【14】
自衛隊と呼ばれる別世界の日本軍に保護され数日。俺達の生活はエルフ達と一緒に生活していた頃と同様、前の世界では考えられない一変した生活を送っていた。俺達が住んでるのは仮設で設置された難民キャンプの隣、そこに船を鎮座させて俺は前の世界と差ほど変わらない生活を送っていた。まぁ唯一変わったと言えばこの場所が陸地だからか日がな一日艦内に缶詰になる事も無いって点とご近所付き合いが発生するって点かな。
「でもなぁーぜかあのゴスロリ神官様には俺ってば嫌われてるんだよなぁ……」
「グーゾ―、今日も日本語教えて」
「いいぞぉレレイ。今日は日常会話でもしてみるか」
そして今の仕事は現地民である難民達と自衛隊とを繋ぐ翻訳事ぐらいだな。
あのドラゴン────炎龍と言ったかな。アイツの攻撃を食らって目覚めてからと言うモノ、何故かイオナ特製の翻訳機無しで現地語が達者になった俺は現地民に日本語を教えたり、自衛隊と現地民とを繋ぐ翻訳の仕事をしたりと色々忙しかったりする。
「レレイさんはリンゴを食べますか?」
「リンゴ、食べる。甘い、美味しい」
「……初期イオナかな?」
「抗議する虹像。私もここまでは酷く無かった」
他のメンバー、つまりメンタルモデルである彼女らはと言うとイオナは俺のボディーガード兼補佐役として何時も一緒にいる。まぁ、前の世界と変わらないな。実際達者になったと言ってもまだまだ不完全な俺。だからこそ、いつの間にか様々な言語データを取得して現地語の完璧となった彼女がそれを補正してくれるので大変有難かったりするもんだ。
「レレイ。リンゴ
「リンゴを食べる」
「そうそう。あと"甘い、美味しい"ではなく正しくは"甘くて美味しい"だぞ」
「なるほど……日本語は難しい」
んで残る400と402だが、アイツらは俺じゃ出来ない事、具体的に言うと主に俺が自衛隊へと要求したモノの対価のお話しを狭間さん達としているらしい。細かい内容は聞いてもチンプンカンプン過ぎて良く分からなかったが、イオナによるとあちらさんの化学技術に合わせた報酬を出してるとの事。多分ナノマテリアルで何か良いもの作ってるんだろうなぁ……初期型のスーパーキャビテーション魚雷とか。その他は400が自衛隊の確か空挺部隊とか言ったかな。そのエリート部隊で格闘術を習ってたり、402が料理を習ってたりと色々と個々の好奇心を満たして生活してるらしい。最初はSFに出て来るような命令以外は興味の無い二人だったけど……成長したなぁ。ま、そんな訳で俺達はそんな日々を毎日過ごしてる頃、ちょっとしたイベントが起こる。
アレはベッドから解放され、イオナにより霧流手術を受けて火傷を完治。難民達とも仲良くなり、前の世界の価値観で見たらかなり贅沢であるお蕎麦をイオナや最近俺が集中的に日本語を教えているレレイという少女と共に食べてる時だった。歴史の授業でしか見た事のかったモノを実際に食べれるとあってテンションが上がりその美味さに舌を打っていた所、向い側に座っていたレレイが急にこんな事を言い出した。
「なぬ。飛竜の鱗を売りに行くに同行してほしい、だと」
「そう」
今、俺達がいるこの場所。自衛隊の駐屯地のあるアルヌスの丘にて自衛隊が侵攻した直後に起こった連合諸王国軍と自衛隊との戦闘、後にアルヌス戦争と呼ばれる戦闘は総勢6万人もの命が散った戦いだった。当然死者の数には入っていないのだが、その中には飛竜などの怪物も存在し今、時間の経過した現在においてそれらは全て難民達の資金源となっていた。レレイの師匠であるカトウ先生によると飛竜の爪や角、鱗などは大変高価で売れるらしく、自立を求められていた難民達にとって自衛隊が価値を見出せず放置しているそれらは渡りに船。こっちでの活動資金が俺も欲しかったので回収や選別には手を貸したが、まさか売却まで俺が同行しなければいけないだなんて思っても見なかったなぁ……
「グーゾ―は日本語もこっちの言葉も達者。そして交渉術もある程度出来るとイオナに聞いてる。だからついてきて欲しい」
「なるほどなぁ」
