錬金術師の憂鬱   作:愛より前に

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 一人だけで完結した感性を持つ男が別の世界で産まれ変わったとして

 

 そこから先の人生が誰とも共有できない場合

 

 幸せとも不幸とも思いようがないのかもしれない

 

 『神の舌を持つ男』

 

 男にとってはあるのが当然であり、無ければきっと悩む事も無かったのであろう。

 

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 料理が好きだった。というか料理漫画が好きだった。

親の料理の味付けが濃すぎたのが原因で、自分で作った方が良いと考えたのはいつ頃だったか?

家族からは逆に薄味と言われた。両親の年齢が進んでいくと高血圧高血糖等の症状が見え始めた時、ようやく自分好みの味まで落ち着いてきていた。

揚げ物をするのは好きだが揚げたその日は、なんとなくあまり多くの揚げ物を食べる食欲は無かった。

全部覚えている。

焼きそばを焼くと鍋が焦げ付いて落とすのが面倒だった。肉の焼き加減に無駄に拘っていた。鍋に入れる食材の順番は適当だった。

すき焼きのたれを買ってすき焼きを作っても毎年一回くらいしか作らないせいで冷蔵庫に残ってるタレは気付くと期限が切れていた。

この世界は生きやすい、のだろう、きっと。だがしかし新しい料理を作る文化は浸透していない、少し違うか、レシピを完成させる難易度が高すぎる。

料理のレシピを作る事自体は簡単だ、錬金術師なら誰でも作れる。しかし、完成した料理の味はレシピを作った錬金術師本人の感性で再現される。

この世界において 料理とは魔法だ 

何かを食べた時、魔力によって溶かされ舌に乗せられた物を感知する、故に食材と料理本来の味を知覚する事ができるのは転移した異世界人のみなのだろう。居たような情報はないが。

神の舌、その効力は単純に解析と言える。味覚の詳細だけを認識しどれだけ不味くとも味として認識できずどれだけ辛くても認識しない。

男にとってこの世界の食事とは、ただひたすらに苦痛を伴う物である。前世の記憶に所以する料理のレシピこそが男にとっての収入源であり、この世界においてそのレシピが活用されない場所はほぼ存在しないとも言われている。

 

 誰かが絶賛する、自分には認識できない味を。良い事なのだろう、きっと、誰かにとっては。

食材の味が想像できないこの世界の人にとって料理とはレシピが無ければ作れない物だ。

男にとって錬金術とはある種憧れであった。金属を操作する事を考えればそれだけで楽しめた。

しかしどうだろう、料理人こそが錬金術師と呼ばれ、鉄を操作するような術師等存在すらしない。男も最初は挑戦した。出来たのはレシピがあるものだけだった。それでも鉄の塊を所持し発動すれば剣でも槍でも作る事はできる。そこから更に作り変えるのができないんだけどな。とにかく男には錬金術師と名乗るのに抵抗があった。ぶっちゃけ誰も気にしてないが。

 

 今日も今日とて異世界で男は探索をする。冒険?なんでそんな危険そうな事をしないけりゃいけない。

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