ゲート 蒼い鋼が何故そこに……   作:サソリス

30 / 31
3000字を目途に書いてるけど中々絞り出せないもんだねぇ。


【26】

 

※※※

 

「ど、どうしよう。マジでどうしよう……」

「嘘よ、誰か嘘だと言って……きっとこれは夢、夢なんだぁぁぁぁ!!!」

 

うわぁぁぁっと泣き叫びながら両手で顔を隠したまま現実逃避をする栗林に加え、その直ぐ横ではハイライトの無い目で何かをブツブツとつぶやき続ける虹像。二人の出すどよっとした重暗い雰囲気は情報部の用意したマイクロバスでなければ一層最悪な空気へと変わっていただろう。まぁセダンなり何なりの普通乗用車と比べ、圧倒的に広さが段違いなので当たり前ではあるが。

 

 

それはともかく

 

 

そんな様子の二人を最後尾を座らせた後、残りのメンバーを運転席側に詰めて座れば二人の出す負の気に汚染されずに済む。そう考えた伊丹はそれを実行したものの……二倍の負の力は侮れないものらしく、少しでも目を向けようものなら感染しちまいそうな程だった。

特地組三人やメンタルモデル三姉妹、そしてピニャ一行も栗林や虹像の事が嫌い言う訳では無くむしろ好感が持てる人物だと評価しているんだが……今の状態に陥っている彼女らに好んで近づきたくは無いかなって感じだ。まぁピニャに至っては虹像に対し何かしらの恐怖を若干ながら抱いているので尚更ではある。しかしそれ以外では今の所段取りに問題が発生していないのもまた事実。このままスムーズに行くかなーっと伊丹は考えたが、この先の用事を思い出し思わず顔をしかめる。何故かというと栗林がこのような状態に陥っている為に若干の問題が発生している事に気付いたからだ。

 

「隊長、何処へ向かっているのですか?」

「国会に行くにジーンズにジャージって訳にもいかないでしょう」

 

そう言って思わず伊丹はクリスマスシーズ真っ盛りな装飾が施された街並み広がる景色に、目を輝かせて夢中になってるテュカと若干回復したのか栗林と傷の舐め合いを始めた虹像へ目を向けた。

 

「凄い、お祭りかしら?」

「栗林、俺にはわかるぞぉーその気持ち。俺も前に砲雷長だった友達の普段のバカな行いと実際奴が持ってるスペックのギャップにいく度となく苦しんだ事が――――」

 

セーターにジーンズと言う格好のテュカは言わずもながら、自身も受けた薔薇騎士団の拷問により元々着ていた衣服が破れさり廃棄された為に代用品のジャージを着こんで日本へやって来てしまった二人の服を整える必要があったからだ。両者の衣服は日本製であるのが、それ故に国会の参考人招集と言う場では相応しくない。何しろ公式の場だ、それ相応の格好をしないと失礼にあたるのだから。本来ならこういった配慮は栗林が担当するんだけども……現在彼女は機能不全の為にダメ。だから結果的にその代役が最もセンスの無い伊丹が担当する事になってしまったのだから救いが無い。富田やこの場に居ない倉田は兎も角、恐らく黒川あたりがいたらきっと必死に止めていただろう。

 

「適当に吊るしスーツでもいっか……」

 

……止めて欲しかった。

 

そんでもって紳士服などを専門として取り扱ってる量販店に到着した伊丹一行はテュカと虹像のスーツを見繕う事になり、テュカの分は店員さんの手腕によってあっさりと終わった。しかし虹像のスーツを選ぶ事になった途端、それに待ったをかける人物達がいた。

 

「駄目だ。艦長には赤いシャツに―――――のブランドが一番だ」

「否だ401、それでは過去に身に着けて居たスーツとまるで変わらない。ならば新たなる試みとしてピンクのシャツと――――のブランドが好ましい」

「それこそ論外だ400。新たなる挑戦と言うなら私は緑を推す。そして――――が艦長にはピッタリだ」

 

