを追いかけていたであろうライトブルーの長い髪を揺らす女子生徒がおり、彼女の姿を目に映すとなかなかのものを揺らしながら駆け寄ってくる。
「こんらみです、鈴蘭先輩っ!」
「んっ、ラミィもこれから昼食?」
挨拶に会釈で返した彼女の言葉に、『雪花 ラミィ』はまるで待ってましたと言わんばかりに瞳を輝かせながら口を開く。
「そうなんです!ですが少し遅く来てしまったので席が埋まってしまっていて、困っちゃいますよね~。あっ!鈴蘭先輩たちの席は空席がありますよね?迷惑でなければ相席してもいいですか?」
まるで用意していたような台詞を一息で言い切ったラミィに、鈴蘭以外の皆は「(あっ、この娘の仕業か)」と察する。
「うん、大丈夫だよ。ちょうど席も四つ空いてるから、他の三人も座れるよ?」
そう口にしてラミィの後ろへと視線を向けた鈴蘭に対し、ラミィの同級生である三人の歩み寄る姿が見えた。
「あーっ!ラミィちゃんズルい!ねねも鈴蘭先輩の隣に座りたい!あっ、こんねね~!」
一番にテーブルの側に辿り着いたお団子ヘアーを揺らす『桃鈴 ねね』は、頬を膨らませながら不満を口にする。
「ねねちゃん、ゴメンね・・・けどこの席は選ばれた者しか座ることはできないの」
「本当にっ!?ラミィちゃん、実は凄かったんだね!」
ラミィの言葉に瞳を輝かせながら興奮したように声を上げるねね、彼女はきんつばとだいふくの相手をしていて聞こえてはいない様子であった。
「えっ、てかそのまま鵜呑みにしちゃう感じ?あとフレア先輩はどうしたんですか?」
「・・・気にしないで」
いつもの光景を目にして何とも言えない表情を浮かべていた『尾丸 ポルカ』は気を取り直してフレアに声をかけると、額をテーブルにつけて微動だにしなかったフレアはようやく顔を上げる。
「ふぅ、やっと落ち着いた・・・危うかった」
「マジで何があったんですか?」
九死に一生を得たような口振りをするフレアに思わず問いを投げるポルカ、そんな思い思いの行動をする二人に最後に辿り着いた『獅白 ぼたん』が声をかける。
「ららーいおん。ほらほら、二人とも。話をするのもいいけど、早く食べないとお昼休み終わっちゃうよ?」
「そうだった!早く食べなきゃ遊ぶ時間がっ!」
「まだ時間結構あるけどね、あっ・・・おるよ、ポルカ!」
「なんで今挨拶したの?」
各々の言葉を口にしながら席に着く後輩たちに、るしあはハッとしたように口を開く。
「いや普通に流しましたけど、ちょっと待ってほしいのです!」
「? さすがに相席を咎めるのは今更だと思いますよ、るしあ」
るしあの抗議に口を挟むマリンだが、るしあは首を横に振ると続きの言葉を告げる。
「選ばれた者はラミィちゃんじゃなくて、るしあなのですっ!」
胸を張ってそう高らかに宣言したるしあに、ラミィはムッとした様子で口を開く。
「るしあ先輩、幼馴染は負けヒロインだって法則知らないんですか?」
「それは創作物での話なのです、るしあは内側も外堀もバッチリなのです」
「余裕ぶっているとそのうち足を掬われちゃいますよ?えいっ」
「むっ・・・るしあはそんなヘマしないのですよっ!」
言い合いをしながら徐々に間合いを詰めていく二人は対抗するように鈴蘭と腕を組み、彼女は突然両腕を拘束されたことに疑問符を浮かべる。
「・・・っ?」
自身を挟んで睨み合いを続けるるしあとラミィに首を傾げながらも、いつものことなので深く考えずに昼食の続きを摂ろうとしたところで・・・両腕が動かせないことに気付く。
「ぁっ・・・二人とも、腕を解放してほしっ―――」
「第一るしあは鈴ちゃんと生まれてからずっと一緒だったのです、だからこれから先も一緒に過ごすのが自然なのです!」
