ゲート 蒼い鋼が何故そこに……   作:サソリス

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女神との遭遇なプロローグ

「あなた――――」

 

「なるほどね、完全に理解したわ」

 

「は?」

 

何処からどう見ても神聖とか神秘的とか付きそうな空間。そこで半裸な多分世間一般的には絶世の美女っとか銘打たれそうな女性の言葉を遮った俺の悟りの呟きは何とも重々しいびみょーっな空気を作り出した。

 

仕方ないじゃん、俺ってば転生モノ大好き侍なんだもん。んで、女神さんよぉ―。どうせテンプレってなお決まり通りに俺の心声駄々洩れなんだろ? そんな【え、何でこの人惨たらしくトラックにひかれてひき肉に成りながら死んだ後なのにこんなにも冷静なの!?】ってな目線で俺を見るんじゃないよ。そんな暇あるのなら説明の続きをプリーズ。

 

 

「え、えぇ。すいません、取り乱してしまいました」

 

こほんっと咳払い一つ行い場の空気を変えると彼女は語る。さぁさぁ来い、テンプレッ。

 

「有体に言えば確かにあなたの想像している状況ではあります。しかしながら今回に関しては少々状況が異なるのです」

 

テンプ、レ?

 

「まず貴方の死因ですが私の失態による事故ではなく、○○〇……人間に分かる言語で表した所の下位に当たる死神の不手際が原因です」

 

テンプ……

 

「本来なら貴方はそのまま死に、死後の世界に行く予定でした。しかし、先ほど話した下位の死神があろうことか魂の運搬中トラブルを起こし結果沈ませてしまいました」

 

テン……

 

「その結果積み込んでいた魂達は三途の川へ。その後に行ったサルベージ作業では幸いな事にほとんどの魂を回収する事が出来たのですが一つだけ、貴方の魂だけが何処か遠くへと流されて行ったらしくサルベージに失敗してしまい行方知れずに……って聞いてますか?」

 

オレ、テンプレ、ダイスキ侍。テンプレ、チガウ、カナシイ、カナシイ。

 

「き、聞いているようなので話を続けます。―――白色に成りながら何故ブリッチを?」

 

真っ白く燃え尽きたぜ。具体的に言うとタバコの灰のようにな。あとブリッチは気分でしてます、気にしないでください。

 

「そ、そうですか‥‥‥‥話を戻しますが、その結果を聞き対処に困った最高神は事態の収拾の為に関係各所の神々を招集、人間の時間で換算し300年ほど話し合った結果魂の回収を諦め、転生させる事となりました」

 

「テンプレ、キタコレ!

 

オラぁぁぁぁぁぁぁ!! 途中から何を言っているのか全然理解出来てなかったけど転生って言葉で俺のテンションfullMaxじゃぼえぇぇぇ!!!

ぐわんっと腹筋と腰で起き上がるオレ。その急な行動に対処できなかったらしい女神様の顔と後数センチでファーストきっすな、超近距離だが俺はそんなの気にしねぇ。だってテンプレ大好き侍だから!

 

「で、で、で、何処に転生!」

 

「うぉ! ち、近い」

 

すぐさま離れる女神さん。その顔は真っ赤に染まり傍から見ても恥ずかしそうな感じで……ッポ。

 

「って、貴方が照れてどうするんですか!」

 

ソイツはごもっとも。両手でバッチンッ!!っと気合入れして俺は正気に戻った。アブねぇ、危うく三次元の女に恋するところだった。三次元の女は基本クソだからな、俺は二次元の女に恋するんだ。

 

「感情から強い怒りや悲しみなどを感じ取れます……容姿は普通ですのにどうしてあなたのような人がそのような感情抱いているんですか……」

 

色々あったんですよ、色々。

 

「んで、んで、女神さんよ。俺はどんな世界に転生するんだい?」

 

ファンタジー系のお決まりテンプレ世界かな? それとも乙女ゲーやギャルゲーなどのゲーム世界? そう考えると性転換(TS)して悪役令嬢役も悪くない。でもでもSF系の世界もすてきれなぁ……あ、でもやっぱり王道、つまりテンプレで考えるにファンタジーは必須だよねぇ~

なぁーんて脳内巡らせてると女神さん、突然俯いて暗い雰囲気醸し出し始めた。どったの、ぽんぽん痛い?

 

「―――です」

 

ん? ゴメン、ちょっとお兄さんの耳でも聞こえなかったもうもう一回頼む。

 

「ファンタジーは無い、です」

 

……って事はSF世界か! やったー! ファンタジー無いのは残念だけどSFって言ったらやっぱり宇宙! 宇宙は男のロマン、これだけは外せねぇっし外したくない。あぁー、俺ってばゲームだと探索勢だからオープンワールド系のゲームだとマップ探索がメインになるんだよなぁ。そんな俺だからこそ未探索の惑星や宙域なんかを探索する職業にもってこいだぜ。ハァ、ハァ、ハァ。やべぇ今から興奮してき――――

 

「確かにSFですが宇宙は無い、です」

 

――――た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……宇宙はない?

