終結プログレス 作:カモカモ
その日、全てが終わった。
サイガ-100が存在する理由だったあの狼は、自分自身の手で確かに砕いた。夢なのかと疑う自分がいるが、システムコールが確かにそれが現実だと教えてくれる。
実感が伴って喜びが込み上げるのと同時に、自分が空っぽになってしまったかのような感覚。サイガ-100が、斎賀百として生を受けてから始めての感覚かもしれないなと、ぼんやりと思う。
同じクランメンバーや、実の妹とその想い人、腐れ縁の外道達が所属するクランメンバーの歓声が聞こえているのに、どうしてかその中に加わる気がしない。
「あれ、リーダー何やってるんですか?」
「草餅め……」
「罵倒されるようなことしてないっすよね!?」
めざとく輪から離れていることに気づいたサブマスターに、つい毒づいてしまった。
「いやなに、感慨深いなと思っただけだ」
「まあ、確かに色々ありましたからね」
サービス開始と同時になんとなしにこのゲームを始めて、偶然-運命かもしれない-襲われた狼を追いかけて。思えば遠くまできたものだ。
「私はこれからどうすれば良いんだろうな」
そんな弱気な、すがるような言葉が、自分から出るとは想いもしなかった。それも、こいつ相手に。
果たしてその相手は、実に呆気からんと答えた。
「そんなのまずは獲得したユニーク報酬の扱いをどうするかの決定でしょう。リーダーもしかしてめんどくさいところから逃げようとしてませんか?」
「いや、そういうことではなくてだな」
「そういう話しでしょ。せっかく念願のユニークモンスターの討伐に成功したんですよ?ひょっとしたらこのシャングリラ・フロンティアの根幹に関わる新しい情報も獲得したでしょうし、前に進むしかないんですよ。それに、俺はワクワクしてますよ。リーダーは違うんですか?」
その相手は、当然のことを当然のように聞いてきた。その言葉は、サイガ-100にすとんと落ちる。
ああ、そうか。あの狼を討伐してからも、このシャングリラ・フロンティアは続いていくんだ。その気づきは、100の中で新しくくすぶる何かを産み出した。
「おのれ草餅……」
「へ、何か気にさわること言いました?」
「お前に諭されるのは、腹が立つ」
「ひどくないっすか!?」
ありがとうとは、何か気恥ずかしいので、言ってやらない。
100はひとつ息を吐くと、喜びの輪の中に加わることにした。
後日、見合いの釣書の中に、見たことある名前があって頭を抱えた御曹司と良家の令嬢がいたのだが、それはまた別の物語だ。