終結プログレス 作:カモカモ
まあ、分かりやすく言えば油断していたのだ。あのお見合いから半年が過ぎた。
久佐持丹月と斎賀百は、よくも悪くも利害の一致による「お付き合い状態」に慣れた。それは、要するに報告するときに仲睦まじい「ふり」をすることにも、慣れたということであり、それ故にボロが出てしまった。
端的に言えば、呼び方を間違えた。
「草餅」
「どうかしましたか団長……あ」
「お前こそそんな声を急に出し……あ」
「ふむ…………」
ズズズと斎賀仙、丹月からすれば義理の姉候補が、お茶をすする音が全てを支配する。
(こ、こわい……)
仙はただお茶を飲んでいるだけなのに、丹月は背中にひんやりとしたものを刺しこまれたような気分になる。隣に座っている契約相手の顔をみると、一見いつも通りなのだが多分今脳内はフル回転していると思う。
そして、恐怖の日本人形は口を開く。
「どうやら、私の想定以上にわが妹と丹月さんの仲は順調なようですね」
「は?」
「はい?」
丹月の想像と正反対のことをのたまった意外と脳内ピンクな糸目の女性は、
「二人の間だけでの呼び方なのでしょう?」
「い、いや、それは……」
「そうなんだ、うっかり姉さんがいることを忘れてしまっていてな」
「ええ、そうでしょうとも。まさか、別の世界での上司と部下のような関係性が継続していて、こちらの世界でもそのまま、あまつさえこちらの関係性は私に見せるために取り繕ったもののなはずは、ないですよね?」
ほとんど閉じているように細められた目が放つ威圧感は、まるで発光しているかのように丹月に幻覚を見せる。
(ば、ばれてるのでは)
「姉さん」
(だ、団長!)
やはり、頼れるのはこの人だ。丹月はこの絶体絶命の危機を打破してくれるのでは、と期待をこめて百に念を送る。
「何をバカなこと言ってるんだ?そんなわけないだろう」
「やはりそうですよね。閨での呼び方がうっかりと」
「ああ、そうだ」
「百さん!?」
◆
「さて、だんち、百さん」
「なんだ」
「俺たち、あの人に高度なプレイしているってインプットされましたが」
ところ変わってファーストフード店だ。ざっくり言えば反省会である。
「悪かったとは思うが反省はしていない」
「ですよね!」
実際、あの場で百が誤魔化さなければ諸々がばれていただろう。だが、丹月としては思うところがあるわけで。
「団長と草餅ロールプレイって何なんだよ……」
「異常性癖だな」
「やかましいわ」
丹月は大きなため息を吐いた。
すっかり炭酸の抜けた甘ったるい汁を喉に流し込む。
「取り敢えず、今後ぼろがでないように日頃から名前呼びすることにしますか、百さん」
「そうだな、丹月」
ところで。
フルダイブVRシステムを用いたゲームは、従来のゲームよりも現実世界との連合を強めた。それはすなわち、現実世界の変化があちらの世界にも影響を多かれ少なかれ与えるということだ。
まあ、要するに、
「おい、ニツキのグループまだ数が足りてないぞ」
「すみませんモモさん、もう少しまって貰え」
『『『…………………………??????!!!』』』
「きゅようができたからきょうはかいさんだ」
「りょうかいです」
『『『…………落ちた』』』