終結プログレス 作:カモカモ
◆肥やしクロッシーズ
前々から思っていたことであるが。
「百さんって、意外と衣装持ちですよね」
「タンスで肥えているだけだぞ」
そう言うならば、着れば良いのにと丹月は思う。
「しかも、うわ、これもブランドだ……」
同世代と比べて、衣服について特別詳しい訳ではないが、それでも丹月でも知っているレベルの一般的に広く昔から知られてきたブランドのものがちらほらと。
おそらく、丹月が知らないだけで他にも高級品がゴロゴロ転がっているのだろうな、とタンスの整理を手伝わされながら思う。
ちらりと百の方を見る。
安定の赤ジャージ。
彼女は職場用の、いわゆるオフィスカジュアル系の衣服を覗けば、圧倒的採用率が高いのは体操服である。
「着れば良いのに」
「利便性で、ジャージに勝るのなら考えなくもない」
「絶対似合うのに」
丹月にとって、赤ジャージが一番馴染んでいるというのは置いておいて。
タンスで肥やされている衣服も、ちゃんと彼女に合うものが選ばれてるんだろうな、とは思う。
「それは、似合うに決まっているだろう。 なにせ、それらを選んだのはどこぞのカリスマモデルだからな」
「うわあ……」
なんか、余計に肥やしにする勿体無さを強く感じる。贈り主が、贈り主である。
後、なんやかんやであの人物のそのセンスは絶対的に信頼してるのだなとも。
「因みに、タンスにゴ○ゴ○まで入れて、自宅で可能な範囲では衣服をちゃんと管理してるのに、着ない理由は」
「何を着るかを悩んでタンスから掘り返すのがめんどい。 洗濯の方法がいろいろ指定されてめんどい。 色移りがありそうでめんどい。 TPOさえ弁えてればジャージでも一切の問題は発生しないから、わざわざブランドものである必要性を感じない」
丹月もちょっと気持ちは分かってしまう。
分かってしまうが。こうも、高そうな服がごろごろと無駄になってしまっていると、庶民的な感覚としては。
「そのうち、ブランド服の怨念で夜中に怪奇現象起きそう」
「安心しろ。 斎賀流には、そういったものを相手取る型がある」
「ダウト」
…………流石に嘘だよね?
◆ナイトインナイト
ふと。
横抱きにしてから思った。
「いつも思うんだけど、意外と軽い」
「意外と、は余計だ」
失言なのかもしれないが、そもそも全うな身長から加味した場合、やはりそれでも些か。
「軽すぎません?」
あんな食生活で。というか、生活をしていて。
なんなら、物理的なサイズを思うと余計に。
「筋肉の代謝が高いということは、常識だろう」
「筋肉の方が重いっていうのも常識ですよ」
まあ、話を聞く限り昔から武術を修めてきたらしいので、身体作りはしっかりしているのだろうけども。
「食べてるもんどこいってんの?」
カップラーメンとか。
「虚空の彼方に」
「ブラックホールでも身体の中にあるんですか?」
目的地にたどり着いたので、腕の中の女性を下ろす。
「あるかもしれない、な」
明かりを消した。
暗闇が濃くなる。
それでも、互いの距離が近いことだけはよく分かった。