ほんへ
【つまりなんだ、お前らは何処か遠くの国から飛んで来たって事か?】
「そう、そぉーなんだよエルフのダンナ! 俺たちは乗ってる船ごとこの場所へ来ちまったって事さ!」
翻訳機越しに聞こえる日本語。独自の言語を少ない情報から無理矢理翻訳した声は何処か機械的ではあるが、ちゃんと意味のある言葉だ。ってか、ぶっちゃけイオナボイスで喋ってるもんだからギャップがヤバイな。
イオナが気付いた原住民、呼称を仮に
でもさ、ここで一つ問題が発生する。なんと言葉が通じなかったのだ!
その影響でファーストコンタクトはてんてこまい。現人達は俺たちの言葉が分からずパニックになってこちらに弓を向け、俺は俺で敵対の意思が無いとジェスチャー込みで何とか伝えようと苦悩する。側から見れば地獄絵図のような状態が完成してしまった。
そんな状況に陥りってこりゃダメかと諦めかけた諦めかけたその時、この俺と話している現人の────エルフのダンナが助けてくれたんだ。
パニックになって弓を向けていた仲間のエルフをぶっ飛ばし、こちらへ理解不能の言語を叫ぶと頭を下げた。その時俺は悟ったね、この人には俺たちに敵対の意思が無いと伝わった事を。それからはトントン拍子で物事が進み、簡単な質問を行い、ある程度の言語が分かってくるとイオナがリアルタイムで言語を解析して修正する翻訳機を作り出して今に至るって訳だ。
「しかしお前達も災難だな……※※のカゴを受けたってのにそんな厄介な目に遭うなんて」
「まぁなぁー 絶対に負けられない勝っても生き残る可能性が低い賭けの戦いだったし。それに勝って、こうして生きてるだけ儲け物よぉ」
んで、試しに俺達の状況を簡易的に説明してみるとファンタジーでお馴染みの閉鎖的な種族と言う認識をぶっ飛ばすほどに柔軟な思考をしてる人だったようで、割とすんなり信じてくれてビックリした。話を聞いていくとどうやらこの世界には魔法があるらしく、それが理由との事。
俺は魔法の存在があると聞き、魔法=王道ファンタジーと気付いた瞬間、脳内で――――
――――ってな具合で前世での記録にあったネットミームである連邦軍に反旗を翻すダンスを踊ってたわ。やべぇぞやべぇーぞ。魔法とかテンション上がってくるぅー!!!
「お、オイホドリュー ソイツは大丈夫なのか?」
「デイブはビビリ過ぎなんだよ。ほら、ホールとか見て見ろよ。あの青い娘にお茶なんてもらって……う、羨ましくないんだからね!」
……イオナ、翻訳機がバグってんぞ。突然の明らかなツンデレボイスでビビったわ。ってか何でCVタカオ?
「すまない虹像。400と402にも手伝ってもらってるからどちらかの影響でバグが生じた。次は無い」
「まじか、そんなに翻訳作業って難しいのか」
「難しい」
現在リアルタイムで翻訳作業中のイオナによるとエルフ達が話す言葉は地球のどの言語にも当てはまらない独自の言語。情報も最初に質問した内容のモノと今喋っている内容しかサンプルがないから会話しながらそれを読み取って解析し翻訳するしかなく、一人では処理が追い付かないので二人に演算を助けてもらっているんだって。そりゃ知識ゼロで一つの言語を理解しようとしてんだ、かなり難しいだろうなぁ。……まぁ、当の本人は暢気にお茶なんか啜ってるけど。
「すまねぇな嬢ちゃん、俺なんかに茶何て注いでもらって」
「問題ない。一先ずの目標は友好的な交流。そのためにパニック症状から切り替える為に暖かい飲み物を飲んでリラックスするのは大切だ。沢山飲むと良い」
「あぁ……難しい事は何言ってるか分かんねぇが、落ち着くのは確かに大切だな。にしてもこの茶うめぇ」
