終結プログレス 作:カモカモ
同居人が、めちゃめちゃいい笑顔をしていた。どれくらい、いい笑顔かというと、効果音をつけるなら、ぺかーって感じの。
久佐持丹月は、思わず三度見をする。
一度目で、「え?」となり、二度目で、「え?」となり、三度目で「こんな顔するんだ……」となった。
「じろじろ見すぎだ、顔になにかついているか?」
「ついてるというか、レア差分の衝撃がでかかったというか」
丹月の同居人である斎賀百は、かわいいよりも美人と呼ぶのがふさわしい、と丹月は客観的に思っている。
ただ、さっきの、というか、今も口元がゆるっゆるになっている笑顔は。
「百さんって」
「うん?」
「かわいいんですね」
室温が二度ほど下がった。笑顔は保たれているのだが、よくわからない威圧感が出てきている。
「お前、私の機嫌が良くなかったら、通報していたぞ」
「なんの罪で!?」
「迷惑行為防止条例。 私の精神にダメージを与えた罪で」
百の精神は自治体規模らしい。
冗談は置いておき。
「冗談のつもりは、ないのだが…………」
「冗談ということにしといて下さい。 それで、なにかいいことが、あったの?」
あっちの世界関連だろうか。
「ああ、懸賞が当たってな」
「懸賞」
「秋のカップラーメン祭りに応募していたんだが」
「カップラーメン祭り自体が初耳なんだけど」
白い皿でも、もらえるのか。
「カップラーメン祭りも知らない素人か……」
「逆にそっちは、なんの玄人になるんですか?」
カップラーメン、と素直に返された。
「でしょうね! それで、何を貰えんの?」
「ああ、それなんだが。 カップラーメン365×3×10個だ」
「はい?」
何個って言った?
「ざっといえば、十年分だな。 やったな丹月、お前にも分けてやるから、ざっと五年は毎食カップラーメン生活が出きるぞ」
「嘘でしょ!?」
◆
「嘘でしょ!?」
自らの叫び声で、目を覚ました丹月はめちゃくちゃに安堵した。
見慣れた天井。ベッドではないが、リビングに置かれてるソファー。どうやら、寝落ちしていたらしい。
夢で良かった。マジで。
「おい、丹月やかましいぞ」
百は、眉間に皺を寄せて突然の奇声をあげた同居人に不満をぶつけてくる。
そこで、丹月は、非常にそれはもう、非常に安心した。間違えても、カップラーメンの懸賞で十年分はあてていなさそうな顔だったので、それはつまり。
「やっぱ、百さんはこうじゃなきゃ」
「何を言っているんださっきから」
「俺の百さんだなって」
「そうか…………うん? まて、だれがおまえの何をいきなり言い出しておい、なにを満足そうにしてるんだ、おい、丹月部屋に戻ろうとするな突然……おい! おいきけ! くさもちめ!」