ほんへ
アレから互いに情報を交換し合った俺達はとりあえず、各自の出来る行動をした。
イオナと400、402に外の情報を取得させて、外気などに有害性などが含まれてないか徹底的に調べてもらい。無いと分かると俺と護衛の402を連れて外の探索を開始する。残りのメンバーは船に残ってセンサーなどの調整を行ってもらうからお留守番だ。
んで、まず俺達が外に出て第一目標兼最優先に発見しなきゃいけないモノとして指定したのは当然水と食料だ。一応艦内倉庫には5人で消費する量の1週間分あるが備蓄としてあるがそれも補給が無ければ何時かそこを付く。だからこそ、その二種類の確保を最優先として行動していた。ってか、人類俺一人だからマジで死活問題だ。
「けどまぁ、地上に出て改めて思うがここって異界なんだなぁ……」
「人類のデータベースに無い植物が多い。油断厳禁だ、特に拾い食いなんてしたら体にどんな影響があるか……」
「あっれれぇ? おっかしいぞぉ。何時の間に俺、拾い食いするような人間と思われてたんだ???」
「自分の胸に聞いてみると良い」
森に入って分かった事と言ったらまず植物の多さだ。森ってぐらいだから当然ではあるんだが、水没した日本ではもう見られなくなった絶滅した種やこれまで見た事の無い種まで……多彩な種類があって多分植物学者とか連れてきたら涎出して夢中になるぐらいには未確認の新種が多いんじゃないかな?
もちろん発見次第402に分析してもらって、データ撮りしてるけど中にはフグの毒の5万倍とか頭イカレた超危険な植物までありやがるからマジで油断が出来ねぇ。特にキノコなんてヤバいね。さっきちょっとうまそうなんて思い、見かけたキノコを口にしようとしたら402にバッシっと弾かれてそれを拾い分析した結果、内臓すら溶かす強酸液が中に含まれてるとか言われて肝っ玉冷やしたもん。まぁその結果このありさまなんですけど……ってか胸に手を当てても答えが出ねぇなぁ。
「しかし不思議だ」
「不思議? どうしてそう思うんだい?」
探索の合間で挟んだ休憩。それぞれちょうどいいサイズの石へ腰掛け、俺は持って来た水筒から神から毎月送られてくる茶葉で作ったお茶、略して神茶を注ぎ喉を潤す。あぁーうめぇ~ 流石神様ご用達の神茶だ、どんな状況でも美味めぇ。
「この環境には様々な植物が共存関係で点在している」
「まぁそれが森って奴だからな」
森は様々な植物が集まった結果生まれた名称。例えばA、Bと二つの植物があったとしよう。Aは繁殖能力は低いが強く、逞しい植物へと成長する。反対にBはよわよわしい植物ではあるものの、繁殖能力が高くて少ない栄養でも十分に育つ。Aは長く生きながらも死した際は高い栄養素の塊となり、Bはその栄養を吸い取って数多く繁殖していく。そのようなやり取りが様々な植物の間でなされた結果、やがては林となり、木々が数多く生えることになり森となる。まぁ、例えは悪いがつまりは何が言いたいかって言うと森って言うのは植物同士の共依存によって生まれた概念とも言える。だからこそ402が言った事はある種、当たり前って奴だ。だからこそ、その事を再確認する必要は無いと思うんだがなあ……
「しかし、この森には決定的に足りない部分がある」
「って言うと?」
「……動物、もっと言うと草食動物やそれを狩る肉食動物を見なかった事だ」
確かに、その言い分に納得できる部分もある。探索は今回で三回目だ。虫ならそんじょそこらを探したら見つかるだろうけど既に合計で12時間ほどこの森を探索しているがただ一度も動物を見たことが無い。こんな草木が生い茂り、自然豊かな場所でそんな事あり得るのだろうか?
