終結プログレス   作:カモカモ

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ほろ酔いプロフェッション

『好き』なんて気持ちを、ストレートに伝えるのはせいぜいが十代までで、ギリギリまで粘って二十代の前半が限界なのだと久佐持丹月は思う。もちろん、ナンパな奴とかそういうお店のお兄さんならまた別の話だろうが、ごくごく一般的に恥じらいという感覚を装備している人種には大変厳しかった。

それ故に、あの時──婚約者の実家での集まりで、限りなくというか比較的というかかろうじてストレートと言えないこともない言葉で丹月が気持ちを告げてしまえたのは、確実に酒の力でしかない、のだろう。多分。

 

「というあたりで、いかがでしょうか」

「なるほど。ところで、なんで急にそんな言い訳を、お前は始めたんだ」

「聞いてきたのそっちでしょ」

 

あの時は、丹月が酔っていたが、今は同居人兼婚約者の斎賀百の方が酔っているらしい。

 

「百さんも、酔うことあるんですね」

「あんな酒を飲ませたのはお前だろう」

「勝手に飲み始めたのそっちなんだよなあ」

 

飲もう、と言う話になって、コンビニでそれなりに度数の高いロング缶のみを、カゴに詰め込んだのは断じて丹月ではない。

そして、珍しく(普段は著しく酒に強いため)ほろ酔いになった百が、聞いてきやがったのだ。曰く。『私に告白まがいの発言をした瞬間の気持ちはどんなものだったのか』、と。

 

「まあ、つまりですね。 はい。 要するに、素面の時でも、何らかの好意を俺はあなたに抱いているということかもしれなくもないです」

「つくづく、回りくどいなお前は。 この期に及んで」

「凝り固まってんのこっちは、もろもろいろんなもんで」

 

男の良く分からないプライドからくる気恥ずかしさとかそういうもので。

 

「ところで、百さん」

「なんだ丹月」

「飲み方ヤバイね」

 

ガランガランと、空き缶が増えていく。

 

「おいしい?」

「炭酸が強すぎる」

「そういうもんだよ」

 

名前からして、強さアピールが激しいのだ。

 

「こういうのあんまり飲まないでしょ」

 

「まあ確かに。 リピートをしたいとは、あまり思わない」

 

贔屓目無しに、百はそれこそもっと格式高いバーでも絵になるだろう。あと、どっちかというと。

 

「ワインとかの方が似合う」

「私に似合うかどうかは置いておいて、安いワインを飲むくらいなら、いっそこっちの方が良い」

「そういうもんですか」

「そういうもんだ」

 

丹月がプルタブを開けると、プシュっと温くなった炭酸が音を立てて少し吹き出た。

 

「そういえば丹月」

「うん?」

 

耳を貸せと言われて、なんでだと思いつつ素直にそうする。吐息が近づく。

 

「──」

 

その思いもよらない言葉のせいか、アルコールのせいか。

丹月の顔が熱くなる。思わず、顔を手で覆った。

 

「百さん」

「なんだ丹月」

ついさっきのほんの一瞬は。

 

「どういう気持ちでした?」

「まあ、そうだな。 酒の力だろうな」

「百さんさあ……」

「思うに、勇気を出すために酒を飲むという方法もこの世にはあるのだろう」

「他人事みたいに、よく言いますね」

 

左手を眼前の女性に伸ばす。指先が絡んだ。

 

アメジストの瞳は静かに丹月を見つめていた。

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