ほんへ
「なぁ、アイツらってホントに帝国の奴らなのか? 偵察にしてはヤケに森を歩き馴れて無いみたいだが……」
「さぁて、な。それは俺にも分からんが用心に越した事もあるまい。……だよな、ホドリュー」
「んぁ? あ、あぁそうだな。村の外を旅して来た俺もあんな服装は見た事無いし正直に言うがかなり興味深い奴ではあったな」
虹像と402がイオナ達の知らせを受けてイ401に到着する少し前。生い茂る林をかき分け、えっちらおっちらと帰る二人の背後を三人の男達が後をつけていた。
手には弓を持ち、腰にはマチェットの身に着けていて戦士と言うよりも狩人のイメージ強い三人組は揃って同じような特徴を持っており、太陽に照らされて美しく輝く髪を風で靡かせながらも気配を馴れた手つきで気配を消して行動する。長い耳にて相手の居場所を探る三人の姿はまさに皆がイメージするファンタジーに登場するエルフそのものであった。そしてそのエルフの三人組は無駄口を叩きながらも獲物である虹像達の姿を捉え続け、自身の扱う弓の射程に収め続ける。
「ホドリュー……お前、また女の事考えてたな?」
「っゲ! そ、そんな事ぉー無いよ」
「あんまりハメ外してっとまたテュカちゃんに怒られるぞ」
「ヤダぁ~! また娘に怒られるのはやだぁ~!」
何とふざけ、ありきたりな普通な会話。しかし会話している本人達の纏っている雰囲気は狩人の度を越している。殺気を隠し、全力で気配を消しながら追いかけるその姿は何処から見ても暗殺者の他ならない……が、本人達はその事に気付いてない為に完全に台無しである。
そんな彼らが汗水垂らし、"早く帰ってご飯食べたぁーい! " "分かった、帰ったら食事の支度をしてやろう。最近気になるレシピを発見したのでな" "やったぁー 流石はお母さんだぜ! " "誰が母か" なんて会話している二人を追って行くとふと、1人が立ち止まる。
「どうした、ホール」
「────」
ホールと呼ばれたこのエルフ。突然しゃがみ、土の様子を確かめると周りをきょろきょろと観察し始めた。それに疑問を感じ、他二人もきょろきょろと見回してみるが何の変哲もない光景に疑問を浮かべるばかりである。
けれどホールは三人の中で、今いる地点方面への森の偵察を長くやって来た人物だった。だからこそ、彼だけが疑問に思い確かめ、そして感じ取った。この場所に何か違和感があるっと。
「デイブ。何かおかしくないか、この場所」
「何を言い出すんだ。何処にもおかしなところなんて──―むむ? 確かに言われてみれば何だか風の巡りに違和感があるような……」
ホールは風を読み取るのが村で一番上手い。そのおかげでホドリューに並ぶ弓の名手だと言われている彼は、デイブの疑問に答えるかのように疑問を感じ取る事が出来た。彼の感じる森の中での風は基本には規則的だ。ある種のパターンが複数存在しており、それを全て記憶しているからこそ彼が風を読むのが上手い。だからこそ、彼はそのどれにも当てはまらない風の流れに違和感を覚える。基本風の流れが変わるのは木の成長速度や森を襲う厄災に関係するが、今感じとれているほど、大きくは変わらない。それこそ何かしらがの障害が風の流れを遮っているか、一気に木々が刈り取られなければありえない話しだ。
「……何か不味い予感がする」
「あぁ、それは俺も同感だ」
二人の狩人は長年の経験から察知し、判断する。この異常事態を。そして悪い事と言うのは続くもので自然に監視対象であった二人を見張っていたホリューが何か焦った様子で二人の元へと走って来た。
「や、ヤバイぞ二人共。あの二人、高度な魔法が使える大賢者かもしれない!」
「何ッ!」
「嘘だろ!」
二人は一瞬その言葉を疑った。耳にした言葉があまりにも信じられない言葉だった為だ。
