「危ない、ムシャムシャ、ところを、ムシャムシャ、助けて頂き、ムシャムシャ、礼を言います伊丹さん、ンッゴクン。なぁイオナ、このリンゴ前に食った時より美味くない?」
「栄養豊富な土地にて育った果実。軍の横領品であった前の物は新鮮さが足りなかった為にそう感じているだろう」
「中国軍は隙が凄かったからなぁ……」
「あ、あはは……」
イ402に呼び出された伊丹は彼女らが信頼を置いているという人物が目覚めたという事で彼の元へと赴く……が、当の彼は自身を連れて来た彼女と同じような容姿のイオナと呼ばれる少女から何とも羨ましい事にあーんっとリンゴを食べさせられていたのだった。
「艦長。伊丹が戸惑っている。目覚めたばかりでお腹が空いているのは理解できるが、食べるのを一時止めて欲しい」
「おぉ確かにそうだな402、スマンスマン。どうしてもお腹が空いてね……ごめんなさい、伊丹さん。せっかく来ていただいたのに」
「け、怪我した時はお腹すきますもんね。仕方ないですよ」
アハハと虹像は笑いながらイオナが持つリンゴを遠ざけようとするが――――パクっとその開いた口に割と無理矢理突っ込まれた。そして突っ込まれた本人は何かを察し、遠い目になる。そしてその瞳は確実こう語っている、また始まったかっと。
「402、現在虹像には傷を癒すため栄養が必要。よって食事する事が最優先だと考える」
「401。その意見は理解出来る、が現在は艦長の命の恩人である伊丹殿が訪れている。なので優先順位的に考えるにこちらが先だ」
「抗議する402。それは通常時での優先事項を参考に従っているに過ぎない。現状の虹像の身体を考えるなら回復を優先する事が先決だ」
「しかしだ401、伊丹は現状コダ村の難民達の世話も任されている。そんな忙しい中わざわざ来てくれたのだ、短時間に事を済ませる事が優先だと考える」
それから始まるのはイオナと402との舌戦。その様子を虹像はもぐもぐとリンゴを食べながら見つめ、伊丹は先ほど402が話した内容に驚きを隠せなかった。
「え"先日決まった事なのに何で知ってるんですか???」
「そう言うもんだ伊丹さん。基本的に彼女らに対して隠し事は出来ないぜ、俺も何度お宝グッズを捨てられたか……」
「401、何故分からない。現状では伊丹と会話する事が先決だ!」
「402、それは虹像の体調を考慮していない結論だ! 彼にとって体調の回復に取り組む事が最優先事項なのだ!」
ヒートアップしていく舌戦。それを横目で聞いていた虹像はモグモグと口に含んだ物を食べ終わると体を起こし、ヒートアップし過ぎて当の本人達を忘れて続ける二人の間に割り込んだ。
「艦長、退いてくれ。今からこのバカな姉を再度沈めないといけないのだ。退いてほしい……」
「虹像、この愚妹を再教育しなければならない。できれば退いてほしい……」
「止めんか二人共」
「「ッ!?」」
コチンっと振り上げた両手を彼女達の頭へ降ろし、拳骨を披露。その軽い音は裏腹に振り下ろされた二人はその場で蹲ってしまう。
「他所でやるな、恥ずかしい」
伊丹はこの時思った。何だかベットで寝ているこの男が母親のように見える……っと。
※※※
いきなりイオナ達が喧嘩し始めて正直ビビったぜこの野郎。拳骨を食らわせた後、ホイホイホイっと二人を病室を追い出すと俺とテュカを助けてくれたと言う兵士、伊丹耀司と顔を合わせた。
「さてさて伊丹さん今回はホントに助かりました。波動砲の如く極太ビームに晒されたことやプロトン魚雷のような魚雷を何発か食らって命の危機に陥る事はあってもドラゴンに背中を焼かれ、そのまま放置なんてことはこれまで無かったことですからね」
「こちらもあの次元潜航艇の如き異次元からの一撃が無ければ私達もあの炎龍の攻撃で全滅していた所でしたのでお互い様です」
手を差し出され、俺はそれに応じる。良かった、異世界の日本でも握手って文化は根津いてるんだな。なんて考えながら握手してたらふと、俺は気付いた。アレ、今伊丹さん次元潜航艇って……まさか。
「伊丹さん伊丹さん」
「何でしょうか、えっと……」
「千早虹像」
「では千早さん」
「伊丹さんって……波動砲って知ってるぅ?」
「!?」
伊丹さんも気付いたらしい。確かに伊丹さん達と俺のいた世界は違う。けれど、サブカルチャーの文明は共通してる場所があるかもしれないと言う事を……
それからというモノを伊丹さんとの会話はトントンどころか滅茶苦茶進んだ。なんと伊丹さんは俺と同じくオタクだったらしい。ヒャッフゥー 前の世界だと杏平ぐらいしか俺の話についてこれなかったから最高だ、ぜッ!
