「なるほどなるほど。そちらさんは別世界、それも日本の陸軍さんであると……へぇー」
「虹像、リンゴ」
「イオナさんきゅー……ウマー!!!」
「後自衛隊はこちらの世界にも存在していた」
「……マジで?」
「マジ。具体的には2040年まで存在していた」
俺が目覚めた後、駆け付けて来た明らかに軍人さんっぽい見た目の人にチェンジコールすると昔相手した陸軍のお偉いさんみたいな人と共に俺の相棒であるイオナが来てくれた。しかし別世界の、それも温暖化の影響で沈む前の日本か……データでは知ってるが具体的にどんな感じだったんだろうな???
「ヘぇー、知らんかったなぁ」
「海洋学園のカリキュラム内の歴史の授業にて習ったはず」
「おうおうおうイオナさんよ……毎年成績最下位だった俺への当てつけか、あぁ???」
イオナから珍しく喧嘩を売られたのでそれを買ってその綺麗な髪をぐちゃぐちゃにしてやろうと右手を伸ばそうとしたが、イオナと一緒に来た確かハザマ……とか言ったかな。渋い明らかにお偉いさんって顔の軍人さんの咳払が響いた。あ、忘れてた。
「再会の感動も分かりますが、私の事を忘れないでいただきたい」
「そーでしたね。すいません」
さてさて、イオナからもらったリンゴをパクっと食べ終えると痛い体を起こして狭間さんと目を合わせる。うんー、良い目をしている。コレは強い戦士の目だな。これから始めるのは恐らく交渉だ。今回は同じ日本人同士ではあるが別世界の人間相手の交渉だ、気を引き締めてやりますか。
「それでは改めて……統合軍アジア方面特別艦隊【蒼き鋼】旗艦特殊潜航艇イ号401艦長、千早虹像です。この度は私の救助や船体及びクルー達の身柄を一時的とは言え受け入れて頂き感謝します」
「私はイオナ。感謝する、ハザマ」
ビシッと久しぶり敬礼し、過去に振動魚雷を輸送する為もらった一応正式な俺の身分を話しながら彼へと感謝の意を述べる。するとハザマは同じくビシッと見惚れるほど綺麗な敬礼をした。
「日本国陸上自衛隊、陸将の狭間です。こちらも大事な部下を助けて頂き、感謝します」
さて、自己紹介も終わった事ですしジャブ飛んで本命ぶっ放すか。
「それではハザマ陸将、率直に聞きます――――あなた方は私達に何を求める」
俺の船であるイオナを渡せだの侵食魚雷を渡せだのいつも道理の要求が来るかなーっと予想して居たんだがこの質問をした途端、ハザマは目に見えて困ったような表情を浮かべる。お、こりゃ珍しい。単なる直感だが、これまでと違う交渉になりそうだ。
「実は我々も貴方達の扱いに関しては決めかねているのです」
「決めかねている……ですか」
「はい」
ほーん。コレは珍しいパターンになりそうだ。
「言ってしまえばあなた方の持つ技術はその一端でさえ私達にとってはSF――――」
「まぁ確かに」
霧の技術は俺達の世界の人間にとってもSFの塊みたいなやべーモノだ。その艦艇の艦長である俺が言うんだから間違いねぇよ全く……そりゃ扱いにも困るもんだ。下手に刺激するとどんなシッペ返しが来るか分からないからな。つまりアレか、今回の交渉で有利なのはこっちなのか……初めての経験だなぁ。
「――――ですので逆にお聞きしたい。あなた方は我々に何を求める」
ま、マジか。この人、俺の言った事を丸々返して来やがった。
始めての経験で困った俺はとりあえず、リンゴを切り出したリアルな造形の兎を作りつつあったイオナに耳打ち。
「……イオナさんやい、参考程度に聞くけどこの基地を再起不能にするまでの時間は?」
「5.23秒」
ヒュー 前に陸軍を相手にした時は1分って言ってたのにこの人達相手ではそれ以下かよ……これはアレだな、恐らく今この基地に配備されてる自衛隊戦力は低いのか?
「おいおいイオナ、それはいくら何でも短すぎじゃね? 岩蟹とかそんなに配備されねーの、此処」
「この基地に配備されている陸上兵器は主にキャタピラを使っている戦車と呼ばれる兵器。前に対象とした統合軍陸軍が約40年以上も前に採用していた時代遅れのモノばかりだった」
「マジか、霧以前に技術体系そのものが俺達と開きがあるのかよ……」
これじゃ下手に対価として報酬渡せねぇージャン。下手したら通常魚雷一本でもこの人達にとってはオーバーテクノロジー扱いにされそうだ。俺は色々と考えるが答えは出ず、結果素直に今欲しいモノを述べる事にした。
「とりあえずは船体を保管できる簡易的でもいいので水の張れる艦ドック、そして俺達の身柄の保護とそちらの日本……いや、地球の状態が分かるネットワークの開示を求める」
「艦ドックに身柄保護、情報開示ですか……」
色々と無理があるかなーっと思ったがハザマはこれを了承する。マジか、艦ドックに関しては断られると思ったのに……予想外だぜ。
「分かりました。直ぐに用意しましょう」
全て了承され俺ちゃんビックリ。こんなにあっさり要求が通るのは逆に怖ぇ……後に何要求されるか分かったもんじゃねぇからな。こりゃ一つ制限を設けとくか。
「……あと対価に関してはそちらの開示してくれる情報次第でこちらで決めます」
「と、いいますと?」
「どうやら俺達のいた世界とそちらの世界とでは科学技術そのモノにかなり開きがあるようですからね」
そう言うと少しばかり何かを考えた後、何処かしぶしぶと分かったと意思表示。やっぱり何かヤバイ要求でもするつもりだったのかな??? 制限を設けて正解だぜ。これにて俺にとっての最初の交渉が終わった。さてさて、俺達は異世界の日本政府に何を要求されるんか―――――そしてハザマが俺の寝てる病室から出た後。
「あ、そういえばテュカは無事だった?」
「ほとんど無傷。虹像が大怪我してまで庇ったお陰」
「え"、俺ってばそんなに大怪我してんの!!??」
俺自身の状態を知ったのだった……えぇ、俺ってば重症じゃねぇーか。こんな怪我をしたのはイオナと深海へGOした時やナガトとムツを相手した時以来だぜ。