終結プログレス 作:カモカモ
◆日常ダイアログ
「すっげえどうでもいい話なんですけど」
「わざわざ前置きするということは、さぞかし自信のある無駄話なのだな」
向かい合って座っているけど互いに顔は見ない。別段、百達が仲違いをしているという訳ではなく、単純に各々が異なる作業をしているがゆえだ。
「旨味調味料の蓋ってあるじゃないですか」
「ああ」
「あれ、なんで赤色なんでしょうかね」
想定以上に、どうでもいいテーマだった。
「赤色は食欲をそそる色だからだろう」
「知ってるんだ……」
「適当に言ってみただけだが」
こてん、と話し相手の肩が傾いた。わざわざ大仰なリアクションをとりやがった。
「普通に騙されたんですけど」
「騙してはいない」
よく知らないことを適当な推論に基づいて告げただけだ。
「無知は罪だし、発言には責任が伴うんだよ」
「前半の方はお前だろう」
会話が一旦途切れる。本当にどうでもいい話題だったな、と百は思う。不快ではないから、話に付き合ってる訳だけど。
そういえば。
「私からもどうでもいい話をしていいか」
「はあ」
ついさっき、端末に届いたメッセージを読み上げる。
「妹から連絡が来たのだが。 イワシが百匹これから届くそうだ」
「割りとどうでもよくねえよ」
◆啓蒙カップラーメン
「カップラーメン道は、カップラーメンをいかに正しく食すかが、すべての根底に在る」
「何言いだしたんだこの人」
あまりにも、何を言い始めたかがさっぱり分からなさすぎて、丹月の言葉も少々荒っぽくなってしまった。
「近年はカップラーメンのアレンジレシピなるものも、溢れるようになってきた。 だが──」
百は全く丹月の言葉を意に介さず、虚空を見つめながらしかし熱っぽく語り続ける。
「それは本当にアレンジと言えるのか。 本当に真のカップラーメンの姿にたどり着けている、アレンジレシピの提唱者はいかほど、現代に存在するのか」
「カップラーメンについて、ここまで熱意持ってる人自体が、百さんかメーカーさん位しかいないんじゃないですかね」
「こうした、浅薄なカップラーメン観が跋扈する今の世の中に、渇を入れるべく日々その一杯を全力で食す──そこには一切の妥協があってはならない──これを教義とするのがカップラーメン教だ」
勝手に宗教の話が始まってしまった。
「………………」
丹月は、頬を心なしか赤く染めながら熱弁している百の額に非接触型体温計を近づけてみた。
(38.9度と表示されている)
「…………高熱ぅ!」
この後めちゃくちゃ寝かせた。