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「へ、へへへへ」
「ほ、ほほほほ……パタリ」
「なんて事をしてくれたんだッ!」
まるで火山が噴火したかのような怒りを表し、ピニャはその手にしていた銀製の酒杯を酒の残っている状態のまま彼女の目の前にいる縦巻き金髪ロール事愚か者へぶん投げた。
伊丹と虹像と言う捕虜を手に入れた愚か者であるボーゼスは意気揚々と自身の功績を誇ろうとピニャへ謁見したが、突如としてぶつけられる尊敬する者からの怒りに理解が出来なかった。額の激痛に理不尽な怒り、身体が竦みあがりその場に座り込む。暖かな感触が額を伝い、手を触れそれが血液だと初めて知った。鼻先からぽたぽたと落ちる血液が大理石の床に真っ赤な水溜まりを作り、それは止まる事を知らない。
「ひ、姫様。どうしたと言うのですか!? 我々が何をしたと言うのです?!」
座り込んだボーゼスの額に手布をあて、ピニャに理由を尋ねる銀髪の騎士パナシュ。だが、その時には先ほどまで怒りに駆られていたピニャもその傍らに立つハルミトンも怒りというより最早あきれも混じった様子で二人を見ていた。
401中隊が飛び去り、伊丹率いる第三偵察隊が去って夕刻。騎士団を引き連れイタリカに到着したボーゼスとパナシュは、ピニャに対して到着に関し報告するとと共に戦闘に間に合わなかったことを詫びる。だがピニャはこれに対し責める事はせず、逆に当初の予定よりも早い到着に彼女らを褒めたたえた。まぁその影響で気をよくしたボーゼス達はピニャの初陣に祝福する言葉を送り、そして向かう最中で捕まえた捕虜を見せた────のが、悪かった。その途端にピニャは怒りにかられ酒杯が飛来、ボーゼスが傷を負う事に…… だからこそ謁見した二人は何故責められるのか理解できないでいた。
「こともあろうに、その日の内に協定破り。しかもよりによって彼と彼らが客人としていた人物とは……」
ハルミトンは見ろまの隅に連れ込まれた捕虜達へと歩み寄る。床に力なく倒れ伏せるは虹像、そして同じく座り込んでいるのは伊丹であった。
「へへへへ」
意味不明な事を嘆く伊丹はまだ意識が辛うじてありそうなので肩に手を置き、揺すりながら彼の名前呼びかけるが反応は無い。
それもそのはず両者は全身泥まみれで擦り傷だらけ、さらには身体中に打撲痕と思われる痣ばかりあり、体力気力ともに知己はてていると言う姿でまともに返事も出来そうにない。
「イタミ殿、イタミ殿ぉ」
「へへへへ……パタリ」
「い、イタミ殿!?」
ここへ来るまで相当酷い目にあわせたんだろ、容易に想像できる有様だった。圧倒的武力を持った異世界の軍隊たる自衛隊と結んだ条約をその日で破るこの有様。目の前にある残酷な事実に思わず目元を抑え、頭痛のする頭を押さえたくもなったが伊丹を手当した後もう一人の捕虜である虹像を手当していたハルミトンが神妙な顔つきでピニャへと歩いて来る。
「あ、あの姫様」
「なんだハルミトン」
「……彼の腕は元々こうでしたか?」
ピニャは突頭に意味の分からない事を言い放つ彼女の発言が理解できなかった。だって確かに傷だらけではあるものの彼の体は五体満足であると思っていたから。だからこそ彼の体をよくよく詳しく見てみた途端、目を見開き度肝を抜かれた。あるはずのモノが無い、彼の体には本来あるはずの右腕が無かったのだった。
首の痛み、背中の痛み、足、頬右目周りと全身の痛みを感じながら伊丹は目覚める。
「いててて」
首筋を無意識に抑えながらか目覚めた痛みの視界は妙に明るい。体を包み込む柔らかな羽毛の感触を察するに自身の体はベッドに寝かされているんだろうが、それ故に彼は自分のいる場所が分からない。痛む首を回し、周囲を見渡そうとするとそこに居た人物と不意に目が合った。
「お目覚めになられましたか? ご主人様」
そう言って微笑むはどう見てもオタク文化の象徴の一つ、メイドさんであった。
「!?」
驚きのあまり思わず体を起こそうとするがそのメイドさんが優しくそれを止め、掛布団を掛け直す。その事からちょっとだけ落ち着きを取り戻した伊丹は改めて周りを見渡す。するとそこには先ほど話しかけて来たメイドさんと同様、同じ格好のメイドさん達がスタンバイしていた。その光景から思わずここは秋葉のメイド喫茶かそっち系のお店か? なんて考えも浮かんだが自身の性格が割とチキンと自負している為、そんな訳ないとその考えを切り捨てた。
「ここはどこです?」
「こちらは、フォルマル伯爵家のお屋敷です」
現地語で尋ね、それから得られた情報と今起これた状況を合わせ整理するに伊丹はこの場所が監獄に類似する施設ではないと判断した。イタリカの街へ走らされた事を考えるにここはイタリカの街、そして彼女らはフォルマル伯爵のメイドなのではないか? そして自分の置かれた待遇が改善された事を考える事をみるにピニャ殿下には俺達と結んだ協定を破る意図は無かったのではないかと思えた。なら無事に帰れる可能性もある、無駄に場を荒らして逃亡する必要もないかもしれない。そう結論が出た伊丹は体の力を抜き、心からリラックスできた。
