「それにしても伊丹隊長、この人どうします?」
「どうするってそりゃ、助けない訳にはいかないでしょう」
俺、伊丹耀司はどういう訳か異世界でやる気も無かった隊長なんかをやってます。クソ、ホントは今頃同人誌即売会やトラメイトで買った同人誌を読み漁ってる頃だったって言うのに……何でこうなったんだか。異世界──―じゃなくて特地に来た
「でも伊丹隊長、あの格好ってどう見てもスーツですよね?」
「だよなぁ」
治療の為、切り裂かれた衣服を俺も触ったが覚えのある感触だった。何なら最近感謝状をもらう為に着たしね。
「だったら──―」
「言うな倉田。あんまりそう言うのは考えたくない」
倉田の言わんとしたことは十分に分かる。彼が工作員か何かと言いたいんだろう。これまで見て来た村はどう見ても文明が数段遅れた、言ってしまえば中世の頃を思わせる生活をしていた。けれど、このエルフと一緒に引き上げられた背中に大怪我を負った男性は違う。この男性はどう見ても俺達と同じ、門の向こうの人間だ。現在、この特地に足を踏み入れているのは一部の学者さん達を除き自衛隊員だけだのはずだ。それに加えこのコダ村の近くにあったこのエルフの村は俺達が初めて訪れた未探索地域。だからこそそんな場所でこんなスーツだなんて格好は本来あり得ないんだよなぁ。何ては話をしながらも会話は逸れてもう一人の要救助者であるエルフに移り、どのエルフが一番尊いかを語り合っているとキョロキョロと誰かを探す隊員の1人を見つけ、声をかけた。
「栗林」
「あ、隊長! 探しましたよ」
え、さっきから倉田と二人で話してたのは気付かなかったのかな?
「何で探すハメになったかはあえて聞かないが……それについて何か分かったか?」
「何って言われても何にも分かりませんよ。単なるおもちゃじゃないんですか?」
そう言って放り投げてくるは彼の耳に付いていた、多分イヤホンか何かだと思う物。重さは不自然なほど軽くてまるでスライムのような感触なのに全くべた付かない不思議な、見た事もない素材だ。
だから素材が不明なコレが危険物でないかを確認する為に軽い分析を俺の隊員の1人である栗林に頼んで、預けていたけど帰って来た物と言葉はまぁ案の定の内容だった。だよなぁー 栗林ちゃんでもわっかんないよねぇ。
「ってか隊長、何で私にまかせたんですか???」
「んー何となく?」
「駄目だ隊長、何とかしないと」
そう言っておもむろに懐からトンカチを取り出すの止めてくれない! 俺は一昔前のドラム缶テレビと誤認してる疑惑が出た栗林を再度怖いと思いながらも話を続けていくと不自然に言葉を止める。
「でも」
「でも?」
「アレ、強度だけはスゴイですよ」
そう言って指さす方へ目をやると
「キャリバーよーい」
「弾倉よし、給弾ベルトよし、安全確認全てよし」
「う──―」
「何しての二人ともぉぉ!!!」
腕を下げる直前だったおやっさんの言葉を遮り、俺は大型の同人誌即売会名物早朝ダッシュの如く走った。
「え、だって栗林が「隊長が耐久試験をしろってさ」って言ってたので……」
「だからって
「え、でも既に
「既に手遅れだった!」
さっきから騒がしかった理由はそれか! 捜索活動の為の物音だと思ったけどまさかまさかのぶっ放した時の音だったなんて気付かなかった! ってかアレって確か一発日本円で120万ぐらいしたよな……帰ったら柳田に怒られる、絶対怒られる。
「ってかおやっさん、何で止めてくれなかったの……」
最年長であるおやっさんこと桑原さんに抗議するけど────
「……」
「何故目を逸らすんです?」
オイコラ最年長。何故今子供っぽい素振りを行う。それでも倉田が言っていた鬼の教官ですか。
「……一つ首のキングギドラの影響で昔を思い出してました」
アレか。社会人が懐かしいゲームとかを見て調子に乗っちゃう、そんな感じ? テンション振り切れちゃったかー
なんて呆れながらも一応は隊長として適当に注意しながら撤収準備とあとかたずけを命じその場を後する。何故厳重注意をしなかったと言うと俺も同類の人間だからさぁー。いやーリアルドラゴン、テンション上がるねぇ。
「ってか、
あれって確かいくらか割と爆薬が詰まっていて貫鉄は700㎜あったよな。それで壊れないってどれだけ硬いんだよ、なのに柔らかいとか一体全体何で構成されてるんだろうな。
その途中もう一台の
「隊長。男性の容態、安定しました」
「ほ、それは安心だ」
エルフの方は長時間水に漬かっていた影響で低体温症に。あの怪しげの男性は重度の火傷で死にかけの状態だった。だからこそ看護資格を保有する黒川に頼んでたが、何とかなったんだな。
「エルフの女性の方は隊長の影響で出来た漫画のようなたん瘤はともかく、下がりに下がった体温は徐々に回復していってますので問題無いでしょう。男性の方は重度の火傷が背中の大半に広がり、正直生きてる事が不思議な状態でした。しかし井戸へ落ちた事と一緒にいた彼女が施したと思われる治療が幸いしているのか分かりませんが奇跡的に私達が発見するまでに命を保てたと予想します」
「そっか」
何もない井戸の中で治療、ね。エルフやドラゴンとかがこの世界には存在してる訳だから魔法とかもこの世界にはありそうだねぇ。いやー、楽しみだなぁ。
「ま、あるかどうかは本人達が目覚めた後に聞けばいっか」
【い、伊丹隊長】
無線機から俺を呼ぶ声、誰だろ?
