ゲート 蒼い鋼が何故そこに……   作:サソリス

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【7】

 何気ない日常。切り替わった日常。エルフと交流を得た結果俺達の得た日常がそこにあった。まぁ、今は俺のソウルメイトたるイオナが居ないのでちょいと寂しいけどね。ゆっくりしておけって言ったはいいけど早く終わんねぇ―かなぁー

 

「そういえば虹像」

「はいはい虹像です」

「外が騒がしいみたいだけど何かあったのかな?」

 

 神茶を飲もうと思ったが一度停止。ノイズキャンセラーが自動発動していた為に俺は分からなかったがテュカには何か聞こえたらしく忙しなく外を気にしてやがる。何だぁ? っと思い立ったが吉日。席を離れてドアをオープン! そして外の景色を眺め────た。

 

「テュカ」

 

「何ぃ? 何かそとであってるの?」

 

「……今すぐ逃げる準備をしろ」

 

「え?」

 

 外の景色は赤一色に染まっていた。ノイズキャンセルを切ると過剰なほどの外の音声が拾われ、耳を疑う音が俺の耳へと届けられる。短直に言えば悲鳴だ。逃げ叫ぶ声に助けを求める声で呼び覚まされるのは過去に経験した4か月戦争。そして眼前には美しかった村が燃え盛る光景。つまりは地獄絵図と言って差し支えない状態だ。

 

「身支度を済ませろ。急げぇッ!!!」

 

 俺の態度の急変に余程の事と察知してくれたテュカは急いで準備を始めた。俺はその間懐から取り出すはイオナとは別の相棒。

 その銃に銃口は無い。銃身は無い。唯あるのは回転式の六発の弾倉を供えたシリンダーと二本の展開式のレールのみ。そしてその名は────AP-999式リボルバーだ。

 

 俺が監督しイオナとヒュウガが製作してくれてるのもあって霧の扱ってる技術が盛り込まれている為に威力は折り紙付き、護身用の銃でありながら前の世界で言う所対物ライフルと同等の威力を誇っている。まぁ、霧の砲と同じ技術らしいから納得の威力ではあるんだけどね。だからこそ俺はコレを使う羽目になるだなんて思っても見なかったゾッ! 

 

「準備は出来たな、逃げるぞ!」

「う、うん!」

 

 テュカが準備を整えたのを確認すると俺は彼女の手を取り走り出した。

 

 

 

 

 

 外に出るとハッキリする。ここは、地獄だ。

 

「え、コレって────」

「構ってる暇はない、今はとにかく走れッ!!!」

 

 燃え盛る町の中を走り続ける。その途中には瓦礫の下敷きになったであろうトランプ仲間の奥様の姿や、燃え盛り悲鳴を上げている料理仲間のおっさん。関わり合いのある人間じゃない人間まで命を散らし、この場には死が蔓延していた。

 

「うぅ……」

「泣く暇はねぇ」

 

 だからこそ、そんな場に馴れていないテュカは耐えられる訳も無く涙を流す。

 それは死にゆく友を憂いてか、あるは故郷が燃える光景を目の当たりにしたためか、俺には分からない。って言うかイオナ達が全く使えないタイミングでこんな事に合うだなんて不幸すぎるぞコノヤロウッ! 

 

「テュカ!」

「お父さん!」

 

 なぁーんて憂いていたら迫り来るホドリューのダンナ発見! ダンナァー何なんですこの状況は! 

 

「無事だったか二人共」

「二人揃って怪我一つない状態なんで状況の説明をお願いしますよダンナァ!」

「そーだよお父さん、何でこんな酷い状況に……」

 

 二人揃って問いただすと興奮した俺達を落ち着かせる。FOOOOOO! どういう事なんだFOOOOO!!! 

 

「まずはアレを見ろ。アレがこの惨劇の原因だ」

 

 ダンナが指を指す方、つまり俺達は空を見上げた。そしてそこには────巨大な何かがそこにいた。

 

 真っ赤な鱗が燃え盛る火の光によって反射し輝き、その巨大な一対の羽によって広大な空を舞うその姿を目した途端、俺の脳裏にはある空想上の生き物が浮かぶ。

 

「ドラゴン、だと」

 

 鋭いかぎ爪や刃を持つそれは火を吐きながら地上で逃げ惑うエルフを襲う。

 その様子は蹂躪と言っても差し支えない光景で過去に見た光景とダブって正直吐き気がするぜ。コレはアレかな? フラッシュバックって奴かな? 

 

「エンリュウ……何故今」

 

 えんりゅう……縁竜……いや、炎龍か。火炎を拭く龍と書いて炎龍……そのまんまだな。クソが、リアルドラゴンとはイオナと一緒の時に出会いたかったぜ! 残弾を確認し予備の弾丸を確認する。予備は6発か……貫鉄90㎜であの鱗を貫通できっかな? 