 

「ハイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

……宇宙船も?

 

「ハイ」

 

 

 

‥‥う、宇宙人も?

「……は、ハイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

‥‥‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁくッ!」

「し、死んでる方から死ねって言われた!?」

 

 

 

まーじかマジか、宇宙無いSFとかSFであらず。確かに俺の記憶では蒼き鋼のアルペジオとか地球を舞台にしたSFチックな作品もあるが、正直俺は無理だ! だってSFだぜ、宇宙だぜ。俺はあの広大な未探索の場所へと行きたいんだぁぁぁぁぁ!!!

思わず涙がちょちょ切れ、洪水のように溢れ出してくる。だってさ、俺ってば小さな頃の夢は宇宙飛行士だったんだぜ。そんな幼少のころの夢が叶うかもって希望も持っちまったら誰だって縋り付くだろうよ。そんな感じで泣いてたら女神からの一言で俺は思考が停止した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ハイ。その蒼き鋼のアルペジオの世界です」

 

……すまない。俺の耳が等々はレコンギスタを起こして使い物にならなくなったようだ。もう一度、ハッキリとした声で頼む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蒼き鋼のアルペジオの世界へと貴方は転生されます」

 

 

 

 

 

……オワタ。

 

 

「何故だ!」

 

確かに作品としてはかなり好きな分類に入るがあの世界はアカンッ! あの世界は海に出る人間にとっては地獄ゾ。もし戦闘艦に乗り込んで外洋に出ようものなら紙よりも軽く命が消し飛んでしまってもおかしくない。何でそんな世界に俺が転生しなきゃいけねぇだ!

……いやいや、でもだでも。考えようによってはかなり安全に暮らせる可能性だってあるぞ。つまりは海にさえ近付けなければ良い事。なんならその世界の未来だってある程度は把握している訳だしうまく立ち回れば一攫千金、大金持ちだって夢じゃねぇ。それにあの世界ではSSTO、つまりは宇宙へ行くことだって割と容易に行くことが出来る世界だ。その世界の混乱の原因である霧の艦隊関係の問題を主人公がちゃちゃっと解決した後に俺の夢は叶える事も出来る……アレ、そう考えると割と有用物件なのでわ? でもなぁ……下手したら海に駆り出されて死んじゃう可能性もあるしなぁ、困った。

 

 

「安心してください。貴方はそんな運命は辿りません」

 

ほ、それはよかった。つまりは俺は海に出る事は無いし、主人公が巻き込まれるゴタゴタなんかにも関わらずに済む――――

 

「その世界では主人公である千早群像は死産する予定ですから!」

 

――――マージカ。

 

俺はその事を聞いて再度ブリッチ体勢へ移行、特に意味は無い。そして心の中でこう叫ぶ。

 

 

……そんなの聞きたくないし何処に安心する要素があるですかねぇぇぇぇぇぇ!!!

 

「この駄目な女神、略して駄女神ッ! 俺の安堵を返せ、コノヤロぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

オラぁ! 何故か近くに置いてあった座布団の投擲を食らいやがれぇ! 

 

 

「ハイクヲヨメ、必殺ッゲッタァァァァァタマフォォォォォック、ブゥゥゥゥゥウメランッ!!!」

 

俺の華麗なる投擲技術により放たれた正方形の座布団。それは功を描き飛翔、クルクルと回転しながら正確に美しき容姿である女神の顔面へとクリンヒットを果した。

 

「ぎゃぷらんッ!」

 

「ナムサンッ!」

 

これにて悪は打倒され、世界に平穏と平和が訪れた。再度悪が満ちる時彼は再び、平和を取り戻す為に動き出すだろう。頑張れニンジャ、負けるなニンジャ、これからも彼は戦い続け悪を滅ぼし続けるのだった。

 

 

 

 

 

・完・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……説明の続きをしてもいいですか?」

 

「ハイ、すいません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一通り茶番を終えた俺達はいつの間にか用意されていたちゃぶ台を挟み、先ほど投げつけた座布団を敷いて座った。

いやー、思わずやった事とは言えあんな茶番に女神が付き合ってくれた事に感謝感激雨霰ですよ。

 

「いえいえ、貴方の理不尽に思うその気持ちを払拭出来たのならば私も本望ですよ」

 

「流石は女神、器がデカい」

 

そして持ってるお茶碗の大きさもデカい。あれでお茶飲むつもりなのか……お茶大好きウーマンかよ。あ、俺の分のお茶も用意されてた。普通の大きさだ。

 

「それで話は戻しますが貴方はには先ほど言った通り蒼き鋼のアルペジオの世界へと転生してもらいます」

 

「はい、それに関しては諦めました。理由なんかを伺っても?」

 

「実はあの世界へ行く予定の魂が丁度貴方でして……転生する都合上、予め割り振られた世界しか行けないですよ」

 

「なるほどなぁ」

 

ぐびーっとお茶を一口。ほろ苦い感覚が舌を支配するけど、美味い。コレは良い茶葉を使ってんな?

