終結プログレス 作:カモカモ
◆姫初めフォルテッシモ
「正月と言えば」
「はあ」
当然のごとく実家から、帰ってこいとの命令は下っていたのだが、なんやかんやで丹月は百と、この日を共に過ごす(暫定二時間ほど残りは別行動)こととなった。
ただ、元日その日に帰省しないだけで、どっち道実家には帰ることになるので正月という行事を蔑ろにするわけでもなく、二人とも一応日本人の心は持ち合わせていたので、そういう話題になることも不思議ではなかった。
年越しそばならぬ、年明けカップヌードルを二人ですすりつつ。
「──姫初めだな」
鼻の中に麺が入って、ものすごく痛い。
「恥じらい、壊滅しました?」
「一体私が何を恥じらう必要があるんだ。 因みに、ここで言う姫初めは、今年一度めの白飯を食すことに当たるが、今はカップヌードルを啜っているから、微妙に姫初めれないが」
丹月は悟る。
「はめられた……!」
よくよくみれば、目元が微妙に笑っていることに気づく。今年初めて、からかわれてしまったようだ。
「まあ、冗談はさておき。正月と言えば、お年玉な訳だが」
「その手は何ですか」
「一般的には、年長者が手渡すものだろう?」
「嫌ですよ」
甥っ子とか、姪っ子とか、歳が離れたきょうだいとか。
あと。
「俺達の子供とかにならともかく…………あ」
「…………………」
「……………………」
「………………………草餅め」
◆合法カフェイン
恐怖というのは、今この時の為に使われる言葉なのだな、と久佐持丹月はそう思う。
先ほどから、正座を続けているがためにそろそろ両脚の感覚はない。
しかし。
「……………………」
真っ赤なジャージを身に纏い、丹月を見下している同居人──斎賀百に承諾を得ることは到底不可能であり、従って両脚が本格的に痺れ始めたことを訴える余地はなかった。
「丹月」
存外に穏やかな声なのが非常に怖い。気持ちとしては、ライオンの前に差し出された兎である。
「ジョイントは止めておけ、と私は忠告したはずだが」
「つ、つい……」
義弟というにはまだそのような事実はなく、正確に表現するのなら同居人(一応お揃いの指輪をつける関係)の妹の彼氏にあたる人物から、話の種として聞いたものを実行して──空き缶がバレたのが運の尽きだった。
「貴様は、本場のライオットブラッドを舐めているのか」
「………………」
「あれは死体すら──いや、いい。 これは秘匿事項だったから、忘れろ」
「え? 死体すらなんなの!? そこで止められると余計に気になるんですけど!?」
そしてなぜ秘匿事項を百は知っているのか。
「忘れておけ、その方が幸せだ。 大体だな、丹月。 お前の身体は、もう一人だけのものじゃないんだぞ」
「え?」
「あ?」
「 はい………………」