「って事はイタリカに戻って来ちまったって事か……」
そのタイミングだろうかコンコンっとノック音が響き、誰かが顔を見せる。
「よ!」
そして登場するは何とも気軽に挨拶する虹像。その様子は文字道理一緒にデスランをやっていたはずなのに何処か余裕そうとも感じれた。けれどその姿は伊丹よりも重症のようで全身包帯だらけ、それに加え彼は車椅子にも似た椅子に座り兎耳の似合うメイドさんに押され入って来たのだった。
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「伊丹も無事に目覚めてなにより。俺の方は走ってる途中で義手を無くし、最終的に義足がぶっ壊れてたらしく困った困った!」
なめんなよ、こちとら一回ナガト&ムツと差しで勝負して結果半身吹き飛ばした人間ぞ。これぐらいの負傷で根を上げれるかってんだい。いやぁーあの二人は普通に強敵でしたね、その時乗ってたコンゴウが俺の体の一部をナノってくれなきゃ普通に死んでたぜ。なんて笑いながら運んでくれた兎耳メイドさんにお礼を言い、ちょうど手が届く距離で寝ている伊丹の肩をパンパンと叩いていると彼は唖然とした表情をしている、どったの?
「って千早義手に義足だったのか……」
……なるほどなぁ。確かに伊丹達自衛隊の面々には教えた事なかったよなぁ。あ、いっけね、よくよく考えるにイオナにも教える忘れてたわ。そもそもこの事を知ってるのはナノってくれた本人であるコンゴウとある事件でトラブった結果心臓をナノってくれたアタゴぐらいだったわ。あぁーあのメル友元気かなぁ。
「そーなのよ、昔ヤンチャしてね。和服美人二人をナンパした結果こうなった」
「流石異世界、ナンパの代償がデカすぎる……」
「まぁ、結果的に言えば黒いドレスが似合う割と好みな美人をナンパ出来たから良いけどネ!」
「スゲェ、転んでタダでは起きなかった」
まぁその後に群像達とやったBBQでピーマン食わせたら怒って別れちゃったんだけど……気にしなくてもイイよね、ネ。
一先ずの喉が渇いたので猫耳メイドさんに水を注文すると「かしこまりました」と了承。その人は水を灌ぐんだけど……伊丹がやけにその人に熱い視線を送っていた。どったの、伊丹?
「どうかされたニャ?」
「い、いえ状況はどうなってるのかなって……」
ははぁ~ん。察するに猫耳長身眼鏡メイドさんの猫耳に注目してたなぁ??? わかるぞぉその気持ち、俺も初対面の時は思わず宇宙ネコに成っちまった自覚あるからな。なんて考えてると誰かが伊丹の発言に反応する。声のする方へ目を向けると明らかにメイド長って感じの老メイドさんが部屋に入ってきているところだった。扉を閉め、ゆっくりと姿勢を崩さず歩くさまはまさしくカリスマメイドって感じだぜ。
「お二人には最高のおもてなしをするよう我ら一同ピニャ様により命じられております。そして、無礼を働いた騎士殿達はキツク叱責を受けており────―」
それから語られるはその叱責の内容。彼女の説明は非常に丁寧で分かりやすく、割と詳細に教えてくれた。あちゃぁー嫁入り前の娘の額に傷か……後でイオナと合流した時に治してもらわないと。説明を終えると老メイドさんは腰をおとして頭を垂れる。
「この度は、この街をお救いくださり、真に有難うございました」
そしてそれに倣うように他のメイドさん達も深々と頭を下げた。 ……何て言うか俺達って結構大きな事を成し遂げたんだんだな。確かに前の世界ではこんな風に大義名分がある大きな事をやった事もあるけれど、こんな風にお礼を言われたことはなかったよなぁ……何だかいい気分だな。
何だかいい気分になった俺はその後に続いた【イタリカを滅ぼすなら私達も協力する】って発言に度肝を抜かれのだった……マジか、この人覚悟決まり過ぎじゃね?
一番印象強いキャラは?
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コンゴウ
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ヒエイ
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ハルナ
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キリシマ
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タカオ
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アタゴ
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マヤ
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チョウカイ