ゲート 蒼い鋼が何故そこに……   作:サソリス

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頭が痛くなる……難しくなる。


【12】

「ハァ……どうしてこんな事になっちゃったんだろうね」

 

 伊丹耀司、彼は青色の巨大な船体を前に先ほど友人である柳田二等陸尉に言われた言葉を思い出す。

 

※※

 

 あれはアルヌスの丘に帰還し、手違いでコダ村の難民と途中で拾った神官、そして潜水艦を拾って来た事にお説教を受けた帰りの事。声をかけられ、振り返ると綺麗な夕日の見える隊合の物千場に設置されたベンチに腰掛ける柳田の姿があった。彼の側へと立ち寄ると彼はタバコを吹かしながら、何ともまるで苦いモノを噛んだような表情で彼は語り始める。

 

「伊丹お前、この特地以上の爆弾を持って来たな……一体どうするつもりだ?」

 

 特地以上の爆弾。最初伊丹は柳田の言葉にピンとこなかったが、自身の連れて来てしまった少女達の事を思い出し伊丹は大げさなっと笑った。しかし、それを語る柳田の目は真剣であり、徐々に不安が大きくなっていた。

 

「難民だけならまだよかった」

 

 タバコを口へ運ぶ。大きく吸われ、吐き出されるはため息混じりとも取れるほど大きなモノだった。

 

「遅かれ早かれ現地民との交流は深めなきゃならなかったからな。俺達裏方にとっては当初に組んでいた段取りが狂うから正直止めて欲しいが、言ってしまえばスケジュールが単純に早まるだけだ……だがな────」

 

 言葉をそこで止めると短くなったタバコを灰皿へ押し付け火を消して捨てるとベンチから立ち上がり、フェンスにもたれ、新しいタバコへと火を点ける。

 

「────アレは例外だ」

 

 彼が目線を送る対象。そこには伊丹自身が拾って来た────っと言うより連れて来た潜水艦が戦車や機動車と共に鎮座する様子が目に入った。陸上の乗り物の中に青く輝く船が混じる姿は現実離れしており、異質ともとれた。

 

「この特地は言ってしまえば宝の山だ。これまで集めた情報の一つをとっても地球の環境に似ていて、原生生物も地球に生息している生き物に酷似した遺伝子構造をしている。恐らくだが、人間に酷似した種族同士だったら交配も可能だろ……公害も無い、環境汚染も無い、無政府状態の未開発の土地が広々と広がる世界。見た事も無い植物に加え、当然地球では滅多に取れないレアメタルなんかの鉱石資源もわんさか地下には埋まってるだろ。俺達から見て現地民との文明格差もアリと巨人ほど離れてるほど有利だ。そんな土地への門が日本へと開いたのは幸運とも災厄とも言える。当然日本と関係深い海外系の株価は軒並みストップ高で鉱石系は徐々に下がる一方。議員連中は重役どもと連日勉強会に加え、世界中からの問合わせに外交官は天手古舞、国連の総会ではこの特地を各国合同で管理するべきと言う意見まで出ている。捕鯨問題程度だったのなら伝統的な食文化を守る為だと銘打って日本は突っ張れただろうが、ここまで大きな問題になって来ると今の日本では力不足だ。上の連中は知りたがってるのさ。この特地は世界の半分を敵に回してでも価値があるモノなのかっとな……けどな伊丹、それ以上の問題を起こしてどするよ」

 

「問題、そんな大げさな――――」

 

「大げさにもなるさ。なんたって俺達の地球から見ても十分オーバーテクノロジーの塊である潜水艦を拾ってきちまったんだからな」

 

 再度煙を吸い込み、やはりため息混じりの煙を吐く。しかし先ほどよりも大きく、そしてどこか深い息だった。

 