賢者。それは精霊魔法の扱いに長けるエルフと同等、もしくはそれ以上に魔法に対し理解を深めている魔法使いなどを指す言葉。魔法を学び、そして探求する学者の集う街である学都ロンデル。そこで寿命が長く、精霊魔法に長けたエルフであっても合格が難しい試験をいくつも突破して得られる称号。だからこそ賢者の称号を持つ者は実力者であり、そんな者があんな風に山をえっちらこっちらと歩いているのは意外。本来なら違うと思う所なんだが、それを報告したのはエルフでも珍しい外を長い間旅して来たホドリューだった為にそれを信じる他なかった。
「目を逸らさずに見ていたんだが急に二人がふっと姿を消したんだ。こんな事が出来るのは高度な魔術が扱える魔法使いのみ、だからあの二人が賢者だと判断した」
「マジかよ……透明化、か。確か精霊魔法でもかなり難しい分類の魔法で俺達の中でも使える奴は五本の指に入る程度、ましては人間の魔法使いでは到底不可能な魔法だよな」
「あぁ、ならホドリューの言い分も納得だな」
額に汗を浮かばせ、ホドリューの見つめる二人の消えた場所へと目を向ける。そこは何の変哲もないただの森が広がる何時もの光景。だからこそエルフの、特にホールとデイブは恐怖した。理不尽な存在が、もしかしたら使徒にも並ぶ存在がいるのではないかと考えて。
「……」
そして全く同じタイミングでホドリューは何となく気になってしまった。何故このタイミングで透明化を使ったのかという事を。最初から使って見つからないように動くならまだしも、何故今になって……。
「……ッ!」
結論にたどり着いたホドリューは激しく後悔する。同じ種族であるエルフ達から十二英傑と英雄視されていた為に生まれた自身の傲慢と、警戒心の無さを。
二人が透明化した理由、それつまりはこちらの存在に気付いたからに他ならないからだと気付いたからだ。
「二人共弓を取れ、本当に不味い事になった」
「ッ!」
「ッ!」
ホドリューの切羽詰まったかのような声。それで只事ではない状態が発生しているのだと悟った二人は素早く弓を取り、背中合わせで全方位を警戒する。
エルフの優れた能力である聴力に、森で鍛えた動体視力。この二つを組み合わさる事によってどんな変化も見逃さない、陣形となった。
「敵は二人、透明化しててこちらの存在に既に気付いている」
「やべぇって、やべぇって!」
「オイデイブ、取り乱すな!」
神経が昂り、額に汗が流れる。敵がどんな攻撃をしてくるのか分からない以上、どんな事にだって対応できる臨機応変さが試される。それが分かっているからこそ彼らの生存本能が高ぶり、様々な変化に対応できるように警戒していた。1分、2分と体感では1,2時間たっているような拷問のような時間が流れ……やがては変化が訪れる。
「いつでも来い、絶対に弓を命中させてやるッ」
奥の手で使う彼の知っている金属の中で一番硬いと言われるミスリルを矢じりにした矢をセットして構えている最中、それは起こった。
「……は?」
「……なんだ、こりゃ」
ホドリュー、ホールの両者の視界が青に染まった。いや、より正確に表すと青色の鉄。突如として出現した謎の存在にホドリューとホールの頭がフリーズし、対応できない。だからこそであろう、三人中ですぐさま対応出来たのが一番取り乱していて反対側を警戒していたデイブだったのは。
「ッ! 二人共正気に戻れ!」
「!」
「! あ、あぁすまねぇ」
デイブに鼓舞された二人はすぐさまフリーズが解けると、改めてその青い色の鉄の物体へと警戒を強めた。突然出現した謎の物体。恐らくはホールが感じていた違和感も、デイブが感じていたおかしな風の流れも、コレが原因だと二人はすぐに覚った。だが、同時に疑問にも思った。何故こんなものがこんな場所に……っと。反対にホドリューはその青い鉄の物体に何処か既視感を感じていた。昔何処かで見たような、そんな感覚を────
三名それぞれで思考を巡らせ、考える。警戒は解くことはせずにこの目の前にある物の正体を思考していた最中、突然頭上で何かが聞え、思わず顔を上げた。
「Etto,konnitiwa! Kotobatuujitemasuka?」
そこには聞いた事も無い言語を喋る先ほど追っていた人物達の片割れが多分手摺と思わしき物に寄りかかりながら、こちらへ手を振っているのだった。
やっとゲート側の原作キャラ(外伝)出せたよ。