終結プログレス 作:カモカモ
騙された。
久佐持丹月は、今の状況を作り上げやがった奴を睨み付ける。そいつは、流石に自覚はあるようで申し訳なさそうにしているが、だからといってそれで怒りが収まるわけでもなかった。
なんせ。
「相手の子達、レベル高いって本当?」
「よくそんなメンツ、セッティングできたな」
「…………」
合コンに巻き込まれたのだ。
ことの発端は、学生時代の友人からの食事の誘いだった。趣味がインドアによっているとはいえ、人との交流を完全に断っているということはなく、だからほいほいとその誘いに乗った。そしたら、なぜかテーブルに横一列で男達が並んで座ることになったのだ。
「帰る」
「タンマタンマ! いや、すまんかったそれは本当に。 でも、急に一人来れなくなって困ってたんだよ!」
「その事情が、俺が合コンに参加する意味にはならないよな」
「飯代奢るから!」
食費が浮こうが浮くまいが、問題はそこではないのだ。婚約者がいる身だし、変なリスクを負いたくない。欠片も、女性とお食事する出会いの場に魅力を感じていないのだが、端から見ていればそんなことはわからない。
丹月は、あの人から痛くない腹を探られたくないのである。
「乾杯の時だけ! 乾杯の時だけで良いから!」
「そういう問題じゃなくて、そもそも俺、こ」
「女の子達が来たぞ」
「うっわ、すっげえ美人いる」
「お前ら、早く席に座れよ」
「分かった! 頼む一生のお願いだから、ちょっとだけちょっとだけだから!」
「…………………」
さっさと帰ろうと、丹月は大いに誓い。左手薬指のアクセサリーに、軽く触れた。
開始三十秒。
すげえ美人から、なぜいるんだお前、と呼び掛けられたので、無実、と返す。
なお、互いに言葉はなく、要するに『すげえ美人』とアイコンタクトを丹月は交わしているのだ。
「えー、それじゃあ自己紹介を」
丹月は『すげえ美人』に、帰りたい、という旨を告げると、同じく、と返ってくる。
事情は後で、普通に聞けばいいか。
参加者達、おもに男性陣は『すげえ美人』とお近づきになりたいのだろうが、それも面白くない。
ので。
さっと、席を立ち上がり、他の奴らが呆気にとられている隙に、百の側へ。
「お手を拝借」
百の手を取って、二人でさっさと店の外へ。背後から、悲鳴が聞こえてきた。
「なんで、また、こんな目立つことを……」
「こっちの方が早い、かなと」
あと、普通に丹月は怒ってるし、主催者とはこれっきりになるだろうし。
「手が早いな」
「言い方ぁ……。 ゆっくりの方が良かったですか?」
「いや」
「ということが、最近あったのだが。 玲? どうした、そんな背後に宇宙を背負いそうな顔をして」
「も、百姉さんから、のろけられる日がくるなんて思ってもいなかったと言いますか」
「のろけ?」
どこがだ。