ゲート 蒼い鋼が何故そこに……   作:サソリス

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何書いてるか分からなくなってくるぜ!


【18】

 夜明けまであと数時間。深淵の如き漆黒に染まる夜空の中、見上げるとそこには無数の落ちる光。その正体は矢じりに塗った油へ火を付けた火矢。それが今、イタリカの城壁へと降り注いだ────伊丹達の居ない、東門へと。

 

 数々の悲鳴があがり倒れ、死人が増える。そんなパニック状態の中でも門の防衛を任されていた正騎士ノーマンは兵士や武器を手に取った住人達へ怒号にも似た指示を飛ばし、序戦である弓射戦が始まった。そして互いに倒れる者が増えて行くと盗賊と数多くの敗残兵が集まった賊軍である者達は城壁から放たれ続ける矢で作られた弾幕をまるで縫うように一部の兵士が弾幕の隙間へと向かい、ジリジリとにじり寄り始める。強固な金属の軍装を身に纏い、大小様々な盾を構えるその姿は正に多国籍軍。対して、イタリカを守るは前日の戦いで数を減らした少人数の兵士と武器を持った住民達、そしてピニャが連れて来た正騎士1人。戦力差は誰が見ても明らかであり、この強固な城壁が無ければあっという間に落とされるだろう。だからその事が分かっている住民達や一部の兵士は必至の抵抗を見せ始める。子供や老人などが石を投げ岩を落し、溶けた鉛や熱せられた熱湯を攻め込んでくる賊軍の頭上に垂れ流す。その威力は下手な矢よりも強力で効果的であった。しかし、それでも賊軍達の侵攻は止まる事はない。何故なら彼らの本当の目的は街での略奪などでは無く、戦いの末に辿るであろう死、なのだから。

 あのアルヌスの丘で経験した意味の分からない理不尽な死。気付けば大将が、気付けば上官が、気付けば隣で戦っていたはずの戦友が────敵の姿も見えず、何が起こっているのかも理解出来ず、味方に訪れるのは一方的な死。だからこそ、彼らが本当に求めるのは血を血で洗うような彼らの知る戦場。兵士として、戦士として、そして戦いの神であるエムロイに捧げる供物として。戦う者達が命や自身の魂魄を燃料に戦いの劫火は激しく燃え盛る。

 

 そしてそのような状況の中。反対側の西門にて血生臭い残酷な戦場と似つかわしくない、淫乱な悲鳴が響いていた──

 

 

※※※

 

「あのぉ~イオナさん? そろそろその耳栓兼顔のロックをしているこの手を外して欲しいんですけど……」

 

「駄目、グーゾーにはまだ早い」

 

 戦いの証である光が神々しく遠くに確認出来る西門。俺達はこれから来るであろう賊軍を相手するべく、伊丹に指示されたポジションで待機してたんだけど……何故かイオナさんに耳を塞がれ、頭ロックされてます。マジでどうしたんだろ? 

 

 何もする事が出来ないので目線を右往左往と動かすしかない訳で……あぁー夜空がきれぇー。あ、流れ星。船員達と無事に再会出来るように願い事祈っとこ。何て考えて夜空を眺めているとふと視界の端じに何かが横切る。あのフリフリに真っ赤なアクセントが施されたゴッシクドレスの女性は────ロォリィ!?  

 この瞬間、俺の勘がピキーンと反応しコレは追いかけた方が面倒な事にならない、そう告げた。だから俺はイオナの手を外し、彼女の手を掴んだまま走り出す。

 

「オラぁイオナ! 俺達も続くぞ!」

 

「ガッテン!」

 

 

 俺の突然の行動は何時もの事。前の世界で散々付き合わせたイオナは特に疑問に思う事も無い様子で続いてくれたお陰で割とスムーズに俺達も城壁から飛び降りたロォリィに続き飛び降りる事に成功。まぁ流石に俺ってば一応一般人なんで、そんな高い場所から飛び降りれば落ち方によっては俺の体はお察しになる訳で────

 

「イオナ、着地任せた!」

 

「わかった」

 

 先に落下するイオナに着地の衝撃を殺させ、そのまま俺を抱えさせたままイオナは跳躍し飛び上がり広い場所へ移動を開始。ロォリィの姿を追いかける為、まるでカンガルーの如く数多くの建物の飛び跳ねながら高速移動する。いやー彼女が常に張ってくれるクラインフィールドが無ければ風の抵抗で俺ってば死んでるぜ。

 

 そして到着するは木々で作られた簡易バリケードを境に城壁を突破して来た数多くの盗賊どもと街の住人達の睨み合う場。地面には無数の遺体が転がっていて血生臭い臭いが俺の割とデリケートな鼻を刺激する。そしてロォリィはその中心に立ち、身の丈以上ある鋼鉄のハルバードを舞うかの如く振り回しながらちょうど鉄仮面を付けた大男をぶっ飛ばしていた。そして俺達はその場にて彼女の隣へと降り立つ。

 

「ヘイ、ロォリィさん。1人だけで面白い事してんじゃないですか……俺達も混ぜてくださいよ」

「援護する。1人で相手するには敵が多い」

 