「時間の長さが全てではないと思います、ラミィの鈴蘭先輩への愛は海・・・いいえっ、宇宙よりも広くて大きいんです!」
「るしあの愛だって同じ・・・いやっ、るしあの方が広くて大きいのです!」
「いいえっ、ラミィの方がもっともーっと広くて大きいですよ!」
「るしあの方がっ―――」
「ラミィの方がっ―――」
二人は言い合いに夢中になっており彼女の言葉に気付くことはできず、彼女もまた邪魔しては悪いと思って口を噤む。
「―――ぃなぁ・・・・・・っ?」
少しだけしょんぼりした様子で視線を下げた鈴蘭だが、向けた視線の先ではきんつばとだいふくが彼女の弁当を挟んで何やらやり取りをしている。
「? 二人とも何を・・・?」
しばしのやり取りを終えて頷きあう二体の様子に声をかけた彼女に気付いたきんつばとだいふくは、箸を掴むとおかずの一つを摘んで鈴蘭の口元へと運ぶ。
「もしかして、食べさせてくれるの?」
鈴蘭の問いかけに頷きで返すきんつばとだいふくに、彼女は顔を綻ばせると口を開けて差し出されたおかずを受け止める。
「あむっ・・・んふふっ、二人ともありがとうね」
お礼を受けたきんつばは任せろと言わんばかりに胸を叩き、だいふくは照れた様子で首に巻くマフラーで口元を隠す。
彼女の言葉でやる気の上がった二体のおかげで弁当を食べ終えると、いつの間にか自由になっている両手で弁当箱を片付ける。
「あれ?そういえば、るしあとラミィは・・・?」
「二人なら後ろですよ、鈴蘭」
これまたいつの間にか隣に腰掛けていたマリンの言葉に従って振り返った彼女が目にしたのは、床に正座させられてコンコンと説教をされるるしあとラミィの姿だった。
「さすがに見過ごせなかったんでしょうね、鈴蘭がしょんぼりとした表情を浮かべた瞬間にあの二人が立ち上がって・・・鬼より鬼の顔をしていましたよ」
マリンの言うとおりなのか説教を受けている二人は顔をあげようとはせず、ただじっと視線を下げて恐怖で身を震わせていた。
「鈴蘭のことを想うなら、しっかり相手のことを考えて動かないと。それにっ――」
「ラミィもだよ、鈴蘭先輩の邪魔になるようなこととか悲しませるようなことはしちゃダメだよ。そもそもっ――」
そして後ろ姿しか見えないが纏うオーラの違うフレアとぼたんの姿を確認した彼女は、キョトンとした表情を浮かべて口を開く。
「フレア、ぼたんちゃん。私は気にしてないから、そのくらいでいいよ?」
「ダメだよ、鈴蘭。しっかり言い聞かせておかないと、また同じことが起きても嫌でしょ?」
「フレア先輩の言う通りですよ、鈴蘭先輩。これもラミィたちの為ですから、お昼休みが終わるまでには済んでると思いますよ」
「「えっ」」
時計を確認した鈴蘭はあと十分と少しだと思い、それぐらいならいいかと考えて頷きと共に口を開く。
「それならいい、のかな?でもあんまり怒らないであげてね?私のことで言い合いになっちゃったみたいだから」
鈴蘭の言葉に微笑みを浮かべながら頷いてからるしあとラミィへと向き直ったフレアとぼたん、それを見た彼女は前に向き直って残りの時間は何をしようかと思考を巡らせる。
「そういえばぺこら先輩、この前貸した物ってもう使いました?」
「あぁ〜、あれぺこか・・・それなら机と一緒にスクラップとして粉々に砕かれたぺこ」
「なんでぇ!?」
「っていうか、マリン!どうしてマリンが鈴蘭の隣に座ってるの!?」
「まぁまぁ、別に減るものがあるわけでもないですしいいじゃないですか」
「減るよ!団長が鈴蘭に接触する機会が減ってるよ!」
「毎回隣の席から事あるごとにボディタッチしてる人が何を言ってるんですかねぇ・・・」
「ん〜?団長何言ってるかわからないなぁ〜」