虹像の連れであるメンタルモデルの姉妹達だ。彼女らの謎の拘りによって一番の安物のスーツのはずが何故か吊るしスーツの中で一番高い物となりその価格、テュカの倍以上。それに対しスーツの代金は経費とはして落される関係上から後からぐちぐちと小言を言われると予想し伊丹は悲鳴を上げそうになったのは語るまでも無いだろう。そして最終的な彼女達の討論の種となったのはシャツの色。その話し合いは熾烈を極め、それぞれ自分のイメージカラーを反映させようと彼女らしくも無く必死の様子だった。

 

「私は白も良いと思うな」

 

その討論に途中から何故かテュカが加わっていたのは謎である。伊丹はその討論の最中一応レレイやロォリィにもスーツを勧めたが、レレイは不要と答えロォリィは今着ているモノこそが神官としての正装だと断った。まぁレレイは民族衣装だと言える衣服ではあるので問題は無いが、ロォリィが着ているドレスは別だ。どう見てもゴシックドレスなので民族衣装と押し切るのは弱い……が、文化的な違いって事でゴリ押ししかないかぁ。なんて伊丹は目の前で繰り広げられている三姉妹+エルフの口論を見守るしかなかった。……そして当の本人は着せ替え人形のように真っ白く燃え尽きていたという。

そんでもって彼が正しく再起動したのはお昼ごはんでの席だった。出張費扱いで一食500円しか出ないようだったのだが、その500円で食べる料理がその再起動した虹像にとってはかなり衝撃的だった。

 

「高級料理である牛丼がたった500円……だと!?」

 

温暖化によって農地に適していた土地が限られていた元世界。唯でさえ一頭育てる際にも莫大な資金がかかってしまうオーガニックで育てられた牛は一般市民どころか富裕層でも中々手が出せない超が頭に付いてしまうほどの高級食材として君臨していた。だからこそ虹像はその牛肉が沢山入った牛丼がたった500円で食べられる事に驚愕を隠しきれていなかった。

 

「流石別世界の日本、侮れない」

「だなイオナ。いおりが良く食べたい食べたいと言っていた牛肉がこんなに簡単に……アイツを連れて来たかったぜ」

「艦長、速く食べろ。冷えるぞ」

「完全オーガニック……美味い」

 

虹像はバクバクと食べている400と402を見た途端、前の世界で培った価値観が馬鹿らしいと考え付いてしまい大人しく目の前に鎮座していた牛丼を頬張るのだった。

 

※※※

 

「いやぁ牛飯美味しかった」

「グーゾ―、アレは牛飯ではなく牛丼だ」

「だな。しっかし特地で食べた牛肉も合成肉や培養肉とかではなくオーガニックな肉だったとは驚いたよなぁ」

 

牛丼で腹を満たした俺達は国会議事堂へ訪れていた。石作りの歴史が感じさせるこの国の中心たる建物。俺の世界では既に海の中へと沈んだ過去の遺物なのだが、目の前に聳え立つそれは前の世界にて学んだ教科書に載っていた写真そのモノ。その事にやはりこの日本は自分の知っている日本ではないと改めて考えさせられた。そうこうしているうちにピニャ殿下とボーゼスさんとはここで一端のお別れをし、議事堂の係員により伊丹他レレイ、ロォリィそしてテュカと俺達3人が議事堂内部へと案内される。そんな中、最後尾を歩く俺はふと考えた。何だか面白くない……っと。

 

「形式ばってるのは王道だが面白くねぇ……メンドクサイ政治家達相手にどう面白おかしくするか考えなきゃなぁ」

 

それ加え恐らくだが流失した俺達に関する情報も今回の事で必ず質問される。その事に対しどう対処したのもか……俺の頭じゃ考え付かねぇぜ。ってか、こういう交渉事は群像が得意だったから丸投げしてたんだよなぁ、ここに来てアイツがどれだけ頑張ってたか身に染みる想いだぜ。何て考えながらも俺は移動中にイオナに頼んで作らせておいた物を身に着け、そして手に取り、何処か気が張っている重々しい雰囲気の通路を進み続ける。現在の時刻は日本時間にて14時ジャスト。参考人質疑の時間まで残り1時間を切っていたのだった。

 




さてさて、虹像君はどんな風に場を盛り上げてくれますかな???

一番印象強いキャラは?

  • コンゴウ
  • ヒエイ
  • ハルナ
  • キリシマ
  • タカオ
  • アタゴ
  • マヤ
  • チョウカイ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。