終結プログレス 作:カモカモ
◆聖夜インベーダー
「どうして大人になったらサンタクロースが来なくなるかを考えたことはあるか?」
「ごめん。 目の前で起きてることが衝撃的すぎて、なに言われても頭に入ってこないと思う」
その日。
久佐持丹月が目覚めてリビングに向かうと。
「単純な話だ。 煙突から入ってくるのが無理なら、鍵を開けるしかない。 そして、それを見知らぬ他人がするなら──ただの不法侵入者、つまり刑事罰の対象になってしまうからだ」
斎賀百の手によって、サンタクロースが縛られていた。
「やめなさい、百。 悪い子のもとには、サンタさんが来なくなりますよ」
ただしそのサンタクロースは、百の姉の顔をしている。
「あんなもん! 望む者は! 確実に! 良い子では! ない!」
「待って百さん。 何を枕元に置かれて…………やっぱ聞くのは止めときますね」百の表情から、やぶ蛇どころか、やぶ八岐大蛇の気配を察したので咄嗟に口をふさいだ。
「婿殿」
「やべえ、こんなにも話を振られたくないの初めてかもしれません」
「マンネリとは──罪です」
「ほっとけ!」
多分、すげえ余計なお世話を焼かれようとしている。というか、わざわざそんなもんを届けるためだけに、ここまでやって来たのか。
なんて無駄なことを。
目も当てられない、というか丹月の目では追えない、ハイレベルな姉妹喧嘩の末、サンタクロースは家に帰っていった。
「衝撃波が起こる喧嘩ってなんなんだよ……」
効果音は、シュインシュイン!とかだった。
「全く……あの人は…………………」
「もはや、姉ということすら、嫌になってる……」
「嫌にもなるだろう」
曰く、目覚めたら枕元に箱が置かれていて、咄嗟に手元に有るものを扉付近に投げたら、姉にクリーンヒットしたそうだ。
「なんで、ムダにバトル漫画染みた挙動してんの?」
「バトル漫画かどうかは分からんが、斎賀流を修めるとこうなる」
まじかよ、すげえな斎賀流。
「それで、結局何が箱に入っていたんですか?」
「半分はお前も察していると思うが、そういうブツで……ああ、お前がもしそれに興味を示すようなら」
目は口ほどに物を言う。
そこには全力の侮蔑があった。
「示さないです」
「あとは、なぜか私のアルバ──おいやめろダッシュするな、おい止まれ! 草餅! 草餅め!」
◆催眠トラブル
あらすじ
どうしてもジャージ以外の衣服を斎賀百に着せたいカリスマモデルが催眠術で『ジャージは私服じゃない』と教え込んだ結果、ゾーニングが上がりかけている
「なんで、余計に悪化してるんですか、ジャージすら着なくなったじゃないですか!」
「私にも、分からないよ!」
「お前達、揃いも揃ってどうしたんだ?」
「百さんに困らされてるんですよ」
「は?」
とんでもねえことしてくれたな、このカリスマモデル、という気持ちが丹月から沸き上がってくる。
分かりやすく言えば、今百は──
「も、百ちゃん、ほーら、大好きなジャージだよ~」
「ジャージとはなんだ?」
「百さん──服を着てください」
試しに、丹月は直球を投げかけてみる。
「着てるじゃないか?」
きょとん、とした表情で返された。今の百は、下着オンリーである。一般的には、服とは認識されないにも関わらずだ。
諸々を諦めた丹月は、ひとまず根治を諦めて、対処療法に出ることにした。
「百さん」
「なんだ?」
「バスタオルって、服ですか?」
「何を言ってるんだお前は。 タオルに決まっているだろう」
「その通りです。 なので、それを体に巻き付けてください」
元より、寒かったのか、百は存外素直に体に巻き付けた。ひとまず、これでゾーニングはかろうじて守られることになる。
「天音さん、すげえ馬鹿げた質問していいですか?」
「なんとなく予想はつくけど、どうぞ」
「あんたの親友、まさか私服=ジャージって認識してません?」
「は、は、はは。 ……そんなまさか。 ももちゃんがそんなそんな。 …………はははは」
「はははは」
天音永遠、本気で絶叫。
丹月は、頭からバットで殴られたような痛みがしてきた。
「うるさいぞ」
「「誰のせいだよ!」」