ぺこらに話しかけたポルカは予想外の返しを受けて驚愕した表情を浮かべ、ノエルはマリンに食って掛かったが返り討ちにあっていた。
「ねぇねぇ、鈴蘭先輩!お話しましょう!」
「っ!うん、何の話をしようか?」
「楽しい話がいいですね、あと鈴蘭先輩のこととか!」
「私のこと?特に面白いことはないと思うよ?」
「ねねが知りたいんだからいいのっ!」
ねねの返事に首を傾げた彼女だが、本人がいいならいいかと考えて何を話そうかと考える。
「それならポルカも聞きたいです、鈴蘭先輩の弱点っ――げふん、ごほんっ!――苦手なものとか知りたいなぁ、なんて」
「隠せてねぇぺこ」
「鈴蘭に苦手なものってあるの?ホラー耐性もそら先輩並みだし・・・」
「好き嫌いもないイメージですよね、それで鈴蘭?嫌いもしくは苦手なものってあります?」
そう尋ねられた鈴蘭は少し考える素振りを見せてから、視線を窓の外に向けてから口を開く。
「強いて言うなら、太陽・・・かな?」
「えっ、あ~・・・え、反応しづらいんですけど・・・」
彼女の言葉に何とも言えない表情を浮かべたポルカは周りへと視線を向ける、同級生組はいつものことなのか苦笑を浮かべている。
「? あれ、そういうことじゃないの?」
「いや、そんな先天的なことじゃなくて・・・って、ねねち?」
「鈴蘭先輩の苦手なものが太陽となると、太陽をどうにかして・・・」
「ねねーっ!?ちょっ、落ち着いてぇ!?」
何やら物騒な深い考えを始めたねねを慌てて止めるポルカ、その様子を眺めながら鈴蘭は首を傾げていた。
「あっ、そろそろ戻らないと!次は移動教室だよ、おまるん!」
「え?あ~、そうだっけ?それじゃあ、ししろんとラミィに声かけないとね」
時計を確認したねねの言葉にポルカは思考を巡らせてからそう返して腰を上げる、それを確認した彼女たちも席を立つ。
「それなら団長たちも戻ろっか、フレア~!」
「んっ?もうそんな時間?じゃあこれでやめておくけど、また同じ事したら・・・」
「しないのです!鈴ちゃんを悲しませるようなことは、もう決して!」
「ラミィもです!鈴蘭先輩とずっと一緒にいたいですから!」
るしあとラミィの言葉にフレアとぼたんは小さく頷き、耳にした彼女は嬉しそうに頬を緩ませる。
「それじゃあ先輩方、私たちはこれで・・・?ラミィ?」
「あっ、足がしびれてぇ・・・」
正座していた弊害に襲われるラミィに苦笑を浮かべながら、肩を貸したぼたんはねねとポルカを引き連れて食堂を後にした。
「私たちも戻ろうか」
「そうだね、るしあは大丈夫?」
「問題ないのです、でも肩は貸してほしいのです・・・」
「ダメじゃないですか・・・」
「食器片づけてきたぺこ、って何してるぺこ?」
「う~ん、正座の影響かな?」
そんな会話をしながら食堂を後にした彼女たちは、午後の授業もしっかりと受け手放課後を迎える。
「それじゃあ今日はここまで、帰る子も部活の子も明日も元気な姿を見せてね」
担任の先生の言葉を皮切りに皆が思い思いの行動を始め、鈴蘭たちもそれぞれの目的のために動き始める。
「団長、今日も騎士団に顔を出さなきゃいけないんだよね~。フレアも来るよね、ねっ?」
「なんで少し圧をかけてきてるのか分からないけど、一応ノエルと一緒に行く予定だけど・・・マリンとぺこらは?」
ノエルの問いかけに了承で返したフレアは、他の面々へと話を向ける。
「船長はちょっと用事があるので帰りますよ、ぺこらはどうですか?」
「この後ポルカと会う予定ぺこ、だからこのままポルカのところに向かうぺこだよ。っと、じゃあぺこらは行くぺこ!」
そう口にしたぺこらは時計に視線を向けてから小走りで教室を後にし、手を振って見送った鈴蘭は視線をるしあに向ける。
「るーちゃんは、どうするの?」