「どうした」
【こちら笹川】
その無線機から聞こえる声の正体は村の端を担当し、生存者の捜索している笹川。だけど変だな、笹川の声は
【落ち着いて、聞いてください】
「一体どうしたんだ。まさかドラゴンでも見つけたってのか?」
軽いジョークを飛ばすも笹川の雰囲気は一切変わらず、何となくその声は動揺していると感じ取れた。
【信じられない物を発見しました……】
「? わかった。とりあえずそちらへ向かう、細かな座標を――――」
「なんでこんなところに潜水艦が……」
村の端、ドラゴンの炎によって倒壊したと思われる焼き焦げた倒木に隠されるかのようにそれは存在した。
横たわるソレの長さは目測100m以上を誇り、灰色に染まった抵抗を感じさせない流線形の船体は地上ではなくまた別の環境に特化しているように見える。それもそのはず、その横たわる物は正体は本来水中に潜む狩人、潜水艦なのだから。
思わず被っているヘルメットを脱いでコレが現実化と頭をかいてしまうほどの非現実的な光景。そんな俺とは別に一緒にこの潜水艦の確認に赴いた倉田は何処か目をキラキラと光らせながら、まるで新しいおもちゃをもらった子供のように喜んでいた。
「凄い、本物のイ号四百型潜水艦がこの目で見られるなんて……」
「知ってるのか倉田」
「はい、それはもちろんなんですが……前大戦末期にあったとされる潜水艦──―いや潜水空母がどうしてこの特地なんかに……」
それから倉田から聞いたこの潜水艦の話はこうだ。
この船の名はさっきも倉田イ号四百型潜水艦。第二次世界大戦時に日本海軍が作り上げたとされる当時世界最大の潜水艦でその航続距離は理論上と言う建て前は付くものの、地球を一周半という広大な距離を無補給で航行出来た凄い船だったらしい。最終的に全3から4隻が建造されたそうなんだがその全て今の時代には現存しておらず、海の中に沈んでいるとの事。だからこそ彼にとっては今目の前にある事が信じられない語ってくれた。
「しっかしこの事、どうやって上に報告したものか……」
あぁー檜垣さんの叫ぶ声が頭に浮かぶぅ。唯でさえ無駄使いした
「とりえあえず……帰るか」
問題の先送り、コレが今の俺の答えだ。だって仕方ないでしょ。もう現場で対応出来るレベル軽く超えてるんだよ。だからこの事は上に任せるしかないって。だけども、まったく報告しないのもしないので後で何を言われるか分からないので一応は写真だけ撮っておく。報告書と一緒に写真もセットで上に送り付ければ何とかなるだろうって我ながら安直な考えだけど、仕方ないよね。
「そんじゃ一度コダ村に戻りますか」
各員乗車し、俺達は一度コダ村へ引き返す事になる。
流石に怪我人二人も連れてあと2、3の村は回れるわけも無いので当然の行動ではあるんだけど本部に連絡したらすんなりと要望が通ったもんだから驚きだ。あれかな、最初に潜水艦を発見しましたーって感じでインパクト強めの報告をした影響かな?
まぁそんな訳で俺達は
ここで俺が乗る
まずは運転手。俺と同じオタク仲間、倉田!
助手席、エルフの女の子がいつ起きて来るかとワクワクしている俺! 後部座席には全体指揮を担当する最近特撮趣味が再燃しつつあるらしいおやっさん! 保護したエルフと男性を看病する為に乗車したうっかりミスで部隊の皆に男装の演劇好きが露見してしまった黒川! 本日の主役にして要救助者、今だ目覚めぬ謎のエルフの美少女!……っと、背中に大やけどを負っている謎のスーツAだ。
うんー、俺も含めてキャラが濃い。まるで王道主人公の仲間達のようだな。
「って何考えてんだろ、俺」
「どうしましたか伊丹隊長」
「何でもないよ。お前はきちんとメイコの歌でも歌いながら運転してろ」
「えぇぇ、何で僕怒られたんですか……」
車は進むよ何処までも。まぁ今回に限ってはコダ村までだけどね。