ゲート 蒼い鋼が何故そこに……   作:サソリス

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【24】

 何故か俺までもが国会に招致が掛かり、面倒だと感じていたらまたもどういう事かピニャ殿下がイタリカへと同行すると言う状態になった。

 俺が呼び出される理由は思い当たりが多すぎて分からないが、彼女の語る言い分には納得させられた。確かに組織同士のトラブルに対する謝罪は重要な内容程組織の上の者が当たるべきだよな……今回に至っては結んだ直後の協約破りだし、司令官であるピニャ様が当事者であるボーゼスさんと謝罪に来るのは納得だな。

 

 ってな訳で伯爵家の前に停められた三台の車両。荷物を積み込み、乗り込むと俺達はイタリカへの帰路につく……だが、物事はそう上手く行かなかった。全く面倒な事にな。

 

「イタミ」

「なんですかイオナさん」

 

 車両がイタリカから出て少しした頃、俺の横に座っていたイオナが突然立ち上がり運転席の方へ移動した。そして珍しく伊丹へ話しかけ始める。

 

「全車停車を提案、敵が来た」

「!?」

 

 オイオイマジですかい。イオナの発言を受け伊丹は胸に装備する無線へと手を伸ばす。

 

【全車停止、イオナさん曰くお客さんが来たらしい】

 

 ボーゼスさん達と出会った時と違い車はゆっくりと停車。その後伊丹と倉田は首に下げた双眼鏡を手に取ると周りを確認し始めた。

 

「倉田、確認できません」

「黒川、確認できません!」

【富田、確認できません】

【栗林、確認できません。何かの間違いじゃないですか?】

 

 俺も自前の双眼鏡で辺りを確認してみるが確かに人影一つ見えない、見えるのは緩やかな丘に生える青々とした草原のみだ。

「」

 

「目標一時の方向、距離にして約5キロ」

 

 イオナの発言を受けて指を指す方向へと目線を向けて双眼鏡の倍率をあげる。だが見えるのはやはり遠くに広がる丘と草原ばかり。何となくそのまましていると、何かが視界に映る。

 人だ、人の集団だ。土煙をあげながら幾人もの人の雪崩が迫って来るのが見えてしまった。

 

「全車全速後退! イタリカまで引き返せ!!!」

 

 伊丹の指示で道を外れUターンした車列は即座にイタリカへと引き返す。その途中伊丹はイタリカの司令部へと救援を要請するが難しそうだ。一番足の速いはずの前に来てくれた401中隊でも最低30分はかかるらしいので間に合わないだろう。そう判断したんだろう伊丹は各員に武器を持たせ、部隊を二つの班に分けた。イタリカの住民に逃げるように勧告し、逃がす班と門で敵を足止めするある意味囮となる班だ。その命令を下す伊丹の顔色は決していいものとは言えない。まぁ自分の部下に死ねって言ってるもんだからね。

 俺は一応戦える人間なので囮となる班に志願したけど、伊丹は俺は客人だからと逃がそうとしてくる。まぁあの数だったら何処に逃げても一緒だろうけどね。そう考えた俺は伊丹の呼びかけを無視して門の上へと足を向けた。そしてそこには外交用にだろう豪華な装飾が施された衣服に身を包むピニャ様とボーゼスさんがいた。けれど二人の顔色は決して良く無く、多分だけど今の状況を段々と理解したんだろうな。

 

「ピニャ殿下」

「な、なんだ」

 

 ヘロヘロとその場で座り込む彼女。その顔に浮かんでるのは前の世界でよく見たすべてを諦め、絶望したような表情。止めてくださいその顔、美人な顔が台無しじゃないですか。それが面白くない俺はちゃっちゃと面倒事をかたずける事にした。

 

「あの場所って、吹き飛ばしても問題ない場所?」

「へ?」

 

 丁度良く敵集団が攻めて来るは多数の田畑の広がる平野。芝生は確かに貴重なモノだが、それは俺の世界での話。この世界ではありふれたモノだろ。

 

「いやね────ちょぉーっと出発前にあの集団を掃除しようと思って」

 

 横にいたイオナの手を握り締め、奴らを見る。さぁーって始めるか、デッカイ花火を打ち上げる準備をな。

 

※※※

 

