終結プログレス 作:カモカモ
◆洗浄ジャージ
「あー」
「んー」
風呂から上がったらしい。もはや言葉ですらないやり取りを経て、久佐持丹月の同居人たる斎賀百は、目の前を通りすぎようとする。
「ちょいちょいちょいちょい」
とんでもない事に気づいた丹月は、百の襟を後ろから掴んで引き留めた。
「なんだ?」
「俺の方がなんだって言いたい。 なにをどうしたら風呂上がりにそんな格好になることあるんですか」
襟のある服。
白。
ずっと畳まれていたがために、折々に筋がついている。
すなわち、
「俺のシャツですけど?」
極めて正直に丹月は思った。扇情的だ。
「着るものがなかった」
「わざわざ俺のタンスの奥底に眠ってるそれ引っ張り出すことないんだよな……」
丹月も、いつぶりに見たかわからないレベルのやつである。
「他意はないが──明日は昼まで寝ていても問題がない」
「そっかあ。 俺も他意はないんすけど、同じくですね」
「他意はないが」
「うん、他意はない」
ばたんと音を立てて、扉が閉まった。
◆肩ズンスリーピング
「草餅め」
先程まで、かくかくと船を漕いでいた同居人が、遂に沈没して百にもたれかかってきやがった。一応なんとかしようという気持ちはあるようで、一瞬身を起こしてすぐにまた凭れかかってくるというのを繰り返す。
「おい、丹月」
名前を耳元で呼んでみるが、そんな程度では目を覚まさない。ゆっくりと百の肩の重みが増してくる。
大声を出すわけにいかず、つむじでも押せば目を覚まさないかと考えて、髪を掻き分けてみる。
「ううん……」
唸るだけで、覚醒することはなかった。
「丹月」
名前を呼んでみる。ついでに、髪を掻き分けてつむじをもう一度押す。だが、どうにもなら無かった。
しょうがないか、と百は諦めて、すやすやと眠る同居人の額を少し揉んでから、やがて飽きたのか携帯端末に目を落とした。
「寝違えた……」
「あんな寝方をすれば当然だろう」
「それになんか、お腹の具合が」
「下痢が出やすくなるツボが人間にはあるらしい」
「なんかやったの!?」
◇
左肩に、自分ではない体温を感じる。
「百さん?」
丹月の同居人は、うっつらうっつらと体を前後に揺すりながら、結局睡魔に負けてしまったらしい。
「百さん、髪の毛食ってるよ」
「んうん……」
返事とも呻き声ともつかない音を立てたが、百はそのまま丹月の肩というか二の腕辺りにもたれ掛かる。
髪を食ったままなのもあまりよろしくないかと思って、苦労しながらもなんとか口からそれを排除した。
「リュカ……お…………ん」
「夢の中でも団長は団長なんですね……」
さすがの狼狂いだなあ、と思いつつ眉間のシワでもほぐすかあと丹月が伸ばした腕に、ピシリと痛みが走る。
「え?」
「従……剣劇………………」
「え、ちょ!?」
手刀による的確な連劇が丹月を襲いかかる。
「起きてる? 起きてない? むしろ起きていろよ百さん!?」
「……………………ぐぅ」
あ、だめだこれ。
「やっぱり、剣聖はナーフされるべきだと思うんすよ」
「私が目を覚ました早々にそれを言う理由はあるのか草餅。 あと、なぜ私はお前に引っ付いていたんだ」
30話まできちまったよ…………