終結プログレス 作:カモカモ
◆不味クーリングオフ
「丹月、ちょっとこっちに来い」
同居人からの呼び出しが、かかってしまった。
重い腰は、まったくもって上げることができず、しゃーないので丹月は膝でずるずる移動する。
「百さん、なんすか」
「あーん」
ひゅっと、丹月の喉から変な音がなる。
「その反応は、どういうつもりだ」
「日頃からの乖離がもはや怖いレベルなんですよ!」
あと、百本人からも、不本意であるという感じが顔から出てるし。
「この行為でお互いに、幸せにならなさそうなことある?」
「少なくとも、お前は幸せになるだろう」
「……………」
「どういう感情に基づいた顔だ」
そんなこんなありつつ気を取り直して。
「あーん」
口いっぱいに広がるのは──タイヤの味。
「まっず!」
世界一不味いグミというやつらしく、アメリカ土産で貰い、百も無事に被害にあったそうだ。
「なるほど、私の味覚は正常だということが、確認できた。 これで、存分にあの馬鹿に、お返しができる。 礼を言うぞ、丹月」
百は獰猛に笑った。
しかし、丹月の口の中はそれどころではない。噛みごたえがありそうで、そんなことはまったくなく、鼻から抜ける匂いは実に刺激的だ。悪い意味で。
「うん? なんだ、丹月。 私の頭にごみでもついてい」
「クーリングオフ」
「あと、口直し」
「………………くさもちめ」
◆秋眠暁を覚えず
ほんの一昨日までは、秋の気配もなかったのに、今朝は秋を通り越して冬の寒さだった。
そのせいで、通常の衣替えだったり、寝具を冬用のものに変えたり、という季節の切り替わりに行うべきものができていない。
「そのせいかな……」
自身の脇の下から、にゅっと生えてきて胸元辺りでがっちり組まれている腕。
もちろん、丹月の腕が増えたというはずはなく、そうなると必然的にそれは同居人──斎賀百のものということになる。
「んぅ…………」
「寝てるなあ」
明け方ごろに、少し肌寒いなと感じた時に、バタンと音を立ててドアが開いた気がした。
ただ、それが、夢か現か分からなくて、さらには眠気から確認などが面倒で放置して、再び眠りからさめれば背中がポカポカしていたのである。
ためしに、頬でもつねってみるか、と企んだものの、その瞬間に腕を掴まえられて、今度は脇の下どころか丹月の腕の外側からがっちりロックされてしまう。
「起きてるでしょ」
絶対に。
しかし、丹月の確信に反して、すやすやと一定のリズムを刻んでいる同居人。
困った。
「起きれない」
振りほどこうとするも、どこをどうされたのか、うまく力が入れられない。
丹月は、あきらめた。
◆
例えばである。
同じ屋根の元に住んでいる異性が、自身を抱き締めて寝ていたら、どのようなことが考えられるか。
「草餅め」
特に心当たりもなく、同居人の寝具で朝を迎えて、しかし同居人はぐっすり眠りながら百のことをしっかり抱き締めて寝ている。
腕だけならまだしも、その脚が百を挟み込むようにロックしてやがるのだ。
「おい、丹月起きろ」
せっかく眠っているのに起こすのもどうか、とは思ったのだが、時計の針がとっくに正午を過ぎて貴重な休日も後半戦に突入してしまっている。
既に十分睡眠はとれているだろうし。
「こら丹月、人を勝手に抱き枕にするな」
耳元で囁くと、丹月の目蓋はゆっくりと開かれる。
「…………ゆたんぽにしてきたのは、そっちじゃん…………」
「なんのことだ」
「………………ぐぅ」
「おい、説明が面倒くさくなったからといって、寝るな、やめろ背中を擦るな、私を寝かしつけようとするな」