「るしあは鈴ちゃんと一緒にいる予定なのですよ?」
るしあの返事を聞いた鈴蘭はホッとした様子を見せながら柔和な笑みを浮かべてるしあの手を握る、その様子を見つめていたるしあはキュッと口元を引き締める。
「うぅうぅぅぅっ・・・!団長も鈴蘭と一緒に行きたい・・・っ!」
「いや、ダメだからね?団長として騎士団の集まりには参加しないと、ね?」
「むぐぐぅ・・・フレア~」
「はいはい、行くよー」
「あーっ・・・」と声を漏らしながら手を伸ばすノエルの首根っこを掴んで引き摺っていくフレアを見送ると、それに続くようにマリンもその場を後にするべくカバンを手に取る。
「それじゃあ船長も行きますね、あまり遅くならないうちに帰るんですよ〜」
「マリンも気を付けて帰ってね、また明日・・・かな?」
「明日も雨の予報なのです」
マリンと鈴蘭の話を聞いてスマホで天気予報を調べたるしあの言葉に、彼女は微笑みを浮かべて口を開く。
「だったら明日も皆と会えるね、ふふっ・・・嬉しいなぁ」
「可愛すぎでは?そもそも学校に来れなくても会えるでしょうに・・・っと、それじゃあ船長はこれで!出航~!」
そう言って手を振りながら教室を後にするマリンに、鈴蘭とるしあは手を振り返して見送るのだった。
残された鈴蘭とるしあは顔を見合わせてから、彼女の次の目的地へと歩き始める。
「それで鈴ちゃん、今日は部活に行くのですよね?」
るしあの言葉に頷きを返してから鈴蘭は口を開く。
「うん、久しぶりに学校に来たから。顔を出しておこうと思ったの、朝に連絡も来てたし」
そう口にしてスマホの画面をるしあに見えるように向ける鈴蘭、るしあは内容を確認してから口を開く。
「なら部室に向かうのですね、先輩たちも喜ぶのです」
「そう、かな?そうだと嬉しいな」
るしあの言葉に微笑みを浮かべながらそう返す鈴蘭に、るしあも自然と頬を緩ませて彼女の手を握る力を強める。
「あら、ここにいたのね」
階段を降りようと曲がり角を曲がった先には人が立っており、その人物は鈴蘭を視認するとそう声をかける。
「あ、ちょこ先生」
「ふふっ、Good evening!鈴蘭様、るしあ様も。ちょっこーん!」
悪魔の角と羽と尻尾の生えた金髪の胸元が大胆に開いた女性であり保険医であるちょこの挨拶に、鈴蘭とるしあが会釈を返すとちょこが口を開く。
「鈴蘭様、体調は問題ない?雨が降っているとはいえ紫外線がなくなったわけではないから、何かあればすぐに連絡をちょうだいね。鈴蘭様の為なら、どこからでも駆け付けるから」
「でもちょこ先生、朝早くは起きれないですよね?」
鈴蘭の素朴な疑問にちょこは視線を逸らして
「だっ、大丈夫!鈴蘭様の為なら起きれるはずっ・・・!」
「たしかに、鈴ちゃんが登校する日は学校に来れているのです」
「? それ以外の日もちゃんと来てるんじゃないの?」
「たまに遅刻したり、いなかったりするのです」
るしあの返事を聞いて真偽を確かめるように視線をちょこへと向ける鈴蘭、彼女の視線を避けるように目を逸らすちょこは何かを思い出したというように手を叩いてから口を開く。
「そ、そうだわ!そろそろ保健室に戻らないとっ・・・それじゃあ鈴蘭様、るしあ様。おつかれいと・・・あーむっ♡」
慌てた様子でそう口にしたちょこは、最後に鈴蘭の頬に口付けを交わしてからその場を足早に後にする。
「相変わらず、あの挨拶には慣れないね」
そう声を漏らしながら微笑みを浮かべる鈴蘭に、るしあはムッとした様子で口を開く。
「慣れられても困るのです・・・鈴ちゃんの唇はなんとしても死守するのです、むんっ」
小さく決意を新たにするるしあの姿に首を傾げながら、手を強く握り締めながら目的地へと進むために階段へと足を踏み出した。
