終結プログレス 作:カモカモ
◆お魚クッキング
非常に困ったことになった。
なったので。
「なあ、丹月」
「はい」
「電気ウナギとフグのどちらが食べたい?」
「なんで」
同居人は非常に困惑している。それはそうだろう。斎賀百も、なんで、と思ってる。
しかしである。
「仕方ないだろう、届いてしまったんだから」
日本のクール宅急便は非常に有能であり、取れ立てピチピチでも宅配してくれるのだ。
「百さんって、実は配信者だったりします?」
「なんだそれは」
そんなものの筈はないことは、知っているだろうに。
「フグはともかく、電気ウナギなんて一般的に生活してたら食用のものには出会うことないでしょ」
百はため息をついた。全くもって、この男の認識は甘い、と言わざるを得ない。
「釣りバカを舐めてはいけない」
「財力と時間と行動力に余裕がある釣りバカかあ……」
最近は、実の妹の義理の父という元からの釣り仲間との関係性が強固になった為か、余計に悪化してきたと思う。
死んだ目をした義弟から、『うちの父が、義祖父さんが地元のマフィアとやりあったなんて言ってるんですけど、流石に冗談っすよね』と問いかけて来られたときは、百は聞かなかったことにした。
「それで、最初の質問に戻るんだが、フグと電気ウナギどちらが良い?」
「フグの免許もってる人?」
「鰯ならば、捌いたことがあるが」
「論外じゃん……」
一般企業に務める社会人がフグを捌く免許を持っている方が珍しいから仕方がないだろう。
「電気ウナギでお願いします」
「ほう。 電気ウナギだな、分かった。 因みに、電気ウナギも毒があるし、捌くのはお前だし、うなぎ裂きなんてものは当然ないが」
「クーリングオフ!」
◆二日酔ヘッドクエイク
斎賀百の同居人が床に転がっていた。百はそれに気づいてあわてて駆け寄る。
ぷんと、ある意味での刺激臭が辺りを漂っていた。
「しっかりしろ! 何があった!」
「うっ……」
百の呼び掛けに閉じていた目を薄く見開く。
「頭が……頭が……………」
「どうしたんだ! 悪いのか!?」
「割れるように痛い……きもちわるい…………」
からんと、音を立ててロング缶がたおれる。
9%と書かれていた。
「寝てろ」
二日酔い。
そういえば、昨夜はオンラインで飲み会があると言っていたことを思い出した。
「お前もうかなり良い歳になってるのに、まだ酒の飲み方も覚えてないのか?」
「百さん……それは違うよ…………」
顔をしかめながら、丹月は言葉を紡ぐ。
百は心優しいので、ミネラルウォーターのペットボトルを寝そべっている同居人の頭の上に乗せてやった。
二日酔い男は文句を言う気力もないようで、黙ってペットボトルを頭からどけて、上体を起こしキャップを開けて水をがぶ飲みした。ふう、と一息吐いて。
「20歳頃に覚えた宅飲みでの許容範囲で、こうなったんだ……」
「何が違うんだ」
「お酒の飲み方を覚えていない訳じゃない。 ただ──加齢に伴う修正ができなかっただけなんだ」
「アホか」
「お酒は二十歳まで!」
「一瞬で常識外れなことを言うなコンプライアンスに配慮しろ歳を重ねた大人ならば!」