 イタリカ街を囲む城壁。そのうえから見える景色は本来美しい平原のそれであるのだが……実際に見てみると眼前に広がるは無数の数を誇る鉄の騎兵。遠目であってもハッキリとその数は昨晩命懸けで自衛隊と協力して殲滅した敵と比べ圧倒的に多数だと分かる。あの軍団が攻め込んできた場合、応援として駆け付けて来てくれた薔薇騎士団の協力あってもあの数相手では奮戦虚しくこの城塞都市は簡単に陥落するだろう。そう考えへと至ったピニャは心の底からの絶望を感じてた。

 

 だが、その時────

 

「仕方ない。やるか、イオナ」

「ガッテン、虹像」

 

 ────予想外の人物の声が聞こえる。ピニャの前に突如現れたのはピニャ自身の不手際で鼻を怪我させ、ボーゼスの暴行により腕を無くしその頬に真っ赤な手跡を残す男とグレイが恐らく亜神と言っていた不可思議な少女。鉄の天馬などの活躍や伊丹達への暴行事件など様々なトラブルによって記憶の中から途方彼方へと行き、彼らの存在は忘れていたが何故このタイミングでこのような者達が……

 そう思うがピニャの目には何故か今、目の前に立つ二人は最初に出会った時とは違い死神ロゥリィにも似た圧倒的な強者のオーラを放っているように映った。

 

「艦長権限により機能制限解除。拘束具を脱ぎ去れ」

「艦長権限によりセーフティーロック解除、次元ポケットより全パーツを召喚。船体とパーツとの合体……完了。アルス・ノヴァモード実行」

 

 目の前に立つイオナの体が眩しいほどの光に包まれ、やがてはそれは収まり、そして真っ白なドレス姿の彼女が姿を現す。

 

「さぁ相棒、異世界にお前の存在を刻み付けてやろう」

 

 彼のその言葉と同時に────町全体を包み込むほどの輪を頭の上から展開された。その輪には様々な言語の計算式が浮かび、そのどれもが人間には到底行えない膨大な演算。そしてそのすべてはただ一つの目的に対しての演算でもあった。

 

「対地射撃よーい。主砲、弾種徹甲」

【主砲一番から三番、副砲一番二番徹甲弾装填。警告します、これより本艦は艦砲射撃に移ります。本艦の近くいる自衛隊及び現地人は対ショック姿勢を取り、衝撃から身を守ってください。砲塔旋回完了。発射角、座標計算完了】

「虹像、いつでも撃てる」

 

 イオナとは違うもう一つの女性の声。その声に彼は懐かしそうな表情を浮かべながらも彼は片手を上げ────

 

「撃て」

 

 ────それを、振り下ろす。

 

「さぁってピニャ殿下。これよりご覧頂くのは私と彼女の持つ力の単なる一片。そして文明を滅ぼしえる神罰の一撃」

 

 彼はそう言って振り返り、イオナに驚くピニャへそう言葉をかける。しかし当の本人は彼のその様子に言葉を失っていた。それもそのはず、常識外の状況であるにも関わらず彼は普段と変わらない様子で笑みすら浮かべていたのだから。 

 

 遠くに見えるは無数の軍勢、数にして約2万。イタリカへ攻め込む賊軍と化した敗残兵達の本体。その上空に一瞬何かが、高速で落ちるのが目に入った。瞬間それは地面へと吸い込まれそして────爆発する。

 衝撃の後に聞こえるは轟音と化した爆発音。強固な城壁すら一部崩壊させるほどの威力を持つそれは見る者を圧倒し、そして空高く飛ぶヘリに搭乗する自衛官を唖然とさせる。自衛官の彼は知っていたのだ、コレがアルヌスの丘から放たれた艦砲射撃の結果なのだと。煙が張れた後に見えるのは複数のクレーター、数にして十八。着弾地点には何も無く、すべてが蒸発。それに例外は無く生き残りは見られない。一瞬で2万もの軍勢を滅ぼした一撃は思わず神の御業かとピニャは思ったが目の前の彼は語っていた。コレは自身の持つ力の一片なんだと。

 

「……状況終了」

「ささ、さっさとイタリカへ帰りましょ」

 

 これにて突如として発生した第二次イタリカ攻防戦は終わりを告げる。後に残ったのはなんでもないかの如くそそくさと機動車へ向かい、乗り込む虹像とイオナ。そしてその遥か彼方の草原だった場所に新に焼け付いた現実離れした高温に熱せられた複数のクレーターのみだった。

 




疲れたぁ

一番印象強いキャラは?

  • コンゴウ
  • ヒエイ
  • ハルナ
  • キリシマ
  • タカオ
  • アタゴ
  • マヤ
  • チョウカイ
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