「ぐ、偶然だろ?」
「確かに、私も偶然野生動物に遭遇しなかっただけとも考えた。現にこの森には野性生物がいると証明する痕跡があちらこちらに見受けられるからな」
そぉーういえば探索の途中、ちょこちょこ獣道っぽいのとか明らかに何かの糞だろ的な臭いがしてたなぁ……
「でも、一度も遭遇しないのは明らかにおかしい。401が記録していたデータによると地上の野生動物と言うのは自身のテリトリーを決め、そこに住み着くと言う。だとしたら人為的に狩りを行い個体数が減るような事が無い限り、私達は何かしらの野生生物のテリトリーに入って一度は遭遇しているはずだ」
「むぅ……」
そこまで言われると確かに怪しくなってくる。その言い分がもし正しいとしたら、俺達以外の何かしらの知的生命体的な原住民が住み着いている事になるからな。それに接触するとしてもここは異界、相手が俺達と同じ人型である可能性も五分五分だからやるならやるでちゃんと準備を整えてなるべく穏便に接触したいものだ。そうこう考えていると俺のポケットにてプルプルプルプルとコール音。そういえば定時連絡の時間だったな。
「ハイ千早デース、何か御用でしょうか?」
【豚骨ラーメン1、ニンニク油もやしマシマシの固麺で】
「了解ー……ってイオナさんやい、それって食べたら確実に胃もたれする奴ですよね?」
定時連絡で毎度やるあいさつ代わりのパーフェクト・コミュニケーションッ! 流石はイオナだぜ、俺の考えが読めるんじゃないかと思うぐらいに俺のやりたい事をやってくれる。そこに痺れるねぇ、憧れるねぇ。
【艦長、報告頼む】
「えぇ~、探索からかれこれ……」
402へ目を向けると指し示す反り立つ指が二本。あ、もうそんなに時間が経ってたんですね。
「二時間程度、異常は402が違和感を感じたぐらいで別に無いかな。詳しく聞きたいなら402に概念伝達して聞いてくれ、その方が速い」
【了解した。後程402にその違和感に関する情報を送ってもらう。それで次はこちらの状況だが────】
イオナと400を残したのには理由がある。もちろん突然襲って来るであろう危険に対する保険って意味合いもあるが、本当はそれよりも船体に起こっている問題解決の為に動いてもらっている。
さてここで問題、この場所は何ぉー処だ? 正解は森、より正確に言うと地上だ。潜水艦であるイオナが身動き取れるはずも無く移動不可能な状態で現在、地面の上で鎮座している。んで、そんな状態を何とか打開できないかと二人には船に残ってもらってたって訳だ。
【────水上レーダーを調整して何とか地上でも広範囲の索敵を可能にした】
「おぉーそれは朗報だな」
【まだある。イ400と解決案を探った結果、何とか船を使った地上での移動手段に目途が立った】
おぉー 流石イオナちゃん。何かしらの解決案を実行したな? きっと俺だったら考え付くのに半月はかかるほどのスッゴイ方法なんだろうなぁー
【シミュレーションでは成功したがテストはまだ行っていない。とりあえずそのテストは艦長達が帰還後に行おうと考えているがそれでいい?】
「OKOK、そんじゃ俺達もそろそろ帰るよ。出迎えよろしくぅー」
【わかった。クラッカー構えて待ってる】
「……そのクラッカー、手榴弾の隠語だったりしないよね?」
【……通信終了】
あ、通信切りやがった。アレか? 図星だったのか? だとしたらぜってぇなんかやるつもりだな? これは覚悟して帰らないと、ほんっと誰に似て悪戯好きになったんだか……
「終わったか?」
なぁーんて考えてたらいつの間にか隣に座って俺の神茶の残りを啜る402が……って、勝手に飲むなよ。俺のお茶なのに……
「終わった終わった。ってか通信端末にリアルタイムでデータリンクしてる癖に何で聞いて来るんだよ」
「人間らしい行動を取るべきだと401から受諾したデータには書いてあった。私はそれを実行したまで……ふむ、コレが美味いと言う感覚か。何とも不思議な感覚だな」
「こ、コイツ。俺のお茶に既に虜になってやがる……ま、いっか。そんじゃ後5分休憩したら帰ろうか」
「了解した」
俺は背負っているバックパックから新しいコップを取り出すと神茶を注いで一休みを続行する。
こうして二人揃ってお茶に舌鼓させ、喉を潤わせながらのんびりとした時間は過ぎて行ったのだった────
「誰だあの人間達」
「見た事も無い服装だな……もしや帝国の?」
「分からんっが、とりあえずは奴らの後をつけてみるか」
────二人を見つめる、3つの視線など気付かずに。
誤字報告も気軽にしてくれてもいいのよ!