終結プログレス 作:カモカモ
◆物干し竿クラッシュ
端的に言えば。
今現在、久佐持丹月の背中に。
「…………なんか、あたってるんですが」
「私が行きたい方にお前がいるせいでぶつかったんだ」
「そっすか……」
しゃーないので、一歩横にずれる。
「避けるな。 不服でもあるのか」
「どうしろっていうの?」
通りたきゃ、通ってほしいと丹月は思う。なんせ。
「というか、不服しかないよ。 物干し竿は、普通に痛い」
立派に長柄な凶器であった。
屋外に放置するせいか、意外と脆かったりもする物干し竿。長年放置することで、なんかたわんできたり、表面のコーティングが洗濯物に引っ付いたりという悲しき事故を起こしたりするなかなかに厄介な代物である。
「そういえば、届いてたんですね」
諸事情あって、最近同居を始めた丹月と百が、微妙に足りない諸々を注文していて、そのうちのひとつだった。
丹月は、その長ものを百の手から奪い取り、ベランダに出る。
「草餅め」
「強要するのは嫌なやつみたくなってしまいますけど、普通にそこはお礼を言いましょうよ、まさか今更気恥ずかしいとかそんなことはないでしょうし」
◆お粥ヒート
ピピピ、と電子音が計測が終わったことを告げる。
38.3℃。
まごうことなく、熱である。
「ばーーーーーー」
アラサーの身体に、この熱の高さはつらい。昨夜、面倒になってろくに身体もふかないままベッドにダイブしたのが悪かったのだろう、と久佐持丹月はぼんやりいまいちはっきりしない頭で思う。
「明日になっても下がらなかったら病院行くか……」
ひとまず、今は眠るべきだ。
体勢を変えることすら億劫に思いながら、目を閉じた。
◆
同居人が熱でダウンした。
斎賀百は全力でため息をつく。
「草餅め……」
概ね、湯冷めとかそんなやつだろう。お前のお陰で、いつぶりか分からないお粥なんてものを作るはめになったじゃないか。それも仕事から帰宅して早々に。
「この貸しは高くつくぞ……」
コンロを眺めつつそう呟く。
ぐつぐつと音がしてきた。間もなく、出来上がるだろう。
◆
ピピピ、と電子音。
37.6℃。
眠ったお陰か、大分と体温は下がった。身体も、本調子ではないとはいえ軽くなった。
「入るぞ」
「事後報告なんだよなあ……」
「なんだ、起きていたのか」
突然部屋が明るくなって、丹月は目を細める。
「熱はどうだ?」
「大分下がりました」
もう一息といったところだろうか。
「お粥、食べられそうか?」
そういわれたからか、腹の虫が鳴く。
「食べれそうみたいですね」
「そうだな」
持ってきてくれたトレーをベッドに一旦起き、百もベッドに腰かける。
ここで、丹月はひとつの疑問にぶち当たった。
「このお粥……まさか、百さんが……作れたの……?」
「お前は私をなんだと思っているのか、一度話し合う必要がありそうだな」
呆れたように百はそういいつつ、匙にお粥を掬って差し出してくる。
口にふくんだ結果。
「うわ、あっちぃ!?」
「ちゃんと冷ましてから食べろ」
ごもっともである。