終結プログレス 作:カモカモ
「端的に言えば──アーサー・ペンシルゴンが来る」
「はい?」
端的、という言葉のとおり本当に端的な情報しかもらえなくて久佐持丹月は眉を潜めた。
朝一(といっても時計の短針は11を指し示している)で、顔を会わせた斎賀百はもっと眉間に皺がよっていた。
「アーサー・ペンシルゴンって、アーサー・ペンシルゴン?」
「あんな存在、他にいてたまるか」
そういえば、リアルからの知り合いという話は聞いていたし、「腐れ縁」とは度々聞いている。
アーサー・ペンシルゴン。
シャングリラ・フロンティアというMMOを、それこそ初期から長くやっていれば大体がその名前を聞いたことがあるという有名人。
決して、著名というわけではなく、最初期に毒でバリバリPKして名が知られて来たと思えば、とっとと一時期PKクランのトップであった阿修羅会を作り上げ、かと思えば自力で壊滅させ今は曲者揃いの旅狼のクランリーダーと、なっているプレイヤーである。
丹月の、というか草餅としての印象としては、イイ空気を吸っていそうなプレイスタイル、という感じである。
「あの、天音永遠アバターの?」
「まあ……そうだ。 うん、まあ、お前なら、直接会わせても、うん……どうなっても構わないからな…………」
「え、怖。 そんなリアルもヤバい感じなんですか、つーか、どうにかなったら困りますよ、百さんが」
「なぜ、私が困る」
胸に手を当てて考えてみれば分かるだろう。
百はおもむろに腕を軽く曲げ、テイクバックをし、胸に手を当てた。丹月の。
「こっちの胸じゃないし、それは突きとかそういうやつ」
「斎賀家では、手を当てるといえばこういうことなんだ」
「流石に嘘」
ガチだったらどうしよう。
◆
ぷるるるぷるるる、と電話が鳴った。
といっても電話ではなく、インターホンである。百が受話器を上げて応答する。
「ああ、そうだ。 大きな道路を渡って、そこから右に折れると、警察署がある。 そこで、ちょっと休憩してこい」
「普通に部屋番号教えません?」
なぜ、そこまで嫌がるのだ。
いくらなんでも、本気ではなかったようで部屋番号を教えて三十秒後、扉が音を立てたので百と並んで玄関に立つ。
扉の向こうからは、キャップを被りサングラスをかけた女性が、
「泥棒猫ぉ!」
「俺ぇ?」
クセがすごい。
「だって、そこのジャージは、猫は猫でも、ライオンとかそっちの部類だし」
「確かに」
「おい」
ゴン、と背中を軽く拳で叩かれた。
「永遠。 一応初対面になるのだから、挨拶はちゃんとしろ。 貴様は知らなかったかもだが、それが人間のルールだ」
「おっと、モモちゃん。 それは私が美しすぎる傾国の人外って意味かな?」
なるほど、本当に昔からの知り合いなんだなあ、と丹月に思わせる軽妙なやり取りだ。しかし、それ以上に名前の部分が気になってしかたがない。
聞き間違いでなければ、とわ、と聞こえた気が
「はじめまして」
サングラスとキャップは、顔を隠すためだったのか。
目の前に、各種メディアで拝見したことのある顔があった。
「天音永遠──カリスマモデルだよ」
「中身はお前も知っての通り、あれ、だ」
ああ、と丹月は得心する。
「類は友を呼ぶっていう」
「「一緒にするな!(しないでほしいなあ!)」」
続くのかなあ