「まだ文明的に大きく離れていて会話も通じず、分析すら不可能だけだったらまだよかった……けど、アレはどう見ても意思疎通の出来る兵器だ。そして彼女らと少し話た結果ではあるがアレに搭載されている通常兵器だったら俺達も解析、生産する事が出来ると来ているらしい。分かるか、伊丹。アレは言ってしまえば厄災を呼ぶ箱、パンドラの箱と同じなんだ。もしあの潜水艦の詳しい内容が他国の大使や全国に潜んでいるだろう工作員やスパイ達の耳に入ってみろ。これまで結んで来た条約なんて全て無視してあの未知のテクノロジーの塊を奪取する為、世界中の軍隊やテロリストどもが血眼で日本へ進行してくるだろうさ。もちろんこれは同盟国であるアメリカも例外じゃない。むしろその同盟国と言う肩書を良いように使い、なんやかんやと理由を付けて日本へあの潜水艦を引き渡せと各国は圧力をかけて来るだろうな、きっと。それほどヤバすぎる劇物なんだよ、あの潜水艦の価値はな」

 

 あまりの事の重大さに伊丹は驚きながら何となく眩暈がした気がし、思わず両目を抑えてしまうが柳田の話は続く。

 

「ただでさえ今の伊丹の立場はこの特地において重要視されてしまうほど特殊な立場に成っちまってるんだ。これ以上日本を超えて世界中にとって重要な人物の仲間入りをしてどうするよ」

 

「ど、どういう事なんだ?」

 

 冷や汗を額に浮かんで来た事を感じながら伊丹は珍しく緊張した様子で柳田へ問う。すると柳田は短くなったタバコを放りながら、愚痴をこぼすかのように語り出す。

 

「さっきも言っただろ特地での一番の価値は情報だ。その情報をお前の立場だったら他の隊員とは違って軽々しく現地の人間に聞く事が出来る立場でもあるしそして、あの潜水艦に至ってはお前は彼らにとって大きな恩を貸している恩人なんだ。なんたってその価値の塊である少女達が一心に信頼を向けているあの船の艦長を偶然とは言え助けちまってるんだからな。下手をすればお前が彼女らに尋ね、提供を促した技術一つでそれを巡って第三次世界大戦すら起こる可能性があるんだからな」

 

 思わず息を飲んだ。伊丹自身の行動によって世界中を巻き込んだ戦争が起こる可能性があると知ってしまったのだから。

 

「だから覚悟をしておけ伊丹。お前には近日中に大幅な自由行動が許されるはずだ。どんな任務、どんな目的になるかは官僚たちしだいだがどんな文面がならんでいようとお前へ課せられる目的は大きく分けて二つ。この土地を情報をだれよりも集め、そして彼、彼女らのご機嫌とりだ」

 

「……ハァ。なんでこうなったんだか」

 

 思わず自身の運命を呪う伊丹。だがそれは柳田も同様だったようで同じように遠い目をしていた。

 

「いままでは税金でのんびりしてたんだ。ちょっとは真面目に働く事だな」

 

「しくじったら世界大戦なんて何てラノベですかね……」

 

 思わず伊丹はこれまで読んだライトノベルの内容と自身の状況がソックリな事に大きなため息を吐いてしまうのだった。

 

※※

 

「ハァ……本当にどうしようかね」

 

 思考の海から浮上した伊丹は頭を欠く。自身がこんな風に重要な立場になるとは夢にも思っておらず、何故このようになってしまったのかと特地勤務になった事を後悔しながらも、目の前に存在するSFの塊である潜水艦に心を躍らせる。

 

「401から概念伝達を確認。艦長が目覚めたぞ400」

 

「402こちらも401からの報告を受信した。これはテュカへと報告した方がいいだろうか?」

 

「肯定する。彼女は艦長の身を最後まで心配していた。精神的に不安定な彼女を安心させるには必要不可欠と考える」

 

「了解、私はテュカを探してくる。402は伊丹を頼んだ」

 

「了解した」

 

 そして潜水艦の甲板にて鏡の如く瓜二つの少女二人の様子を遠目で見てしまった伊丹はこちらへ向かって来る402の言葉へ耳を傾けるのだった。

 

 

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