 

「テュカ、アレは持って来たか」

 

「う、うん!」

 

 俺が考えてる間二人は話、テュカが取り出すは数本の矢。その矢先には前に教えてもらった綺麗な銀のような合金、ミスリルが矢じりとして取り付けられいた。あれ、アレって確か前に二人で飲んだ時にホドリューのダンナが自慢してた貴重な物じゃ……

 

「まさかお父さん、戦おうとしてるの!」

 

「あぁ、そうだ」

 

 マジぃ? あんな巨大な相手にちんけな弓と矢で? 正気かな? いや、狂気だな。

 

「だったら私も……」

 

 え、狂気が伝播したぞ。負の連鎖かな? まぁ、俺も行こうとしてる人間の1人なんだけど。反射的に拳銃を構えようとしたところ「やめんか!」っとダンナの怒号が響き、ふと霧に寝返ったとされる父を思い出した。俺も悪い事をしてああやって叱られたっけ……懐かしい。それはテュカも同様だったようでその怒号で自分の持つ矢へと伸ばす手を止めた。

 

「どうして?」

「君は、君達は逃げるんだ」

「何故だダンナ。ダンナが戦うと言うなら俺達も行くに決まってるだろうが」

「そうよ!」

「駄目だ。虹像くんやテュカに万一のことがあったら、俺はお母さんやあのお嬢ちゃん達に顔向け出来ないよ」

 

 あ、そういえばダンナには死別した奥さんがいたって聞いたな……いつも女遊びばっかりしてるから忘れてたけど。でも、そう考えりゃそりゃそうか。残された娘であるテュカに何かあったりしたらその奥さんに怒られるもんね、戦場に連れていける訳ねぇよな。あぁー、ヤバイ。多分同年代ぐらい子が普通に戦場に出てた戦場ばっかりだったから軽く俺の中の価値観も狂ってたわ。コレは今度400辺りに心理カウンセリング頼む必要が出て来るかも。

 

「……OK把握。逃げるぞテュカ」

 

俺はテュカの腕を掴み再度逃げようとする……が、動かない。

 

「私は、残る」

 

マジかよ。この子覚悟完了しちゃってますよ。親の心子知らずとはこの事か!

効果があるか分からないが懐に忍ばせた護身用の睡眠薬でもう眠らせてしまおうかと考え出したその時、状況に変化が起こる。

 

「っち、降りて来たか」

 

炎龍は炎を吐くのが飽きたのか地上に降り、エルフを襲い始めた。そのあまりの光景にテュカは言葉を失いた。正直俺もアレは直視するのは辛いぜ。だがエルフ達もタダで殺される訳も無く、各々エルフの戦士たちはホドリューのダンナ同様弓と矢を持ち抵抗する。だけども、そのような棒きれ程度の矢では見ただけでも強固だと分かる鱗を貫通する事など出来るはずも無く弾かれるだけ。

 

「時間がないな」

 

弄んでいる。見ただけでもそれが分かるほどに好き勝手してる炎龍は見てるだけでなんでも屋(パンドラボックス)と敵対組織に呼ばれてたらしい俺でも流石に頭にくるぜ。

 

「ほらテュカ、早く逃げ――――ッ!」

 

こっちを見た。目が合ってしまった。

 

「逃げろ、二人共!!!」

 

ホドリューは即座に矢を構え、放つ。そしてそれと同時に俺達は直走った。迫り来る炎龍の脅威から逃げる為に。

背後では炎龍の咆哮。ふと振り向いて炎龍を見てみると左目から出血しているのが丁度見えた。多分ホドリューのダンナがぶち抜いたんだろ。流石は英雄だ、緊急時だってのに良い腕だ。

 

「あぁ、お父さん……」

 

「オラオラオラ逃げ舵にげろぉー!!!」

 

走る走る走る。左右は火の手が回って曲がる事が出来ず、必然的に真っすぐ直走る! どこまで続いているか分からない。けど、多分どっかの出口にはつながってるだろう。そう考え俺はある種の放心状態のテュカを引っ張り走った。けど、どうやら今回はオレに備わる悪運が強く働いたらしい。

 

「ッゲ、行き止まりってマジぃ?」

 

燃え盛る火の手は等々俺達の行く先まで塞ぎやがった。後ろを振り返るに迫って来る炎龍。その目は明らかにこの行為を楽しみ、俺達を食わんとしてる事を察しさせる狩人の目をしてた。

 

「逃げる場所逃げる場所逃げ場――――って、ミッケ!」

 

流石俺の悪運、悪い事にも土壇場では良い事にも働くぜ!

見付けたは古井戸。大きさは俺とテュカが入っても十分余力がある大きさでご都合主義化の如く水が張り、水深も深そうだ。こりゃ入り込むしか俺達に選択権がねぇ!

 

「ほらテュカ井戸に入るんだ!」

 

「お父さん、お父さん」

 

先にテュカを入れようと俺は動くが彼女は炎龍の方に釘付けになってて動かねぇ。

 

「すまん、テュカ」

 

「えぇ!?」

 

だから俺は抱え、彼女の意志に関係無しに井戸へ落とす。ジャボンと彼女が落ちた事を確認すると俺も中へ入るべく井戸へと足をかける……が。

 

〖GAAAAAAAA!!!!〗

 

その直前、背中に猛烈な痛みが走りほとんどの感覚が消えた。そして身動き出来ない状況で落ち行く俺の体は水面に叩きつけられた事により、イオナとの撃沈以来久しぶりに意識を失った。

 

※※※

 

「い、伊丹隊長!」

 

特地派遣、伊丹耀司率いる第3偵察隊は炎龍によって燃え尽きたエルフの町を訪れていた。生存者捜索の為、様々な場所を回るがどこもかしこも燃え尽きた遺体や家の跡ばかり。生き残りは誰もいないだろうと諦め、水を求める為に伊丹は井戸へと樽を投げ込む。

 

「生存者二名確認!」

 

そして――――この村の生き残りを発見したのだった。

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