 

彼女の説明から考えるに魂は有限なんだろう、でなきゃ予定とか組まずに新しい魂なりなんなり生成するはずだからな。んで、これまで読んできたラノベや漫画、アニメの設定から考えるに恐らく死後使い終わった魂をクリンナップして白紙に戻し言い方は悪いが他の世界で新たな生き物の魂としてリサイクルっと。こんな感じだろうな、そんでもって今回の場合はトラブルが祟ってクリナップする事の出来なかった俺をそのまま転生させる予定だった場所へ転生させ予定の狂わないように調整する事になり、てんやわんやってところだろうな。

 

「……まったくもってその通りです、こちらの不手際で申し訳ありません」

 

いや、直接関係ない貴方に頭を下げられてもこっちは困るだけなんだけど……ってマジでこのお茶美味いな。転生先に包んでくれないだろうか?

 

「分かりました。この茶葉は私もお気に入りの物なのでそう言ってもらって私も嬉しいです。とりあえず、月一で転生先に届くよう手配しておきましょう」

 

「ありがとうございます」

 

ずびーっとお茶を再度一口。でも腑に落ちない。俺が転生先を選べない理由は分かった。けれど、さっき女神が言っていた転生先の世界で主人公をキメる予定である千早群像が生れる所か死産で文字道理死ぬ理由が分からない。彼女の言い方から俺自身が千早群像への魂だった予定では無さそうだし、一体どうして?

 

「……逆です。貴方が生れるからこそ彼が死んでしまうのです」

 

「俺の、せい?」

 

思わず湯呑を落としそうになる。一体全体どういう理由があってそんな事に――――

 

「―――実を言うと貴方の転生先は千早群像です。結果的に言えばですが」

 

「結果的に? 詳しく」

 

「あなたは本来の千早群像と双子の兄弟となるべく生まれる予定となっています」

 

「ですが、母体である千早沙保里の体では双子の出産には耐えられない」

 

「貴方を取り上げた直後、容体が変化し結果的に母子共に死を迎えます」

 

「そして唯一無事に取り上げられた貴方が千早群像と言う名を与えられる事に」

 

 

「―――」

 

唖然ってのはこういう事を言うのだろう。死ぬ前から家族になる予定の人の死が決定付けられ生きる前から寂しさを、悲しみを経験する事になってるんだろうか。

 

「……残酷な事だけども納得は出来る」

 

確かアニメ版だと父親が死んだショックな何かで自殺したって設定であったし、彼女は死ぬ運命なんだろう。けどなぁ……兄弟に関して納得いかないよなぁ。

 

「なんとか兄弟を、本来の千早群像を生かす事は出来ないのか?」

 

俺の質問に答えるのが辛いのか、暗い表所を浮かべて先ほど同じく俯いた。そしてぽつぽつと語り出す。

 

「できなくもありません。ですが、その場合物語が予定されているシナリオ通りに進まない可能性があります」

 

「そして物語は彼、千早群像中心ではなく貴方中心に、貴方が起点となって進む事になってしまいます」

 

「それでも良いのですか?」

 

主人公の交代、シナリオの変更、アドリブ前提の舞台演技。やっべ、夢にまで見た主人公だー わーうっれしー。俺ちゃんがんばっちゃうぞー!

 

「いいのですか。貴方は本来背負わなくても良い負担を、宿命を背負う事になるんですよ」

 

「上等、それもまたテンプレだ」

 

本来の主人公と変わって別の人物が、転生者が主人公となるのもまた王道。それに俺が頑張る結果、1人の人間の命が救われるってんだから頑張るしかねぇーでしょう! それに――――

 

「兄弟か、胸が熱くなるな」

 

――――生前では一人子だったからな兄弟ってのは昔から憧れがあったんだよな。だからこそこれからマイブラザーとなる兄弟を救う為ならなんだって出来るぜ。

 

「……わかりました、貴方の意志は変わらないようですね」

 

女神さんは立ち上がる。それと同時に彼女の頭上から光が差し込み彼女を幻想的に照らした。そして俺達の間にあったちゃぶ台は何時の間にか姿を消し、俺の下へゆっくり歩み寄ると両手で頭を包むように手を差し伸べて来た。

 

「貴方はこれから様々な事に巻き込まれ、苦悩し、絶望もするでしょう」

 

「ですが忘れないでください」

 

「貴方には特別に加護を与えます」

 

「これは貴方にとって優位に働き、貴方を大いに助けてくれるでしょう」

 

「だから決して諦める事だけはしないでください」

 

意識がかすれ、彼女の声が聞き取りづらくなる。さっきまであった体の感覚は麻痺し、どんどんと自我が薄くなっていくのがよくわかる。多分次目覚める時は転生した後だろう。自分が自分じゃなくなるのは中々に気持ちの悪い感覚だけども案外これも例えるならそう、泡ぶろに浸かって体が溶けるような感覚って感じかな。だけどもほとんど意識が解ける中でもハッキリとこれだけは聞こえた。

 

 

「私はあなたを見守ってますよ」

 

 

世に言う女神のささやきってやつがね。

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