 右手に拳銃、左手にアーミーナイフ。大量の人間を相手にするには明らかに火力不足だけど、俺には最強の守護霊が後ろに居るので死角からの攻撃や普段の守りは問題ない。ロォリィが先ほどぶっ飛ばした大男に似た容姿の大男がこちらへとにじり寄り、その手に持つ凶器を俺へと振り下ろされるがそれはイオナの張っていた青いフィールドによって防がれる。

 

「いいわよ。死を忘れた不思議さんに私に近しく、最も遠い不思議な亜神さん。三人で血の宴を盛り上げましょう!」

 

 ロォリィの笑う声を背に突然の超常現象に固まる大男を前に俺は銃口を向け、ナイフを構えた。

 

「そんじゃ皆、いってみよう!」

 

 そして俺は引き金を引き、撃鉄を鳴らすと同時に城門が爆ぜた。

 

※※※

 

 風を切り裂く規則的なローター音。上り行く朝日を背に編隊を組んで薄幕に覆われた空を飛ぶのはAH-1S、その名もコブラ。そしてその後続として多くの隊員を乗せた複数のUH-1Jが続く。薄闇の大地が彼らの下方を流れている様子を見るに、かなり高速で移動している事が分かる。

 

「それにしても凄いですねアレ。流石はSFの世界から来た人たちによって改造された機体だ」 

 

 そう呟くように話すUH-1Jに乗り込む隊員の目の前を飛ぶは戦闘ヘリと呼ばれる攻撃型ヘリコプターであるAH-1コブラ。しかしその装甲は通常のコブラと違い、極めて異質。薄闇であろうと神々しく青い光が多数見受けられるそれは通常のコブラと違い、イオナ達メンタルモデルによって直接手を入れられ改修された特別仕様なのだった。

 

 特地に置いて、自衛隊へ降りかかる脅威は未知数であった。唯でさえこの世界には魔法と言う超常現象に加え戦車と同等の分厚い装甲、ヘリの如く機敏に空を滑空する炎龍と言う脅威が確認されている。本国の防衛省の判断では現地に派遣した戦力で十分対応出来るとされていた……が、現場の人間は違った。伊丹達第三偵察隊などから提供されたデータを確認した科学者やその脅威を知る整備士達が分析した結果、現状の装備では対抗策としては十分だが、現場へと実際に派遣される自衛隊員の命を守るには不十分と判断。複数の人間が結託し、狭間陸将を通じて防衛省上層部に散々改善策を求めた……が、これを議会は資金の無駄と判断し却下したのだった。

 

 そしてそれを知り、特地に派遣されている現場の自衛隊員達の堪忍袋の緒が切れる事となる。自分達の命よりも、ポッケに入れる資金の方が大事なのか……っと。丁度同時期にSFの塊である蒼き鋼より技術供与が約束される事が決定。その情報を手に入れたパイロット達や整備士、現地生物を研究した事によって未知の脅威を恐れた科学者達は彼女達へ直談判。その結果、技術供与の最初の段階としてこの機体が生れたのだ。

 

 

 彼女達によって徹底的に基礎構造から手を入れられたこの機体は今までの物とは別物だ。最高速度や搭載能力を上げる為シャーシ素材やエンジンに手を加えられ全長などの延長要らずに巡航速度や実用上昇限度、航続距離などの基本性能を大幅に向上に成功。前席の射撃手として戦闘用AIを導入しレーダーなどの電子機器も一新し内部アビオニクスも彼女達が1からプログラミングしたオリジナルの物に書き換えた為、従来の弾薬であっても射程距離などを20%向上。搭載能力が向上した事により武装に関しても手が加えられ、搭載するミサイルも最大8発から12発と増加しバルカン砲の弾数も30%ほどアップした。そして最大の変更点であるナノマテリアルと呼ばれる現代の科学では一切分析不可能な要素。それが一部の装甲として換装した結果、パイロットの生存性を高める事となり改造の施されてない同機体とは比べ物にならないほどの高性能な機体となった。こうやって彼女らによって手を入れられたこの三機の機体は今までの防衛省の考え方である専守防衛の理念からはかけ離れ、そしてライセンス元である米国が知ったら必ず引き渡し要求をされるであろう程に高性能になってしまった機体。それがこのAH-1ARP+、通称メデューサなのだ。

 

 

 科学的に証明できない蒼く発光し続ける謎の装甲。HA-1Jより増速し、速くイタリカへと向かうコブラ達の後を引く。それと同時に健軍一等陸佐の指示によって各HA-1Jに搭載された大音量スピーカーによって流されたワルキューレの騎行はまるで彼らの発陣を祝うかの如く、朝日を登る空全体へ響き渡る。

 

 

 

 さぁ、蹂躪を開始しよう。

 

 

 

 誰かの言ったそんな呟き。その一言と同時に放たれる光の閃光であるミサイルによって戦闘の火蓋が切って落とされたのだった。

一番印象強いキャラは?

  • コンゴウ
  • ヒエイ
  • ハルナ
  • キリシマ
  • タカオ
  • アタゴ
  • マヤ
  • チョウカイ
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