神様直送の俺が誇る自慢の一品だからな、当然だろ。まぁこうやってのんびりと時間が経ち、色々と翻訳作業の為と称してお話し続けていると唯一警戒していたデイブさんは警戒心を解き、イオナと会話を続ける。んで、そうこうしているうちに俺が話していた相手であるホドリューのダンナがこんな事を言い始めた。
「そういえばグーゾー」
「発音が難しいんだろうがぐーぞーじゃなくて虹像だぞ。あとどうしたダンナ、何か気になる事でもあったか?」
「いや、お前らの境遇を考えると食料に困ってるじゃないかと思ってな。お前ら食える物とか注意する物、なんならこの大陸の事なんもしらねぇだろ」
「まぁ確かに。俺達のいた
「いや、何。お前達を俺達の村へ招待しようと思ってな」
「――――!」
突然の生活圏への招待。確かに彼の言う通り俺達はこの世界へ来たばかりでこの世界に関する文化だの生態など、何にも知らない新参者だ。情報を提供しようと言う提案は確かにありがたい事が甘い話には何かしらの裏があるモノが世の摂理。会話での駆け引きは正直苦手だが、何とか聞き出してみるか。
「ん~、確かにそれはありがたい提案だなぁ」
「だろぉー! だから一緒に来てみないか? 色々と教えるからさ―――」
「ふむ、だがこちらのメリットばかりでそちらに利点が無い……何か理由があるのか?」
「ん? あぁ、いやぁーそのぉー」
言葉を濁し目をキョロキョロとさせるダンナ。何か焦ってるって感じで動かしては無く、何かをチラチラと見ている風に感じた俺は目線の先を追ってみるっと。
「へぇイオナちゃんって大体なんでも出来るんだなぁ」
「データさえあれば可能。不可能は今の所ほとんどない」
「データってのは何を指しているのか学の無い俺らには分からんがとりあえず、娘っ子が凄いのは分かった。若い人間なのに努力を重ねたんだんぁ」
「ん?」
……イオナか。
「オメェイオナが狙いか?」
態度が急変し驚くエルフ改めエロフ。何だコイツ、イオナを狙って村へ連れ込もうとしてる魂胆じゃねぇか。アイツの相棒である立場の人間は許せねぇなぁ!
「い、いや違う違う! ちゃんと理由を聞いてくれ!」
必死に弁解しているようだがもう遅いぞクソエロフ。俺の地雷を綺麗に踏み抜いたんだからなぁ!
【落ち着け艦長】
よ、400! 翻訳機から聞こえるは艦内で作業中のははずの400の声。そうか、この翻訳機って通信機としても使えるのか。
【感情的に動いても後々に不利益を被るだけだ。それが例え401を狙った誘いだとしてもこの世界に関しての情報を得る機会をみすみす逃すのは惜しい。此処は感情を殺し、誘いに乗るべきだと私は考える】
……確かに。感情論を捨てて合理的に考えたらそうだな。俺達はとにかく情報が欠如し、現状すらおおまかにしかわかっていない。だからその欠如した情報を得るチャンスを潰すのを良しとしないのも分かる。だが、俺の心が"エロフ死すべし、慈悲などいらぬッ!"って叫んでんだよぉ!!!
「……一応理由を聞こう」
だが、だがッ! 俺は一応は一隻の船の指揮を任せられた艦長。どんな場合でも冷静に対処する事が大切だと知っている。だから俺は怒りを理性でねじ伏せ、相手の言い分を聞く事にした。え? 今こんな時にそんな事をするのはおかしいだって? ……黙れk―――
「じ、実は――――」
彼の言い分は実にシンプルだった。自分達の知っている情報を提供するので外の世界に関する情報を提供してほしいって言うモノだった。まぁつまりは情報交換してほしいって事だったのさ。最初からそう言えよと思わない事も無いが……好奇心の強そうな様子の彼の言う事だ、偽っては無いだろう。
「分かった」
「って事は……」
「貴方からのエルフの村への招待、受けよう」
新世界に来て数日、俺達は未知の生態系を得て進化したと思われる種族であるエルフの男の招待を得て今、これまた未知の環境へと踏み出した……っと思う。
コメント、誤字報告まってまぁーっす。