運動系の部活動は基本的に屋外か体育館を使用するところが多く、文化系は基本的に普段授業で使う教室とは別に特別棟という建物の中にある一部屋を部室として提供される。
そして鈴蘭とるしあが向かっている部活もまた文化系になるので、校舎から渡り廊下を通って特別棟へとやってきた。
「ここはいつ来ても賑やかなのです」
るしあの言う通り数々の部活がほぼ全ての教室を使っているので、生徒の話し声や化学の実験による爆発音など様々な音が鼓膜を揺らす。
「先輩たちもう集まってるかな?」
「部長と副部長は来てそうなのです、あとの二人は・・・気まぐれですけど、鈴ちゃんが来ることを知っていたら来ると思うのですよ」
「そうかな?」
不思議そうな表情を浮かべる彼女の姿に、自分の影響力がわかってないんだなぁと考えながらも指摘することなく歩を進めるのだった。
特別棟三階の一番奥の教室前に着いた鈴蘭とるしあは、視線を交差させてから扉を数回叩く。
「はいはーいっ!鍵は開いてるよー!」
するとすぐに中から返事が聞こえたので、二人は扉を開いて中へと足を踏み入れる。
中は普通の教室とは異なり半分ほどの広さで一段高くなった床には畳が敷き詰められていて、そこには何故かこたつやテレビなど普段の学校生活では見ない物が所狭しと少し乱雑に置かれている。
「ん〜、んっ?あっ!来たね、二人とも!こんこんき〜つね!」
テレビの前で何やら唸りながら白い狐耳と尻尾を揺らしていた『白上 フブキ』は、彼女たちの入室に気付くと両手で狐さんを作ってそう口にする。
「フブキ先輩、こんにちっ・・・」
鈴蘭は途中まで挨拶を口にしたが唐突にハッとなにかに気付いたような表情を浮かべ、先に靴を脱いで畳に上がったるしあとフブキは疑問符を浮かべながら彼女へと視線を向ける。
「鈴蘭ちゃん?どうかしました?」
「鈴ちゃん?」
声をかけられた彼女は一度深呼吸をしてから、意を決したように口を開く。
「こんすず〜・・・どう、かな?皆の真似をしてみたん、だけど・・・ちょっと、恥ずかしいね」
つまんだ鈴を左右に振るような仕草をしながら頬を薄紅色に染める鈴蘭の姿を目にしたフブキは、ガツンっと頭を殴られたような衝撃に襲われる。
「んんっ・・・!スゥー」
るしあは昔に一度見たことがあったので何とか致命傷だけは避けられた、が無傷というわけではなく胸を押さえて何とか耐えていた。
「? るしあ?フブキ先輩?」
「・・・・・・Greatですよ、こいつはっ――ぐふっ」
彼女の声に再起動を果たしたフブキは、サムズアップした状態で仰け反りながら後ろに倒れ伏した。
「え、えっ・・・?」
突然畳にその体を沈めたフブキに困惑した声を漏らす鈴蘭、その声に反応するようにるしあも気を取り直してフブキに顔を向ける。
「あぁ~・・・だからあの時止めたのですよ、それより上がるのです」
「えっと、起こさなくていいのかな?」
「少し経ったら起きると思うのです、ですから今はそっとしておくのです」
「う、ん・・・るしあがそう言うならっ―――」
鈴蘭が言葉を最後まで言い切る前に隣の部屋に繋がる扉が開き、フブキと同じ部員である狼耳と尻尾の生えた『大神 ミオ』が話し声を耳にして姿を見せる。
「ぅんっ?あっ、鈴蘭。それにるしあも、こんばんみっ――ってフブキ!?なんで倒れてるのっ!?」
鈴蘭とるしあを目にしたミオは挨拶を口にした途中で、フブキがサムズアップしたまま倒れていることに気付いて驚いた声を上げる。
「ミオ・・・白上は世界の心理に触れた、ぜ・・・がくっ」
「ふっ、フブキーーっ!!?いや、意味わかんないからっ」
やり遂げたような顔をしてそう口にするフブキに、ミオは大きな声で名を呼んでから冷静にツッコミを入れたのだった。