ウルトラマンディサイド   作:桂ヒナギク

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1.ディサイド

 地球。

 みんなもよく知っている世界に似たその惑星には、怪獣やウルトラマンは存在しなかった。

 この物語の主人公、大空(おおぞら) 新一(しんいち)は、テレビの中にだけ存在する、ウルトラシリーズ作品の大ファンである。好きなウルトラマンはレオ。

「新一、夢子ちゃんが来たわよ」

(夢子だって?)

「いないって言って!」

 扉が開き、醜い顔の女が入ってくる。

「新一くん、照れなくていいのよ」

「照れてなんかいねえわ!」

「またまた」

「言っただろ、もう来んなって!」

「なんでよ?」

「俺はお前には興味ねえんだよ!」

 ぐすん、と涙を流し始める夢子。

「そんな。新一くんは私が嫌いなのね」

「あ、いや、そうとは言ってないけど」

「じゃあ好き?」

(気持ち悪いなこいつ)

「あ、あのさ、夢子? 俺はね、何度も言ったけど、女の子と付き合うつもりは、今はないんだ」

「私にはあるわ」

「お前にあっても俺にはねえんだよ!」

「いいわ。いつかあなたが付き合ってくれるまで、毎日来てあげる」

「いや、もう来なくていいよ」

 夢子が部屋を出ていく。

 入れ替わりに母親がやってくる。

「あんた、夢子ちゃんと付き合ってあげなさいよ」

「なんでだよ?」

「だってあんた、彼女いないんでしょ? 夢子ちゃん、いい子よ」

「母さんには関係ねえだろ」

「関係あるわよ。あんたに子どもができなきゃ、うちの血筋が途絶えるでしょ」

「血筋ってなんだよ?」

「え? 私、そんなこと言ったかしら?」

「言っただろ」

「気にしなくていいわよ」

 母親は出て行った。

(なんなんだよ?)

「きゃああああ!」

 外から夢子の悲鳴が聞こえてきた。

「どうし……!?」

 新一が窓越しに表を見ると、夢子が怪人に襲われていた。

(なんだあれ? 映画の撮影か?)

「助けて!」

(ではなさそうだ)

 新一は表に出ると、怪人を蹴り飛ばした。

「お前、正体を見せろ!」

「グギギ……」

(言葉が通じないのか?)

 怪人が新一を凝視すると、その目が光った。

「……?」

 怪人はその場から逃げ出す。

「新一くん、助かったわ」

「襲われる心当たりは?」

「ないわよ」

「着ぐるみってことは、正体を隠したいのか」

「あれは着ぐるみじゃないわよ」

 と、どこからか女性の声が聞こえた。

「え?」

 声のした方を見ると、端正な顔立ちをした女性が、電柱の上に立っていた。

 女性は電柱を蹴ると、飛び降りて着地した。

「久しぶりね、ディサイド」

「ディサイド?」

「あら? ディサイドリングはどうしたの?」

「結婚はしない主義だ!」

「そもそも私を覚えていないみたいね」

「誰だよあんた?」

三鶴城(みつるぎ) 香奈子(かなこ)よ。香奈子でいいわ」

「その香奈子さんは、俺を知ってるのか?」

「リングを見つけなさい」

 夢子が新一に訊ねる。

「誰と話してるの?」

(こいつ、夢子には見えないのか?)

 香奈子は夢子を見る。

「これ、あなたの彼女?」

「違うよ」

「ならいいわね」

 香奈子が夢子の体に入り込む。

「え?」

 力を失った夢子が崩れる。

「夢子?」

 夢子が光に包まれ、香奈子の姿になり、起き上がった。

(なんだ?)

「しばらく借りるわよ……って、聞こえないか」

「お前何者なんだ?」

「答える必要はないわ」

「そうかよ」

 新一は家に入る。

「母さん!」

「どうしたの?」

「見知らぬ女が指輪知らねえかだって」

「指輪?」

「ディサイドリングって言ってた」

「ディサイドリング!?」

「知ってるのか?」

 母親が不思議な形をしたリングを取り出す。

「あなたが産まれた時にはめていたものよ」

「赤ん坊が指輪なんかはめて産まれるかよ」

「あなたはね、特別な使命を持って産まれてきたのよ」

「はあ?」

 母親がリングを渡す。

「これをはめれば、あなたは力を取り戻すわ。けど、それは過酷な運命よ」

「力?」

「行くのよ、ディサイド」

「母さんまで。ディサイドってなんだよ?」

「話はまとまったみたいね。行くわよ」

 と、香奈子が入ってくる。

「ここ俺の家……」

 香奈子は新一の手を掴むと、外へと駆け出した。

「おい、ちょっと!」

 二人の前に線路が出現し、列車がやってくる。

「ディシディア。これに乗れば、あらゆる世界に行けるわ。この星に怪人が現れたのも、世界の滅びが始まってるからよ」

「ちょっと待て! 何がなんだかわからない!」

「説明してる暇はないわ」

 香奈子が新一を強引に列車へ乗せる。

 扉が閉まり、走り出す列車。

 列車は異空間へ突入し、別世界へと向かう。

「どこへ向かってるんだ?」

「ウルトラマンレオの世界よ」

「なるほど。レオの撮影現場へ行こうってわけだな」

「撮影? なんの話?」

「ウルトラマンはな、実在しないんだよ」

「そういうこと」

 不敵に微笑む香奈子。

「これから向かうのは、ウルトラマンが実在する世界よ」

(そうか。俺は夢を見てるんだな。夢子なだけに)

 列車が異空間を出る。

「どうやら着いたみたいね」

 列車が止まる。

 二人は列車から降りた。

「こ、これは……」

 昭和のような街並み。

「おーい、君たち」

 遠くから男性が近づいてくる。

 男性はMACの制服を着ていた。

「あ、あなたは!」

 言わずと知れた、レオの真夏竜だ。

「ま、真夏竜さん!」

「真夏? 何を言ってるんだい。僕はおおとり ゲンだよ」

「ウルトラマンレオのな」

「……!? 君たち、僕を知ってるのか?」

「三鶴城 香奈子。こっちはウルトラマンディサイドよ」

「ウルトラマンディサイド?」

「世界の滅びを阻止しにきたのよ」

「世界の滅び? 一体何を言って……?」

 空に、暗雲が集まってくる。

 暗雲は雷を轟かせ、星人を呼び出した。

「あいつは?」

 と、疑問符を浮かべるゲン。

 そこへ、ダンがやってくる。

「この二人なら任せろ」

「私たちなら大丈夫よ」

「いや、しかし……」

 新一はディサイドリングを取り出す。

「なんだかわかんねえけど、戦えってことか」

 新一はリングをはめると、巨人へと変身した。

 ウルトラマンディサイド。

 

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