終結プログレス 作:カモカモ
爽やかな昼だった。午前中もなんとか乗りきり、午後に向けて英気を養うべく貴重な昼休みである。
『そろそろ、籍入れませんか?』
斎賀百の頭は痛かった。
昨夜突然、こんなことをほざいた男に頭突きを入れたから、という理由も多少なくは無いが、決して主因ではなかった。外傷というよりは、確実に別の。具体的には。
「プロポーズというやつで、間違いないだろう、残念ながら」
あれはそう、多分プロポーズだ。つまるところ、結婚しましょう、というやつである。結婚とは言われてないし、実際の言葉は『籍入れませんか?』だったけれど、一般的に籍を入れるということは結婚とイコールで結んでしまっても問題はないはずだ。多分。細かい法学的な根拠とかは、さすがに百もしらないけれど。
そう、昨夜のプロポーズ。あれこそが頭痛のタネである。
イヤ、ということではない。イヤ、ならあのときにこんなものを。
「指輪を揃えようとは言わないはずだ、私ならば」
そもそも、あのときに、なんでそんなことを言ってしまったのか。きっかけは、あのときの少し前に、あれと身体的に結ばれたことで。けど、あくまでもそれはきっかけに過ぎなかったということもまた、百はよく分かってしまっている。
だから、ゆえに、あれが、久佐持丹月という男(婚約関係にある)が、あんなことを突然言い出したのも──突然というにはそれなりに積み重ねはあったけれど──分からなくはない、心外なのだが。
「草餅め……」
その答えは、多分きっと、百と同じなのだろうとも思う。
覚悟、というには大袈裟だけれど、行き着くところまで行ってしまっても良いか、という気持ちは確かにあった。
それで、一緒に暮らして。
指輪まで揃いでつけて。
多分。ほとんどの人はそんな百と丹月を見て、お互いに準備はできていた、と思うだろう。
実際そうだった。
だからまあ、昨夜のことは、あくまで、単純に。
「タイミングだったの、だろう」
そう、結論とも言えぬ結論を、考えをまとめるためにあくまでも小声で、自分の内側から外界に排出して、その時に昼休みの終了を告げるチャイムがなってしまった。
なんか、あんまり休めた気がしない。
「草餅め………………!」
貴重な休憩時間を奪いやがって。
◆
「おい見ろよ、斎賀さんのあの鋭い目付き」
「あ、あれは!?」
「知ってるんですか部長」
「年に数度訪れるという伝説の斎賀君だ。この日の彼女は、この世のあらゆるものを見通し、その鋭い眼差しは未来をも予測するという! 今日の斎賀君は次世代の流行すらも答えてくれるだろう!」
「な、なんだってー!!!!」