「やはりメイコ。メイコは至高にして頂点。っく、原作者が徴兵で命を落としていなければ打ち切りって言う形ではなく、あの子達が紡ぐ物語の続きが見れたというものを……」
「こっちでは既に3期に突入してますよ」
「マジで!」
マジか。そっちの日本では続くどころか大ヒットして3期に突入してるのか……みてぇーよぉー!!!
そんな感じで話が弾み、あっちの世界で流行ってるアニメやらこっちの世界じゃ資源不足によって廃れてしまった貴重な文化である同人誌即売会などなどの情報などマジで俺にとって有意義な会話だ。
「そっちの世界は俺にとって天国かよ、いいなぁ。俺達オタクにとって既に伝説と化した失われた聖地である秋葉原……いきてぇーなぁー」
「逆にそっちの世界はまるでラノベで書かれるような近未来の世界だぁ……それに霧の艦艇って、丸々チートじゃないっすか!」
「うんうん、分かる。分かるぞー伊丹。俺もイオナに乗っていく度か戦闘を重ねてるけど、その度に霧の艦艇は毎度の如くリアルチートだと思う」
ビーム兵器やシールド、侵食魚雷なんかを標準搭載されてる意思を持つ船とか今考えてもやべぇーよなぁ。
いつの間にか堅苦しい態度や言葉は外れ、二人して笑い、そして驚きながら話合っているが楽しい時間というものは割と早く過ぎ去るモノ。いつの間にかアニメの話が変りに変わって自分でも正直SFの創作話にしか思えないイオナ達のチートっぷりやこれまで行って来た戦闘詳細などを語り始めたぐらいにボーンボーンと時を告げる鐘の音がした。
「あ、やっべ。時間を忘れて話過ぎた」
「そういえば伊丹は時間が無いとか言ってな」
「そーなんですよぉー。コダ村から連れて来た難民達のアレやコレを用意しなきゃいけなくて……ハァ。コレだからお役所仕事はメンドクサイ」
「俺はそこん所は全部イオナと群像、そしてに任せてたからな……分からないぜ」
「艦長ですよね?」
「艦長だが?」
オイオイ。俺が肩書だけの人間だと思ってるんじゃないよな? 思ってるんじゃないよな??? なんて考えも浮かんだが伊丹はイソイソと焦りながら病室を去る。
久しぶりの1人の時間。ベッドでゴロゴロしようかと思った丁度その時、コンコンと扉からのノック音が聞こえた。ハーイじょぉじーっとばかりに答えるとギコーっと軋む音と共に扉が開け放たれ、そこには見覚えのある人物がいたのだった。そしてその人を目撃した俺は一言。
「よっすテュカ、生きてて良かったぜ!」
「グーゾ―!!」
こうして俺はテュカと再会できたのだった――――
「私を忘れないで欲しい」
―――あ、あと400。ごめんって、だからそんなに拗ねるなよ。今度402と一緒に作ったプリンあげるからさぁ。