終結プログレス 作:カモカモ
「斎賀さんって、彼氏さんとどんなこと話すんですか」
「あー…………」
世間一般的に、婚約というといわゆる恋愛関係から発展したものであるととらえられがちだなということを、今現在斎賀百は身をもって体験している。めんどくさい。
もちろん、雑談というものが日々の生活──それも社会人もなると必要なものであるとは理解するが、なるべく避けたい話題というものは存在し、最近は──選択をしたのは自分自身とはいえ──そのなるべく関わりたくない話題の渦中に巻き込まれることが増えてしまった。
どうやらこの左手薬指のアクセサリーというものは、厄介事を引き起こしやすくするものなのかもしれない。
(草餅め)
どう乗りきるか、というのも大袈裟ではあるが、百にとって真面目に答える必要もないように思えるテーマの最たるもの。すなわちコイバナ。
なんでも燃え上がるようなとか、命をかけても良い、とまで思えるのが恋の好きらしく。
生まれてこの方、そんなことになったことは百にはない。
そもそもである。
彼氏。
この場合は、十中八九この指輪の送り主のことを指すのだろうが。
あれをそう呼ぶこと自体が違和感なのだ。
◆
「ということで、私はお前をなんと呼ぶべきだろうか」
「諦めて、婚約者で良いんじゃないですか」
唐突に同居人から、そもそもなぜ婚約者は、婚約者という統合的な呼称しかなくいわゆる彼氏彼女のような性別による分類はないのか、と投げ掛けてこられても、この場合の適切な単語を久佐持丹月は持ち合わせていなかった。
「丹月を私と関係付けるためだけに、わざわざ5文字分の体力を使いたくない」
「省エネが過ぎる……」
第一である。
「普通に名前で呼んだら良いじゃないですか」
百の理屈からすれば、たったの三文字ですむため最大の省エネだろう。
「その場合、お前関連の話題で『私と丹月は』から始めることになり六文字となってしまうじゃないか。 あと、わざわざ名前呼びするのは違和感になるだろう、この場合」
「もう、彼氏でいいんじゃないっすか」
いささかなげやりに、丹月は返す。
「その場合──お前は必然的に私のことを、例えば友人との会話なんかで、彼女と呼称する必要が発生するが、想像してみろ」
言われてから、丹月はちょっと想像する。
彼女。
カノジョである。
百を見つめる。今日も今日とて、赤ジャージ。
「うわあ……違和感」
なんというか、彼女と呼称するには、いささか甘味が足りないように、丹月も思った。
この関係性に甘味が無いとは、少なくとも丹月は思わないけれど、彼女という単語に籠められているものとは、別種の甘味だと感じる。
例えば、あちらが柑橘系なら、百との関係はもっともっとさっぱりして、けれど別の味も入っているような。
となると、もっとも近いのは。
「ステークホルダー……?」
「利害関係…………か。 確かに間違えてはいないが………………文字数が増えている」
「あ」