彼女に詳しく事情を聞いた所どうやら俺には商人と値段の交渉をするネゴシエーターとしての役割をしてほしいとの事。レレイ自身も出来ない事も無いらしいのだが、難民達のこれからの事を考えて出来るだけ高く売りつけたいからだとか何とか。確かに年寄りや子供が多いとはいえあの人達がこれから自衛隊の保護から離れて生きて行くには金が必要だな。
「イオナ、危険性」
俺が横に座り、そばを口にするイオナへ質問すると開いてる手でマルと意思表示。なるほど、あれがゼロなのか大丈夫って事なのかイマイチ判断付かないがとにかく俺は行って良い事だな。
「分かったレレイ。俺も同行しよう」
「感謝する」
こうして俺とイオナはレレイ達に同行する事が決定したのだった。そして移動中の高機動車の車内。
「……っで、何故俺がナビなの?」
「ここがテッサリア街道そこがロマリア山、そしてこの場所が目的地のイタリカの街」
「ハイハイハイっと」
伊丹率いる第3偵察隊に送迎される形で俺達はイタリカの街へ向かっていた。
メンバーはネゴシエーターとして呼ばれた俺に加えそのボディーガードとしてイオナ。そして売却人であるレレイにテュカ、そして何故かゴスロリ神官ことロゥリィ・マーキュリーの三人。そして先ほども言った第3偵察隊の面々だったりする。ってかさ、何でネゴシエーターである俺がマジで何でナビなんだ? ってか、紙の地図なんて初めて触るな。
「そりゃ千早が一番レレイ達と話せるからな」
「いや、アンタも十分話せるでしょ」
助手席に座る伊丹にそう言われ思わず反論したが、返された言葉に何となく納得してしまう。確かに俺がレレイ達に聞き取りして地図に書き込んで行くのが一番効率が良いだろうけど面倒なんだけど……
そんな風に考えながら書き込んでいくとふと運転席に座る倉田と話す伊丹が見えた。何話してんだろう?
「隊長隊長。何であの人とそこまで親し気なんです?」
「そりゃお前、あの人は同士だからな」
グット、サムズアップされたので何となく同じくサムズアップ、理由は知らん。けど何となくやった方が良いと思ったからやった。
「グーゾ―グーゾ―」
「何だ?」
肩をトントンと叩かれそちらへ目を向けるとテュカの姿が。白いTシャツにジーパンのみと言うシンプルなファッションはシンプル故に彼女のスタイルの良さを引き立たせ、正直キレイと思ってしまうほどだぜ。ま、ホドリューのダンナに再会した時に殺されたくはないので事を起こそうとも思えないけどね。
「どうしたいきなり、何か問題でもあったのか?」
そう言うと何とも微妙な表情へ変わる。ど、どうしたんだ?
「問題って言ってしまえば確かに問題ね……」
「貴方って本当に面白いわ」
「何が面白い?」
「生命の鼓動を全く感じないのに何故か暖かな心は感じる事が出来る……本当に不思議で面白い存在だわぁ」
「あ、あのぉロゥリィさん? そろそろ解放してあげた方が……」
「もう少し良いじゃない、もう少しだけもう少しだけ‥‥…」
テュカの指を指す方向へ目を向けるとそこにはまるで子供を撫でるかの如くイオナへ撫でまわすロゥリィ、そしてそれをオロオロとしながら止めに入る黒川さんの姿が……なんかデジャブを感じる。具体的に言えばなんかこう、硫黄島で同じよう光景を目にした気がするぜ、主にヒュウガ関係で。
「で、デジャブ……」
だな、イオナ。だからそんな助けを求めるようにこちらを見ないで欲しい。ただでさえそのゴスロリ神官には俺ってば嫌われてるんだから助けられねぇーよ。そんな感じで紙の地図にレレイの話を元に書き込みをしながら偶にテュカと楽しいお話しをしていると運転席の倉田が何かに気付いた。
「伊丹隊長、右前方で煙が上がってます」
その声に釣られ彼が指を指す方向へ目を向けるとそこには確かに煙が上がっている……アレ、なんか見覚えのある煙だな。時を同じに伊丹から渡された無線から同じ内容の報告が先導車から入って来る。
「全車停車」
伊丹の指示によりその場で停止する車列。あの煙がどんな意味を持ち、これから俺達にどんな出来事が待っているいのか――――誰にも分からない。けど、俺の勘はハッキリとこう告げていた、これから待ち受けるのはかなりの面倒事なんだと。