[5]
sido 遼
大丈夫か?一夏の奴
一晩明け、二日目の今日。一夏は目の下に隈を作りとても眠そうだった。
ほぼ女子寮に一人だけ男子というのは辛いだろうな。
これからしばらくは、何処に行っても見世物状態なのに体調管理をしないとは、自殺志願もいいとこだ。
しかし、あの|鬼教師≪織斑先生≫に何度も叩かれても繰り返し寝るとはただの寝不足じゃないのか?
今はあの鬼教師のいる授業ではないとはいえ(もちろんIS学園にも通常授業があり、それに伴う教師がいる。織斑先生はIS関係の授業担当だ)、さすがに心配になってくるぞ。
「風間、この問いの答えは?」
「……だと思います」
「正解です。だが、授業中に余所見はしないように」
「はい。すいません」
普通に余所見を注意すればいいものを面倒臭い先生だな。
午前の授業が終わって昼休み。一夏はだいぶ快復したようだ。
「午前はかなり眠かったみたいだな、一夏」
「ふぁぁ。ああ、悪い。昨日あまり寝てなくてさ。今まで夜更かしなんて全然したことないから、体の調子が良くないんだよ」
夜更かしねぇ。やっぱり女子寮に男子が入ると何かしらのトラブルが発生するのか?
「昼飯どうする?食堂行くか?」
「そうだな。他にも誘いたい奴がいるんだけどいいか?」
「ああ、別に構わない。誰だ?」
「箒、飯食いに行こうぜ」
一夏が誘ったのは篠ノ之箒。確か一夏の幼なじみって話だったな。まあ、一夏に言われなくとも小学校が一緒なのだから、あの有名な天才博士の妹の事位知ってるけどな。…篠ノ之は俺の事を知らないだろうけど。
「……私は、いい」
返事の前に一夏を睨んでたな。またやっぱ変な事したのか?
「そんな事言わずに行こうぜ」
「おい。一夏、あまり無理に連れて行こうとするなよ」
俺が一夏を止めると、今度は俺が篠ノ之に睨まれた。が、もちろん気にしない。恥ずかしかろうが、照れくさかろうが、自分で拒否したんだ、本音がどうだろうと知った事ではない。逆に冷めた目で見返す。
「あまりしつこく誘うなよ。いやいや来た奴と飯食っても楽しくないだろ、お互い」
「違うぞ遼。どんな事があっても楽しくなるために一緒に飯を食うんだ。食事にはそんな力がある」
「なるほど」
正直、意味は解らんが。
「と、そういう訳で行くぞ箒」
「お、おい。私は行かないとーーーう、腕を組むな」
「黙ってついてこい」
おや、強引だな一夏。
食堂到着。高校生活が始まったばかりで勝手の解らない新入生が混み合っていた。
「一夏、篠ノ之、何食べる?」
「俺らは何でもいいよ。箒も何でも食うよな」
何でもいいなら適当に決めるか。今日のおすすめは……日替わり定食。和食は好みじゃないし俺のは洋食の物にしよう。
「ひ、人を犬猫のように言うな。私にも好みがある」
二人分の日替わりを購入する。俺の分は既に購入してある。
「とりあえず、お前らに日替わり二つ買ったぞ。俺は洋食のBランチだ」
「話を聞いているのか、お前は!」
「別にいいだろ。どうせタダだ」
篠ノ之の言葉を軽く流し、全員の食券を食堂の人に渡す。そして料理が出来上がるのを待つ。
しかし、IS学園は食堂も広いな。新入生で混雑してるのによく探せばちらほら空いてる席がある。
「そういう問題ではない!風間、私は人の話を聞けと言っている」
「ちゃんと聞いてるぞ。どうせなら一夏の奢りで、もっと高い料理を食いに行こうぜって話だろ」
「おい、遼。それだと俺の今後のお財布事情が寂しくなるので止めて下さい」
俺のつまらないギャグと一夏のツッコミ。場を和ませるには十分だと思ったが篠ノ之は不機嫌なままだった。
「お前等……」
「日替わり二つお待ち。洋食Bランチはあと少し待っておくれ」
「一夏、篠ノ之、先行って席確保しといてくれ」
おばさんから日替わり定食を受け取って二人に渡す。
正直、嫌な雰囲気だったから良い切り替えになるな、ありがたい。
少し待って出てきた料理を受け取り、二人を探す。
「お~い。遼~。こっちこっち」
一夏の声が聞こえて来た方に向かう。この食堂は広いが、なんとか見つける事が出来た。
「悪い。待たせた」
二人とも律儀に箸をつけずに待っていてくれたようだ。
「別に気にすんなって」
「いや、一夏に対しては元から気にしてない」
「ちょっ!俺の扱いなんかひどくね」
「悪いな。篠ノ之」
「別に……一緒に食事をするのだから箸をつけずに待つのは当然だ」
ほう。俺は篠ノ之の評価を改める必要があるな。第一印象だけで人を判断するべきではなかったな。
そして若干ピリピリした空気が軽くなっている。
これは後から聞いた話だが、篠ノ之は昨日、一夏とトラブルがあったらしい。その一夏の過失をさっきようやく謝ったらしい。俺を巻き込むなよな。
「なあ、箒、遼。ISについて教えてくれないか?このままじゃ来週の勝負で何も出来ずに負けそうだ」
「くだらない挑発に乗るからだ」
「俺も一応対戦相手何だがな」
確かに一夏よりは出来る自信はある。かといって人に教える事は出来ないと思う。
「そこをなんとか、頼む」
頼むって言われてもなぁ。
「ふぅ。そんなに言うなら、アイツに頼んでみるか……」
「アイツ?アイツって誰だ?」
俺はその人物を見つける事が出来た。ちょうど隣の席も空いてる事だし呼んでみる。
「トレイター!ちょっと来てくれ」
俺の声に気付いてやって来る。どうやら席を探していたらしい。
「どうしたの~?風間君」
「ちょっとISの事で頼みがあるんだけど」
「IS……」
トレイターの雰囲気ががらりと変わる。
相変わらず二重人格かと疑うレベルの変わりっぷりだな。
「一夏にISについて教えてやってくれないか」
「織斑君に?」
「えっと、トレイターさん。迷惑じゃなかったら教えてくれ頼む」
一夏も手を合わせて頼み込む。
「どうしようかな」
「頼む」
「いいわ。教えてあげる」
ふぅ。これで一夏の方もなんとかなるか?
第五話は昼休みの話。
原作を上手く変化させるのは難しいとつくづく実感します。